災難

 ニリィは近場のビルにとびうつり、黒い羽をばたつかせて舞い降りた。

「どこだ、どこから……」

 周囲をキョロキョロと見まわしながら、怒りに燃えた目をぎらつかせた。その瞬間、スコープに光が反射したのか、チラリと、道を挟んだビルに敵がいる事に感づいた。そしてその瞬間、空間が開き蜘蛛の姿をした魔物があわれ、何かを射出する。

「!!?ヤバッ」

 ニリィがこちらに突進しようとしていることに気づいたベリーは、続く敵の攻撃をおよけ、すぐさま武器をしまって動こうとした。が

《ガクッ》

 足が動かなかった。ニリィは、ベリーの視線をさけて、蜘蛛の糸を足元に射出していたのだった。

「うそ、まずい……こんなところで、死ねない……」

「このクソ人間ごときがあああ!!!」

 猪突猛進といった勢いで突進するニリィ。

「いやだあああ!!」 

 ベリーは咄嗟にスナイパーライフルをかまえ、一瞬スコープをのぞいただけで、的確にニリィの頭を撃った。

《ゴキュン!!》

「やった!!」

 しかし、すぐに違和感に気づく、いくら悪魔といえど今聞いたような、そんな妙な金属音が響くはずはない。そう考えた一瞬。

《ギュルン》

 頭に受けた衝撃を起点に、悪魔は一回転をする。ベリーは考えた。しかし、聖弾はそんなにやわなものではない、どんな大悪魔であれ無傷では済まないはずだ。しかし事実ニリィは一回転をして、その衝撃で巨大な槌を振り上げたのだった。その槌の底をみてベリーは確信した。

(これで防いだか!)

 すぐさまベリーは負けじとスナイパーライフルのスコープを覗いた。その瞬間、違和感に気づいた、軽すぎる。照準中央のニリィがにやりとわらう。

「ねえねえ、下等人間さん……どうやって“その銃”で私をうつの?」

「!!」

 スコープから目を外して気づいた、銃身が、その前部分が消えている。見ればビルの端にその残骸が転がっている、さっきの槌の攻撃はこれを狙ったものだったのか。ニリィは、笑っていた顔を突如怒りに歪ませて、叫んだ。

《死ねえええええ!!!》

 槌をふりおろす、その瞬間だった、ニリィは先ほどから感じていた違和感に気づいた、だがかまわないとおもった。なぜならその違和感の正体、自分を見つめている“何か”の気配は、槌を振り下げる瞬間、ベリーの正面にたち、彼女を庇ったのだから。


 ベリーは言葉をうしなった。透明の光学迷彩状態がとかれ、魔法陣が消失して現れたのは、自分の同僚、青い髪に眼鏡、左目の下のバーコード、ロングのあの少女―リリーだったのだから。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る