27なる物語 気配!
「ベルティアーーー! 居るのかぁーーーーーーー!?」
「……えっ? ゲオンっ!?」
こともあろうに、何とゲオンの声がするではないかっ!
わざわざ分からないような場所を選んだというのに、なぜここが分かったのだろうか!? ベルティアは、とてつもなく驚いた。
だが、ここへ来た人は、ゲオンの他にもう1人いるようだ。
洞窟の中に置かれた魔光球が、2つの人影を照らし出す。
「……っ!!?」
もう1つの人影に、ベルティアはさらに驚いた。
「……ミリア?」
「そうだよ! なに、1人で出て行っているのさ! 私たちは、あんたが人間じゃあなくっても、関係ないんだよっ! 私たちは、いつでもあんたの味方だよ!」
泣きだしそうな勢いで、ミリアがベルティアへ、言葉をぶつける。
「って……! どうして私のいる場所が分かったの!?」
ベルティアは、ミリアとゲオンを交互に見つめつつ、驚きに目を大きく見開いた。
「占い師のあたしをなめるんじゃあないよ! これでもあたしは、ベテラン占い師さ。あんたがどこへ行ったのかぐらい、占いでどうとでも分かるんだよっ!」
「すごいのね!」
ベルティアは、単純に驚いていた。
まさか、ミリアの占いの精度がそんなにも良いなんて、自分を見つけられるぐらいの精度だなんて思わなかったため、驚きが大きかった。
ベルティアは、しばし、驚きに、目と口を大きく見開き、ミリアを見ていたのだった。
だが、我に返り、言葉を綴る。
「でもね。ミリア……。ゲオンから聞いてると思うけど、私は永遠を生きる存在で、それで、何があっても、決して死なない存在よ。だから、大丈夫!」
「何さ! あんたが、そんな存在でも、お産の時、1人にさせることなんか、できるわけないじゃないかっ! 私たちは、あんたの仲間なんだよ!」
「……仲間?」
仲間と言われたその瞬間、ベルティアの胸に悲しみが次々と走りすぎてゆく。
そう。皆、今まで色々な人が、そう言ってきた。
「仲間」……。だけれども皆、私を1人残して死んでしまったじゃあないのっ!?
「ねえ、ミリア、ゲオン? ……本当に仲間なら、ずっと死なないで! なぁ~んちゃって!♡」
ベルティアは、最後は冗談まじりの口調となる。ベルティアの言葉に、2人は黙りこむ。
「……とにかく、私は大丈夫よ。私は不老不死。どんなに苦しくても痛くても死なないのよ。
私は本性を皆の前で、さらしたくないっ……! だから、1人になって産むわね」
ベルティアは、黙り込んでしまった2人を見つめながら、ぬいぐるみ片手に、この場を去ろうとしたのだった。
その瞬間、ベルティアの腹に、鋭い痛みが走った!
今まで、様々な痛みは経験してきたはずなのに、この痛みは経験のない、異質なものだった。
異質で経験のない痛みにベルティアの顔がこわばり、そこへ座りこむ。
人間の子を産むのって、死ぬよりも怖いことなのかもしれないっ……!
訳分からぬ恐怖にかられ、ベルティアの頭が真っ白になる。
下の方が濡れているのを感じた瞬間、恐怖が増し、ベルティアは震えた。
「ベルティア! 陣痛が来て、破水もしてる! 今、人間以外の様々な生物の子を取り上げたことがある産婆を呼んでくる。だから、その人を連れてくるまで、ここで待っていな!」
ミリアが力強く、ベルティアに声かけをする。
陣痛の痛みは、今までずっと生きてきた彼女にとっても、経験したことがなく、かなり異質なものだった。
ベルティアは、底知れぬ不安にかられ、首を縦にふる。
もう、自分が人間かどうかなんてものは、どうでもよくなっていた。
ベルティアの頭の中は、急な吹雪で辺りに雪が積もったかのごとく、真っ白になっていた。
自分は今、人間の子を産もうとしている……!
そのことが、とてつもなく怖かった。
持ってきたセイウチのぬいぐるみを握る両手に力が入る。
「ベルティア。大丈夫。きっと安産になるさ。そうなるよう、神様に毎日俺が祈っていたから、大丈夫だよ!」
ベルティアの手を握り、頭が真っ白になってしまった彼女を、ゲオンが励まし続けたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます