同質化

《バリィン!!!》

 小さなコンビニ店の裏手の窓がわれた。カリューナが声をだす。

「ごめんなさい、公園で野球してたら、ボールが……」

「コラー!!」

 と怒鳴っていた店主もおとなしくなった。彼女の大人びた姿。美しい顔立ちに、畏敬の念を抱いたのだろう。

「い、いや……大丈夫だよ、次からは気を付けてね」

 その背後、店内でお菓子や、果物をポケットにいれて、リュックにつめられるだけ詰めるセレェナ。こちらに背中をむけた店主と話しているカリューナに指で丸をつくって合図をおくる。そして、店をいそいででると、カリューナは謝罪をおえ、二人は近くの公園で落ち合った。

「うまくいったね!!」

 カリューナは自分の肩にてをのばしていった。

「うん!でも……よかったのかなあ」

「セレェナ、これは“試練”よ、あなたに大事なことなの、あなたは人に“同情しすぎ”あなたにこそ、悪事が必要なのよ」

「でも……私は……人の経験した幸福も不幸も知らない、ただ“過去がない”だけ、空っぽの存在だから」

「セレェナ、違うわ、いつもいってるでしょう、“神は奇跡を起こす”人がそれに気づかないだけ、周囲の幸福を純粋に思えるあなたも、奇跡」

「うん」


 そして、二人はそのままスラム街に向かった。目のあいたニット帽をマスクのように首までかぶって、盗んできたそれを、スラム街にあるある建物の上からまいた。スリをして得たお金も、一緒にまいた。まくとすぐさま人だかりができた。

「あはははは!!爽快ね!!」

「これはいい事かも!!」

 配り終えて、警察がやってくるころには、その場から二人は姿をけした。知り合いの撮影スタジオに隠れると、セレェナはいった。

「あなたがこんなに“ヤンチャ”だって思わなかったわ」

「あなたのためなら何だってするわ、それに、私にだって、メリットがある」

「メリット?」

「私は、“幸せであること”に退屈を覚えていたのよ、だから、不幸そうな人をみつけて目で追ったりしていた、でも本当に意地の悪い人もいた、最低な人間も、でもあなたは“面白かった”」

「私が面白い?初めて聞いた」

「苦しそうな立場にいるあなたが、人の助けをしているのをみておもったの、私の人生は、ずっと自分の幸せしか考えていなかった、そう育てられたから当たり前だとおもってたけど、人の不幸など考えず、自分の幸福しか望めず、他人を見下して悦にひたってさえいた、不幸な人は努力がたりないとか、人格に問題があるってね、でもあなたは反対なのよ」

「反対?」

「自分の幸福が望めない、人の幸福しか望めない人、だから私が幸せにしたいの」











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