少女の影 ニリィ

 女性を尾行する二人の背後で、ゴスロリの10歳前後の少女が姿を現す。

「フヒヒヒ」

 ミニハットに姫カット、吊り上がっている猫目で、大きいラピスラズリ色の瞳。いたずらっぽい微笑みとえくぼ。

「結婚……約束したよねえ、お兄ちゃん♡ニリィ、お兄ちゃんを追ってここまで着ちゃった、喜んでくれるかな?」

 喜んだ拍子に、背中から黒い羽が生えた。


 セレェナとトレトーが尾行する女性は、アパレルショップに入った。すかさず、セレェナとトレトーはその正面のバーガーショップに入り、適当なバーガーと飲み物を買った。


 ニリィとなのったゴスロリ少女は、行き場所がなくなりアパレルショップの横の店にはいった。ニリィは何の店かよくわからなかったが、シブイジーパンが並んでいるので、その一つを買うことにした。

 

 レジ店員

「それじゃあ、1万4000円ね」

「なにぃ?」

「一万4000円だって」

「円?ああ、そうか、通貨が国ごとに違うっていってたなあ、めんどくさい」

「ねえ店員さん♡」

「はあ?」 

 店員はつるつるてんのスキンヘッド、ところどころの皺がおこったようにみえ、人相が悪く、サングラスがさらにそれを際立たせていたが、猫なで声でニリィが、レジの上にのると、彼女の顔をまじまじと覗き込んだ。

 ニリィは自分の手のひらにキスをするとこぶしを握り、ひらいたあとに店員を殴りつけた。

「ねえねえ、ニリィ、お金とかわかんない」

「えええ~」

 明らかに店員の態度は急変し、もじもじと奇妙な動きをする。

「あのね、お父さんとお母さんがいってたの、社会勉強をしてこいって、だけどニリィ、お金そんなにもってないの」

「そうなんだー」

 店員はサングラスの上からハートマークのになった目を、ニリィに向けた。

「私にとって大事なものをあげたら、きっと店員さん許してくれるんじゃない?物々交換っていうの?ニリィみたいな子供としては、最強の方法じゃないの?」

「でもねえ、君は子供じゃないか、いったい何ができるっていうんだい?」

「お兄さんの夢を、何でもかなえてあげるよ」

「なななな、なんでも!!?」

「そう、一瞬だけどね」

 店員は手にアゴを乗せ考える。そして、ポンと手を打った。

「そうだ!!隣街の歓楽街のホステスのサヤちゃん……」

 と言いかけた瞬間、ニリィは、店員の頭に人差し指をつけた。その瞬間、店員の頭の中にこの世のものとは思えない光景がうかんだ。ホステス、店を貸し切り、好きな女の子とずっと話をする。そして彼女は、いつにもなくセクシーなバニーの格好をしている。ソファーにすわり、せもたれにてをかけると、店員の頭に口づけをした。

「お金は、使わなきゃ意味がない、貢がなきゃ、意味がないでしょお」

 そういうと、店員は答えた。

「ハイイィイ!!サヤちゃん!!」

 店員は、レジから札束をさしだすと、ニリィはそれをうけとり

「男って、だっさ」

 といって店を出た。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る