奇妙なお出かけ、カリューナ
その週の週末。“3人で”でかけた。ある人物の痕跡を追って。その人物の痕跡を最もよく知っているのは悪魔であるトレトーだった。
「ずいぶん昔の事だから……あまり覚えていないのよ、この街で育って生きてきたけれど、昔はホラ、忙しくしていたから、それに、いつも“カリューナ”が街を案内してくれたし」
ふと、セレェナはこめかみに手を当てた。ズキリと痛む。過去の痛み、後悔からか。未だにトラウマがあった。自分のせいで悪魔に親友の魂がとられたのだという。
トレトーは上機嫌で案内する。セレェナはトレトーの案内に続いて、リコと一緒に歩いた。リコはトレトーが見えないので、静かについてくるしかなかった。
ゲームセンターに入り色々なゲームをする、愛着がわいたのかセレェナトレトーによく遊ばせた。リコは何もいないはずの空間をみているとクレーンゲームのボタンがデコボコ動くのを笑った。
トレトーはゲームがうまく、クレーンゲームの景品は結構とれた。セレェナはつぶやく。
「カリューナみたい」
トレトーはその言葉を聞いて、落ち込んだ様子だった。トレトーがもっていた羊皮紙の手紙の書き主―カリューナ―その彼女こそが、トレトーの失った記憶を探るヒントだ。
人形を抱きかかえたリコとセレェナでプリクラをとった。もちろんトレトーは映らないので、トレトーが文字を書いた。
「お前たちの魂食っちまうぜ……」
リコとセレェナはケラケラとわらった。喫茶店に入ると、リコは自分の膝の上にトレトーが乗ることを要求した。
「げへへ……ショタちゃん……」
汗をかくセレェナ、目を丸くし、呆然とするトレトー。
「よくわからんが、この食べ物はもらうぞ」
といってパフェをたいらげていた。リコはいつもトレトーの分を頼んだので、他人からみたらリコが大食いにみえただろう。
午後からは、唯一セレェナに覚えのある遊園地にむかった。観覧車にのったり、コーヒーカップにのったり。懐かしさを覚えるたびにセレェナはうーんうーんとうなだれた。
「すうぅ……すぅう……」
夕焼けがにじみ、街をてらすころ、傍らの机に、ベンチに座りながらうでをくんでそこに頭をのせて寝ていた。
「セレェナ、セレェナ」
リコがゆりおこす。
「ほら、綺麗よ……」
頭を上げるセレェナ。その眼前には、遊園地のライトアップと、傍らの花畑、それから、少し小高い丘という事もあって、暮れかけた街を明るく照らす、せわしない日常の静かな電気、照明の絶景、夜景が広がっていた。
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