合流

 セレェナとトレトーが追う女性が店をでて、彼らがその後をおいはじめてから、通りは人でやけにごったがえしていた。

「まずい、早くしないといっちゃうわ、悪魔の情報を集めなきゃ」

「ああ……“戦力”は多いほうがいいからな」

 ひとごみにもまれ、トレトーとセレェナが引きはがされる。女性にめをやりながらもトレトーに手を伸ばしたセレェナは、やっとのことでつかまえて、トレトーをひっぱりだしたが、反動で後ろにころびそうになった。トレトーが魔力を放出し、それを防ぐと、二人は笑いあった。

「あ、あの女性!」

「そうだ!」

 二人は顔を上げるが、そこにもう女性の姿はなかった。

「しまった……」

「まあ、また会えるよ……」

 トレトーの頭には、以前の戦いの事があった。セレェナには黙っていたが、トレトーは魔界でも有名な弱い悪魔だったのだ。早く“仲間”もしくは“従者”をあつめなければ……魔導書を広げる。

「悪魔ヤニー……」

 ヤニーの魂は、その魔導書に“収録”されている。魔導書の使用者の許可なく出る事はできない。使用者は、その力を封印された悪魔の協力を得て使うことができる。

『ここは窮屈だぜ、兄弟……』

 突然、トレトーは上空に悪魔の気配を感じた。そして、周囲に向かって叫んだ。

「にげろ!!!!」

 しかし、人間たちに聞こえるはずもない。しかたなく、トレトーは唱えた。

「ウィンド・スフィア」

 その瞬間、人々は周囲に弾き飛ばされ、場は騒然となった、だがそれよりもすさまじい事が続けて起きた。

「魔装・解放」

 そう叫ぶと、巨大な槌をもった少女が天からおりてきて、槌をふりおろし、地面に衝撃をあたえた。それをセレェナを抱きかかえたトレトーはよけたが、人々は、目の前で起きたことに悲鳴をあげた。

「悪魔だ!!!」

「悪魔がでたぞおー!!!」

「悪魔だあああ!!」

 トレトーは、セレェナをかばいながら、少女を睨め付けた。

「おぬしだったか!!!しかし、“魔装解除”までしてしまうとは!」

 魔装解除とは、悪魔が身に着けている“人間から姿を隠す制御リング”を解除する事だ。少女はにやりとわらうと、手首をみせた。そこには手錠によくにたリングがあり、それが解除されて、消失したのが分かった。

「本気なのか、ニリィ!!」

「本気なのよ!!お兄ちゃん!!私を……私をおいて人間界にいったから!!私よりも、人間のほうが面白いっていうの!!!」

 少女は、頭部が樽ほどの大きさもある槌横なぎにぶん回していった。

「私の“愛”をうけとめて、チャームでとりこにしてあげる♡」

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