理由

「どうして!!どうして私のために、こんなことに能力をつかったの!!」

「……」

「リリー!!リリー!!」

 ニリィは槌を背負い、二人を退屈そうに見下ろしている。

「私は……、あなたの事……嫌いじゃなかった、わ……し……し」

 何かをささやこうとしているが、声量がでないようなので、彼女の口元にベリーが耳を近づける。美しく細い唇が何かをつぶやいた。

 やがて、リリーは動かなくなった。リリーは、うつむいて、目に影を落としていたが。やがてたちあがり、ニリィをにらみつけた。その時、ガスマスクをつけたもうひとり、リーダーのアビーがその間に割ってはいった。

「ここは任せろ、お前はひけ!」

 そういった瞬間、口元を隠しながら、その口元から足元へ灼熱の炎が吐かれた。そしてそれをよけて飛び上がったニリィは後悔した。

《シュウゥウ》

(攻撃と煙幕を同時に……まあいいわ)


 エクソシストたちは、廃墟のビルの地下に隠れ“マナ隠し”のシールド生成装置を起動する。それはまるで折り畳み傘のような形状で、地面におきスイッチをおし、マナを流すと展開して、領域内のエクソシストの放出するマナを隠す。リリーは、アビーに怒鳴られ続けていた。

「せっかくお前を“アカデミー”から推薦してやったのに、どうして問題ばかり起こす、実戦経験もなく、お前の過去に悪魔との因縁があるのは知っているが、お前は感情に振り回されすぎる、冷静な判断力がない、そんなんじゃいつか痛い目を見るぞ」

「……」

 いつもるうさいリリーが何も言わないので、リリーは、首をかしげて腕をくんだ。

「本当なのね?」

「何が?」

「あんたがこの“人形”の事を心配していないってことは……リリーは」

「……はあ、そうだった、話していなかったな」

 一呼吸おいて、アビーがいった。

「彼女は……遠隔操作能力者だ、バーコードがついている“リリー”はすべて偽物だ、光学迷彩系の魔道具を使う、彼女自身は、完全に透明化などできないからな」


 1枚の紙をみて、セレェナがつぶやく。

「ねえ、トレトー……ニリィって、本当に、あなたの事が好きなの?まるでおままごとみたいな、むしろあなたのほうが彼女に気を使って……何かをかくしていない?」

「……」

 トレトーは何もいわない。かわりにベンQが口を開いた。

「我主トレトー様は立派な方です、多くを語らず、魔族を差別せず、私を配下とした……あの時」

「よい、よいのだベンQ、ただ、これだけは確かだ、彼女は……勘違いをしている、あの指輪が壊れる時、よくない事がおこるだろう、初めてあったとき、彼女の心は、不安定で、我はそれをあの指輪で“覆い隠した”」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る