第5章 天使王ベルトルス

34なる物語 昔のベルトルス

 夕暮れ時の輝きの中、ベルトルスの白金色の髪が、美しく輝いていた。


 夕暮れの冷たい風が頬を伝っていったその瞬間、ベルトルスの口が開かれた。

「あのな……俺は、実を言うと、4700年前は、天使の王だったんだ」

「王!? 王様、か!?」

 ゲオンがビックリしたかのような表情で、ベルトルスを見る。


「そんなに驚くことか?」

「驚くさ! こんなにちっさい子供の外見で王だなんて……。バカにされたりしなかったのか?」

「お前! ちっさい言うなっ! まあ、俺なりに頑張っていたさ。勿論、俺がガキの外見だから、バカにしてくる輩も多くてな。で、俺も考えて行動していたさ」

「どんな風な行動していたんだ?」

 ゲオンが不思議そうな表情を見せる中、ベルトルスは、得意げな顔となる。


「例えば、バカにされないように、頭をリーゼントにして『四六死苦』って書いた特攻服着て、仲間の天使たちが住む街を、バイクで飛ばしていたんだ!」

「……!?」

 ベルトルスの言葉に、ゲオンは引いた感じとなる。


 だが、鈍いベルトルスは、さらに得意げに話を続ける。

「しかも俺は、王としての威厳を保つために、改造バイクにしたんだ! 特攻服にリーゼント、それからグラサンをかけて、改造バイクでぶっ飛ばしたっ! あん時の、天使共の驚きようったら、無かったぜっ! だから、俺はそれで尊敬されたのかもな!」

 ベルトルスが、得意げな表情をすると、

「……って、それ、敬遠されるの、間違いじゃね?」

 ゲオンが、呆れた表情となる。


 だが、ベルトルスは、当時頑張っていた? ことを自慢したくて、そんなゲオンには無頓着に、話を進めていく。


「ガキの外見で、なめられないために、当時天使の王だった俺は、ドSを決め込んでいたんだ!

 例えば俺にはむかう者を、呪いの藁人形の刑に処すとか、俺をバカにした奴の体を、妙な感じでロープでしばって、ムチたたきの刑にしたりとか……」

「それから、どんなことをやっていたんだ?」

 ゲオンが半ばあきれ顔になりながらも、続きも気になるらしく、話を促す。


「それからな、俺をバカにしてハナクソくっつけたヤローにゃあ、無理やり腹に顔をかいて、腹踊りさせたり、女の天使には、無理やりストリップショーをやらせたりしたっけな。

 まあ、ハナクソもいわおとなるほどに昔のことだがな」

 ベルトルスは、昔を懐かしむ表情を浮かべた。

「って、ハナクソは、巌になんて、ならねぇよ!」

 ゲオンが、呆れた顔で言った。


「それで?」

 だが、味をしめたのか、ゲオンが次の話を促す。


 ベルトルスは、ますます得意げになる。って、得意げになることでもあるまい? ゲオンは、心の中でツッコミを入れる。


「俺にはむかったのが、ブサイクな顔の天使だった時は、そいつの顔写真を拡大して、天界中にばらまいたりしたっけな……。

 あと、生意気に食いかかってくるデブな天使にゃあ、ビキニ姿のファッションショーをやらせて、彼女を笑いものにもしたっけな。

 それから、俺に悪態ついた天使にゃあ、『裸の王様』をやらせたっけな」

 懐かしそうに、だが、どこか黒い表情で、ベルトルスが言う。


「裸の王様をやらせるって、どんなこと、させたんだ?」

 こいつの話って、めっちゃくだらない……。だが、ゲオンは、思わず聞かずにはいられなかった。


「そいつを素っ裸にして、チンポ丸出しで、街中を歩かせたんだ。しかし……」

 そこで、ベルトルスが、遠い目を向ける。

「昔の王だった時の俺は、かなりとがっていたなぁ~……。最近の俺は、王だった頃の俺に比べると、丸くなったなぁ~……」

 ベルトルスが1人、昔を懐かしみ、感慨にふけっている様子を、ゲオンがしらけた表情で、見つめていたのだった。


 「お前、ものすごいドSだったんだな……」

 ゲオンがまじまじと、ベルトルスを見た。


「まあな。そうでもしないと、ガキ扱いされて、王としての威厳が保てなかったからな」

 ベルトルスは、昔の感傷に浸り、夕暮れの空を見上げる。


「それにしても、いつもお前は自分を『罪深い』って言ってるけれども、どうしてなんだ?いつも自信なさそうにそう言ってるのが、気になるんだが、お前の話を、もう少し詳しく教えてくれないか?」

「ああ……」

 ゲオンは、ベルトルスの2つのマリンブルーの瞳を覗き見た。


「今から色々と話していこうと思う。

だが、普通に話すよりも、俺の記憶を見せよう」

 そう言うと、ベルトルスは、隣に座るゲオンの体に触れた。


 その瞬間、ゲオンの頭の中に、ベルトルスの「記憶」が流れこんできたのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る