不良 種床
薄暗い部屋の中で、二人の影がたむろしていた。一人は、金髪モヒカンの男子生徒と長髪のごつごつとした輪郭をもつ、少しガタイのいい生徒だ。以前、クラントをいじめていた二人だ。
《ガラガラー》
勢いよく扉が開かれ、リコが飛び込んでくる。
「観念しなさい!!"悪魔憑き"……い、いや……"種床"!!」
叫ぶリコ、その後ろで教師が
「え?なんですって?」
と聞くと、リコがいった。
「"種床"ですよ、つまり“悪魔がとりつき魔力の供給源とする宿主”悪魔は、人間には接触できない、人間にとりつくことで、他の人間に接触できるようになる……」
「え?"種床?"宿主との共生関係はあるけれど、そんなの文献には」
「悪魔は"記憶操作"ができるんですよ、そんな細かい事問題じゃありません!」
その背後で、二人の影がたちあがる。二人を黒い影と、根のようなものが体にからみついていた。目は赤く光り血走り、しかし、いくらか精力をすいとられたのか、頬はこけ、ひどいクマができていた。
「グオオオオ!!!」
まるで、野生動物かのような雄たけびを上げると、二人はリコに襲い掛かった。
「キャアアアー!!!」
リコはオーバーにひるみ、攻撃をさけた。
「リ、リコ殿?」
「ベンQ!!!いってなかったっけ?私、男の人大嫌いなの!!!」
「リコ殿!!そんな事をいっている場合では、あでっ!!」
ベンQは浮遊していたが、長髪の男になぐりつけられ、天井にぶつかって、落下した。
「ひ、ひえええ、こないでぇぇ!!!」
二人は、ひるんだのをいいことにリコにおそいかかろうとする、攻撃などせず、ただ多いかぶろうと二人同時にとびあがった。
《ドスン!!》
その瞬間、彼らの脇腹をタックルした人がいた。教師リリカである。
「リコさん!!逃げて!!!」
「で、でも……」
伸びているベンQを見た。ここにくるまでの事を思い出していた。
【いいですか?今は”セレェナ殿”は”特殊な状態”にある、これも作戦の一つです、ですからあなたが、今回の作戦の主役です、心配する事はない、私はベンQ、ある悪魔の王にも認められた優秀な執事です、私にまかせてください、あなたは、敵の前にたち、私をつよくにぎり、マナを注ぎ込むだけでいい】
地面にのびている不良がリリカをおしのけた。そして、ゾンビのように体をぐちゃぐちゃにうごかしながら、リコに近づいていく。不良は知能が低下したようにひとことふたこと口にする。
「血、肉、若いもの、エネルギー!!精力!!!」
リコは、震えながら、しかし、ある決心をした。近場にあったバットを拾い上げ、思い切り彼らの腹部をなぐりつけた。
《ズドッ》
「近づくんじゃねえ!!汚物がぁあああああ!!」
「ぐおおお」
一瞬倒れこみひるんだが、またあふれ出る魔力を使い、起き上がる二人の不良。しかし、リコはその間にベンQを拾い上げ、帽子のツバを強くにぎると、マナを流し込んだ。するとベンQは緑に光り……巨大な、コケに覆われた、木の怪物が現れたのだった。2メートルは優に超える、しぶくふさふさのまゆげとまつげ、ダンディーな髭をはやした、”人面のうろ”を腹部にもつ、”トレント”のような怪物だった。
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