展開
ヤニーは、スマートフォンを取り出して、魔力で画面を広げてみせた。そしていった。
「"この高校の裏サイトだ……"これは、クラントが用意し、結構な生徒の中で流行している、お前たちのような”カースト上位”にいないものたちのうっ憤の掃きだめだ、そこに今、お前たちの本当の姿を見せてやる」
「……やめて!」
リコが叫ぶ。ヤニーはさらに得意気になった。
「悪魔は感情の起伏、その波の大きさを利用して、人間の欲望をかなえ、自分の糧とする……生徒たちは歓喜するだろう、さあ、書きこめ、クラントよ」
クラントの目は明るく光った。チャーム、とは別の、暗示にかかっているようだった。クラントはスマホを取り出して、書き込みを行う。
「こう書きこむのだ"セレェナは、"かつて有名子役カリューナの相方だった"しかし、彼女を裏切り、彼女の魂を犠牲にして願いをかなえようとした、その結果、二匹の悪魔の争いに加担し、悪魔に魂を奪われたのだ、そして今、飽きもせず、その争いに加担している、悪魔同士の争いに加担してでも、親友の魂を犠牲にしても飽き足らない"」
スゥウ、と呼吸を置いた。
『いいか!!この"セレェナ"は極悪人だ、生徒会長、成績優秀、退魔のマナを持ちながら、悪魔によって自分の願いをすべてかなえようとする、欲の化身だ!!!彼女には”カリューナ”の影もない、覚えているだろう?誰もが知っていた"カリューナ"だ、彼女は短い髪で、サイドを編み、ラテン系の顔立ちだった、彼女の命を奪ったのは、このセレェナだ!』
セレェナは目を見開いた。そして、頭を抱え込んだ。
「ふむ、いいだろう」
ヤニーはサイトをのぞきこみ、反応を見る。セレェナを批判する書き込みが集中的に行われている。ヤニーは、ニヤニヤと笑った。
「これでいい」
クラントが黒く光ると、ヤニーの体から、魔力があふれ始めた。ヤニーは勝利を確信していた。
「セレェナ!!」
トレトーが立ち上がり、こう叫んだ。
「お前にチャームを書けてある!!強いチャームだ!!だからいくら魔力が弱ったとはいえ、ヤニーのチャームもはねのけることができた、だから聞け、思い出してくれ!!俺たちは和解した!!お前の欲しい情報は、俺が持っている!!恥ずかしくて、言えなかっただけだ!……魔力を、魔力を流すんだ、お前に渡した”手紙”に」
「フン、無駄なあがきを」
トレトーは、帽子を反対側にかぶり、そして指を鳴らした。その時だった。セレェナの頭にがくん、と思い衝撃が走った。
「セレェナ?」
傍らにたっていたリコに、ベンQが語り掛けた。
「リコ様!!なんでもいい!彼女が正気を取り戻せるように声をかけてください!!」
「!!」
リコは少し考え、そして叫んだ。
「セレェナ!!!あなたは悩むことなんてない!!真実は、その悪魔ヤニーですら"忘れている"のよ!それよりも大事なこと、クリューナがあなたに、臨んだことを思い出して!」
ヤニーは、すでに助走をはじめ、翼をばたつかせていた。小雨がふりはじめ、セレェナの手紙はしとしとと濡れ始めていた。
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