喧嘩 巡礼。

 悪魔ヤニーに襲われた後。セレェナは、警察の事情聴取を受けながらトレトーをせめた。

「絶対大丈夫だっていったのに……」

「すまない」

「ねえ、あなた、何かしっていたんじゃないの?」

「いや……我は……」

「大丈夫よ……“最初からあんたは信じていなかったから、だって悪魔だから”」

 トレトーは目を見開いた。ベンQは、悲しい顔をして、半目をとじて口をつぐんだ。


 警察は暫くすると引き上げていった。トレトーは重い口を開いた。


「我が知っていたのは……人間界にきて最初で最後の戦いで、腹違いの兄である奴……ヤニーと戦った事だ、だが信じてくれ、お前にいったように〝我は最強の悪魔〟人の魔力を引き出す、最強の悪魔だ」

「ふん、どうだか……、私調べたのよ、カリューナの思いでの地を……彼女の遺族から、彼女の日記をもらったことおをもいだしていてね、記憶を封印していたから、見たくはなかったけれど……写真や地図ものってて、あなたが案内した場所……どこにもなかったわ」

「わ、我は……本当にお前の記憶を取り戻すつもりだ!」

「人間をなめないでね、今まで付き合っていたのは、あんたに恩があったから、もういいでしょ?“暇つぶし”に付き合ったんだから」

 

 並木道を立ち去ろうとするセレェナ。トレトーは引き留めようと叫んだ。

「お願いだ!!我は、お前を守る!!そして、絶対に兄には負けない!!」

 振り返り、セレェナはいった。

「あの悪魔のいった通りよ、“自分にうそをついている人間は弱い”あんたは、自分を信じ切れず、人を信じ切れず、だから、“あいつに負けたんでしょ?”」


 暗がりに、シュボッという音をたてて、ランプに火がともる。うすら寒い深夜の公園に、人が見たらただランプが浮いているように見えた。トレトーは、リコの話を聞いた後、数日街をプラプラしながら、迷っていたのだ。

「トレトー様……」

「何だ、ベンQ」

「どうして頑なに、記憶を封印しているのですか?」

「……」

「私には……何かを恐れているように見えます」

「我に怖れなどない!!」

「トレトー様……」

 立ち上がり、こぶしを握って奮起するトレトー。振り返り、体をふるわせて、瞳を潤ませていう。

「だが、ベンQ、我は不安なのだ……我が死んだら、我はどうなる?“悪魔石像”として名誉ある墓を作られるだろうか?いや、我は何もしていない……それに、何より我の“魔導書”に名のある我の友たちは?そして、お前の事が、心配なのだ」

 ベンQは宙に浮きあがり、悪魔トレトーに答えた。

「私はもとより、あなた様に命を救われたようなもの、何があろうと、あなた様と一緒に運命を歩みます……私の“予言”そしてこの帽子……“バインド・グミ”これだけの“実験”をさせてくださった、私には、あなた様だけが“主人”です」

「ベンQ!!」

 トレトーは、帽子をつかみ、抱きしめるようにして涙を流した。

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