終焉

 トレトーがセレェナの後ろにつき。セレェナのひろげた魔法陣に手を伸ばした。

「やめろ、やめろおおお!!!!」

 トレトーは、哀れな相手を見下ろして、無表情に仕事を続けた。

「なぜだトレトー!!88回、お前が負けた回数だ、だが奇跡的にお前は、戦いによって封印されなかっただけの事……お前は7年前、私に負けたはず!!」

「まだわからないのか……ヤニー、我の兄だというのに」

「!?」

「お前の魔導書をみろ」

 魔導書を開くヤニー。

「何もおかしくない、あの時の勝利は確かに、そう、これが……“クリューナ”の魂

、お前は逃げたが、私は“カリューナ”の魂を奪って……」

《パチンッ》

 トレトーは指を鳴らした。

「!!!」

 ヤニーが魔導書をみる、“人間”の欄に、魂がひとつかけている。そう、倒したはずの“クリューナ”の魂だった。

「こんな、長期にわたってチャームをかけていたと!?そんな、馬鹿なはずはない、お前は俺より、下等な悪魔のはずだ!!こんな高度のチャームを悪魔相手に使えるはずがない」

「ヤニー、私は確かに、あんたを尊敬していた、しかしそれは“ある理由”からだ、その理由も、私が人間界に降り、召喚された7年前に終わった、ヤニー、覚えているか?」

「よせ、やめろ、よせ!!!俺が悪かった!!封印だけは、その魔法陣は!!!お前に使えるはずがない!!」

 トレトーが空中に魔法陣の紋章をうきださせると、今度はヤニーの目の前にそれが展開する。

「大悪魔ヤニーを“悪魔決闘”の勝利により、“我が魔導書に封印する”」

「やめろおおおおお!!」

「お前は、我の執事“ベンジャミン・Q・フォール”を愚弄した、彼は我の強さを信じ、我に数々の魔術アイテムを与えた、お前は、彼の偉大さを知らない、それが敗因だ」

 悪魔ヤニーの周囲に、四方を取り囲むように魔法陣が展開すると、それは小さく小さく箱状に収縮し、ヤニーもそれに伴って小さく圧縮されていき、最後には光る黒い点になった。

 

 トレトーが魔導書をひろげると、それはひとりでに魔導書に吸い込まれていき、“悪魔”の欄に一つ加わった。

「これで、悪魔を一人ゲットした」

「一人?」

 とセレェナが尋ねた。

「そうだ、我はまだ、幼く、戦いの経験は浅い!!」

「88回負けたときいたけど」

「ああ、100回負けると、悪魔は消滅する!!」

「何偉そうに……」

「……」

 しょんぼりしたトレトーの頭をなで、セレェナがいった。

「でも、ありがとうね、カリューナの記憶を取り戻したことも、今回の悪魔を倒したことも、あなたは、恩人よ」

 そういうと、トレトーはにっこりと白い歯を出して笑った。





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