28なる物語 ベルティアの本性
「ミリア! 遅いよ! 遅すぎるよっ!!」
戻ったミリアへ、ゲオンが困ったように、言葉を放つ。
戻ったミリアの隣には、17歳ほどの少女がいるのだった。
金色の美しい髪を持つ彼女の耳は、とがっており、それが人間ではないことの証明となっている。
そんな中、ベルティアは1人、苦しんでいた。
ベルティアの腰をさすったりしているゲオンは、心の底から心配そうに彼女の苦しそうな表情を見つめている。
「ほら、こんなに苦しんでるだろ? 遅すぎるよ!」
ベルティアとミリア、そして17歳ほどの少女を交互に見つめ、怒鳴るかのような勢いで、ゲオンが言う。
「心配しないで。まだまだ生まれないわ」
17歳ほどの少女が、少女らしい声で、ゲオンに声をかけた。
「……こんなに苦しそうなのに、まだ生まれないのか?」
少女の言葉に、ゲオンが心底驚いた表情をし、それから再びベルティアの方を見つめる。
ベルティアが産気づいたことで、ゲオンも焦っているらしい。
産婆を連れてくる、とミリアは言った。けれども、産婆にしては、若すぎやしないだろうか? ゲオンは思う。
「あのね。この容姿だから、勘違いしてると思うけど、私はこう見えても17歳じゃあなく、170歳の大人なの!」
少女が、ゲオンを見つめる。
「えっ!?」
ゲオンが驚きで、目を見開いた。
この17歳に見えるエルフは、リディーヌと言い、様々な種族の赤ん坊を取り上げてきた産婆なのだという。
時間が過ぎていった。
どのぐらいの時が過ぎていっただろうか。陣痛に耐えているベルティアが、いきなり眩いばかりの光に包まれた。
「「……!!!?」」
ベルティアの姿を目にしたゲオンとミリアは、驚きに目を大きく見開き、言葉が出ない状況となった。口もあんぐりと開けている。
ベルティアの姿を目にしても、リディーヌだけが驚きもせず、その姿と化したベルティアを、冷静に見つめている。
ベルティアの背中には、2枚の大きくて白い羽が生えていたのだった。
また、彼女の金色の髪も、先ほどよりも輝きを増し、美しい白金色に輝いている。
「あなたは、天使族ね」
リディーヌが何でもないことのように言葉を綴ると、ベルティアは、力なく頷いた。
「おかしいわね……。天使族は、天界にしかいられなくって、人間や私たちのいる世界には、実態を持って来れないはずよね。なのに、あなたに直接触れられる。不思議なことね」
リディーヌは、その赤い月のような瞳を左右に動かし、じっくりとベルティアを、観察しているようだった。
「天使族は、神様に生み出されるもので、生まれた時には、赤ん坊の姿や大人、子供の姿、と様々な年齢の姿の天使がいて、生まれた時の外見年齢のまま、永遠を生き続けるって聞いてるわ。
それに、不思議なのは、この物質世界には霊体でしか来れないはずなのに、直接触れられる。不思議ね」
疑問符を頭につけたまま、リディーヌがベルティアを見つめていると、ベルティアの陣痛が一旦おさまった。彼女の2つのマリンブルーの瞳が、リディーヌを見る。
「これには、ちょっと訳があってね」
「そうなのね」
リディーヌは、深く追求しようとしなかった。
「まあ、私たちのように永遠を生きていなきゃあ知らないことってのは、世界に沢山あるものだからね」
リディーヌは、金色の髪をさらりとゆらめかせ、ベルティアに笑みを向ける。
この人は、信頼しても大丈夫だ!
ベルティアは今までの経験から、そう悟り、彼女はこの人に子供を取り上げてもらうことにしたのだった。
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