衝動

 セレェナは、悪魔“ニリィ”の後ろにぼーっと立っているリコの姿をみた。

「リコ、どうしたの!?」

「え?私は……かわいい“ショタ”ちゃんをみつけて」

(チャームだ)

 すぐにさっしたセレェナは、リコのてをにぎった。そして、トレトーの傍にひっぱっていく。

「どうした!!」

「それが、ニリィって子のチャームに引っかかったみたい」

「まったく……一時退散だ!!今は“治療”できない!!」 

 人込みが散らばっていったあとに、追跡劇が始まった。トレトーはセレェナの手を引いてにげまくる。歓楽街をぬけて、街の中心部へと向かう。このあたりの地理に疎いニリィをまくにはそれが最善だというセレェナの意見を拾っての事だ。


 ニリィは楽しそうに、トレトーと追いかけっこをしている。人間には興味がないのか、トレトーにだけちょっかいをだしている。トレトーは機敏に攻撃をよける。どうやら攻撃が大振りでよけやすいようだ。ある路地裏に入ったときに、三人は呼吸を整えた。

「はあ、はあ」

「ふう」

 路地裏の向こうに、巨大な施設がみえた。市の図書館である。そこにセレェナは意識を集中した。トレトーの手に電流が走った。

「つっ……」

 トレトーはセレェナを見つめる。セレェナは、明らかに遠いその図書館をみていった。

「いる」

「何がいるって?」

「“あの女の人”」

「セレェナ、人間に、都会の人間にそんな視力があるはずがない……まさかお前……」

 振り返るセレェナ、その目には一瞬、魔術のような紋章、時計や羅針盤の文字、図形のような文様がうかびあがっていた。

「おいかけよう!!」

「おい、まて、なんで!!」

 とトレトーが制止しようとした瞬間だった。路地を覗き込む巨大な槌をもった少女の影が現れた。

「見ぃつけた♡」

「ひぃい!!」

 3人は、たまらずかけだした。大通りにはいったとき、ニリィは、思い切り槌を回転させながら、たたきつけた。その隙をつかって、トレトーは、セレェナを上空にもちあげる。セレェナはさらに、リコをつかんでニリィに放り投げた。リコは、何を勘違いしたのか、相手をトレトーだとおもっている。

「あ、トレトーちゃん、私……あなたのこと、だーい好き♡」

 そういって、頬にキスをしようとした。その瞬間だった。

「ひぃ!!!やめろ!!!近づくな!!!」

 リコはビンタをされた。

「私は……私は……女が!!嫌いなんだ!!!」

 はっとして、ニリィはリコをみる。だがリコの頬から、何かが崩れ落ちていくのがみえた。

「この魔力は……あの召使……ベンQ?」

「はい、そうでございま……す」

 ベンQは、リコの頭にのってリコをまもっており、ビンタの瞬間、身を挺してリコをまもったのだった。

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