処置 戦争コロニー

「さあ、横になって」

 老婆の指示に従い、横になるニリィ。そしてトレトー、トレトーは心配そうにしており、ニリィはその手を優しく握った。


 老婆はニリィに力をわけた。黒い力、それは人間が持つことがない、明らかな魔力だった。老婆の背中から、黒い羽が生え魔力は放たれた。

「く、くぅ!!」

 注射器によく似たものを、ニリィとトレトーに別々に差し。直後、マリは術を行使した。

「太古の盟約により、私達に力を与えたまえ“ルカウス・イシス!”」

 すぐに魔法陣が展開され、ニリィの血液がぬかれると、トレトーに分け与えられた。トレトーはその時、ニリィの過去をみた。苦しく、寂しい過去だった。徐々に彼の体は修復され、失った血液はその代わりのもので補われた。


 セレェナはマリに尋ねる。

「ねえ、大丈夫なの?」

「ええ、順調よ」

「そうじゃなくて、血液型とかって」

「悪魔の血に血液型はないわ」

「へえ」

 マリはなぜかうれしそうで、セレェナは尋ねた。


「ねえ、あなた、どうして悪魔にやさしくするの?私は、悪魔に大切なものを思い出されてもらったからだけど、あなたには理由があるの?」

「……」

 それからマリは、手短にといって処置を続けながら話し始めた。

「私と母は“20年前の戦争時”悪魔によってつくられた“戦争コロニー”の中にいた、そこで“彼”と出会ったの」

「彼?」

「ええ」

 マリは振り返り、少し顔に暗い影をおとしながらも、真剣なまなざしで告げた。

「悪魔よ」

「……」

「その悪魔は、ほとんど自我がないような人だった、心やさしく、母の考えにも同調したわ、けれど母の作った組織の中で、彼の事をけむたがるものもいたの、男の人で、その人自身悪魔に魅了されているのか、悪魔が見えたようだけど、それでも母の作った組織の人の大半は母の事をしたった、しかし、あるときクーデターがおき……組織幹部が狙われた、その時の首謀者が彼だった、そして彼は、母の首をきって、母は生死の境をさまよった」

「ひどい……」

「そんなとき、その悪魔に助けられたのよ、悪魔は自分の命を何とも思わずなげだした“私の一生は長すぎた”といってね、それで一時は悪魔も母も生き延びたけど、その後、悪魔は、別の……クーデターの生き残りに“悪魔病”のウイルスをうちこまれ、母もまた、それに感染した、私は母をかくまった」

「それじゃあ……」

「ええ、そこからがあなたのよく知っている話になるわね、でも、この先はエクソシスト協会もしりながら、その話の内容を隠しつづけている、母が悪魔になったことも、あの悪魔が母の悪魔病を直すために、術を使い“完全に消滅”したこともね」





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ビター・スィート・ディモン ボウガ @yumieimaru

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