血 マナハート

 作戦を実行している時、セレェナは、ベンQの言葉が脳裏に木霊していた。

(トレトー様はお優しい方です、そして人を傷つけたことで自分も傷ついてしまう、悪魔には珍しく、人も魔物もしたにみていない……だから、きっとこの作戦に反発されるでしょう、ですから、私たち二人で情報を共有しましょう、ですが“チャーム”の崩壊においては、何が起こるかはわかりません、注意をしておいてください)


(どうして、どうしてこんな子供が……家族を、他人を家族として受け入れる事を決意したのだろう、そこには、深い愛情があったはず、トレトーか、ベンQの、でも彼らはその愛情について、きっと自信をもっていない、ううん、当たり前かもしれない

、悪魔は感情が薄いといわれている、トレトーが異常なんだ、私の心を突き動かし、守らなければと思うもの)

 セレェナは、振り返りトレトーをみつめた。苦しそうになったり、穏やかな顔になったり。

《ヴェール・コンバット!!》

 セレェナがそう叫んだとたん。地下からそのタイミングで偶然でてきたリコが叫んだ。

「セレェナ!!!やめて!!!!」

「リコ……“穏やかに待て、そして自分の心の素直さに従え”」

「!!!」

「私は、あの女の子の悪魔も、薄情な悪魔とは思えないのよ」

 セレェナは、右手に、まだ不安定なメイスのようなものを生み出した。その先端は、交差する斧のような形状になっている、それは彼女の腹部から生成された。腹部のマナハートから、優れたエクソシストは、“魂の生成物”を作ることができる。“血の誓約”により、エクソシスト及び子孫が勝ち得た“魂が生成する聖宿具ルーン”というべきものだ。魂への負荷が高く、まだ未熟な学生には、使用が堅く禁じられてられている。もっとも、普通はその力を行使することすらできないのだが。


「うらあああああ!!!!」

 セレェナは、ニリィに襲いかかる全力でそのこん棒をふった。ニリィは、呆然としてそれに反応をする事もできなかった。というより、あまりにも、それはあり得ない光景だったからだ。ニリィの目は、魔力探知能力に優れている。相手の魔力を深く知覚することができる。

 

 ニリィが、セレェナが雄たけびをあげ、武器らしきものを生成した。その巨大な威力思わずいってしまった。

「ウソ……でしょ」

 右手をみる。赤い液体が流れこんでいる。ニリィは思った。

「右半身が、やられた」


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