悲鳴 聖宿具《ルーン》

「お、お兄ちゃん?」

「だ、大丈夫だ……」

「こ、こんな……」

 セレェナは、ニリィの魔力が乱れるのを感じた。それは、いままでの魔物では見たことのないような、根源から、異界からエネルギーの渦が湧き出てくるようなイメージだった。

 トレトーが背中に寒気を感じて、叫んだ。

「ニ……ニリィ!!大丈夫だ!!気にするな!!我が、その指輪をとろうとしたのだ!!お前は忘れているだろうが……その指輪はっ!!!」

 ニリィは、目が赤く光り、もはや我を失っているようだった。

「許さない!!許さない」

 セレェナが、まだくらくらする頭でマリをたしなめる。しかし、攻撃はやまない。

《ガキンッ、ガキンッ》

 セレェナは持久戦になると考え、魔力を抑え気味に、武器、聖宿具ルーンに宿した。そして言葉で彼女を説得しようし、あれこれ考える。

「大丈夫よ、今までだってトレトーの事を助けてきたんだから!!」

 マリがセレェナの背後で、トレトーの介護をしている、例の棺型のルーンに力をこめると、白い光のマナがそれをおおって、トレトーが苦しみながら、その魔力は回復していった。

 その光景にむしろニリィは逆上した。

「穢れた人間の魔力など分けるなああ!!!!血はつながっていなくとも!!お兄ちゃんは私の家族だああ!!!お兄ちゃんを返せえええ!!!私が治療する!!!」

「ちょっと、落ち着きな!!!」

 ふと、セレェナは数分前のことを思い出す。トレトーは、指輪の話と一緒に、先ほどの弾丸を拾って、それがニリィのものではないこと、きっとエクソシストのものであろうことを話した。そして、セレェナに、ニリィとの和解を持ち掛けたのだ。

「ニリィ!!聞いて、その指輪は……私は本当のことはわからないけど」

「うるさい!!!黙れ!!!」

「確かな事は、それが壊れると危険な事がおこるって事よ、トレトーも巻き込む、あなたも巻き込む!!」

「だったら、早くお兄ちゃんを解放しろ!!!」

「あんたに、トレトーの何がわかるのよ!!」

 一瞬、ニリィはひるんだ。だが、すぐにまた怒りをため叫んだ。

「お兄ちゃんを、お兄ちゃんを、人間ごときが、独り占めしないで!!」

 ニリィは槌を巨大化させて、セレェナを押しつぶさんほどの槌をふりあげ、振り下ろした、セレェナは、ダメージを覚悟した。しかし、セレェナの前に、悪魔のシールドが張られる。背後を見る。トレトーが笑っている。

「ありがとう」

 そうつぶやくと、即座に振り返り、サーベルに力をこめた、捻じ曲げて、その突端を湾曲させんながら指輪を目指した。が、ニリィはそれに気づき、槌を急激に回転させ、そのサーベルをたたき付けた。

「ふざけんな!!!」

《ズドォーン!!!》

 その瞬間だった。割れたサーベルの先端が弾き飛ばされ、トレトーにむかっていき、トレトーの首に突き刺さったのだった。




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