登校。リコ
ガタン、ガタン。列車が揺れる。セレェナは登校の為電車にのり、ドア付近で手すりにつかまり窓のそとをみる。はかなげで美しい。
そのセレェナの二日前の記憶。
夕方、ある墓地のひとつの中央あたり、墓の前で祈りを捧げ花を供えた。はかなげに過去を思う。
―90年前、突如として現れた悪魔たちに人間は翻弄され始めた。自ら“ソウルバッファー”を名乗り、人間を操り欲望のままに扱い、時に人間を豹変させる。彼ら悪魔は自らを“古代技術によってつくられた存在”となのっていた。セレェナも眠る少女も彼らに翻弄された運命を背負っていた。
懐かしい過去を思い出し、つい口走る。
「私にとって、あなたよりいい人なんていないよ……あなたより正しい人なんて」
ふと、墓場で邪悪な気配を感じたセレェナは周囲を見渡す、そして胸元に手をやる。
「しまった、聖五芒星のペンダントを忘れた!」
聖五芒星とは、地上に悪魔が現れたころ、天井から衛星が落下した。そこには様々な“予言”と同時に、古代の科学技術の知識と神聖なアイテムが入っていた。聖五芒星はその一部で悪魔や魔物を遠ざけられる、複製方法が書かれ、教会はそれを量産するために悪魔を遠ざける事ができるのだ。
セレェナは急いで墓場から立ち去り、みつけた建築中のビルの中に入り、入口の直ぐ端で聖典を胸元からとりだした。そして、体を小さくし、小さな声で唱える。
「どうか、古代の神ルカウスよ、私を危険から遠ざけてください!!」
彼女はありったけの霊力を数十分祈りをささげたが、しかし、気配は一向におさまらない、向こうの気配も消えたように思い諦めて立ち去ろうとした瞬間、それはセレェナのすぐそば、入口からぬっと顔を出し、セレェナを覗き込んだ。
「ウソでしょ!!なんで魔物がいるのよ!!」
巨大な顔と、小さな手足。つるりとした頭、おでこのツノ。この世のものとは思えないものがそこにはいた。
音をたて興奮させないようにじりじり後退しながら、セレェナは右足に右手を添える。
「ホーリープット・オン」
小声でそう唱えると、セレェナの右足は白い光のオーラに包まれあ。ふと、魔物が身構えるのをみて、今度は勢いよく両足を入れ替えて右足を振り上げた。
「このクソがっ!!!」
ナポレオンフィッシュのような見た目の魔物のアゴを蹴り飛ばすセレェナ。しかし、魔物はびくともせず声を上げた。
「ぬっ、ぬっぬっ……」
「ウソでしょ!!?利かない?」
突如としてそのくちをゆっくり開いたかと思うと、それはずんずんと顔の半分ほどさけ、彼女を飲み込めるほどのぱっくりとした巨大な穴が現れたのだった。
まん丸の目と奇妙に青い鼻をした小さな子どもが、悪魔の羽の生え、丸く黄色と白の縞々で目のついた帽子をかぶって散策している。ふと空を見上げる。もう日も暮れかけているところで、どこかから声がした。
「トレトー様、トレトー様」
「何だ、ベンQ」
「早く“契約者”を見つけた方がよろしいかと……私の寿命もそう長くはありませんし……」
「わかっておる……だが、いまのワシでは、力がよわく、近づかねば魔力を察知できない」
ふと、トレトーと呼ばれた子供が耳をぴくり、と動かした。
「おや!!気配がしますよ“魔物”の」
「わかっておる、焦るような事か」
子供は帽子をとる。その帽子のしたには、まるく、うずまいた二本のツノがはえていた。帽子は目が光りそのたびに言葉を発しているようだ。
「どうやら、人間に接触しようとしているようです」
「!!」
また別の悪魔が、その建築中のビルの裏の林に寝転がっていた。頭にコートのフードをかぶり、ゴロゴロとしている。
「クソが!!オレ様としたことがこんな事で!!……運が悪かった、しかし禁止されている人間界に飛ばされるとは、まったく運の悪い……子供時代はあんなにもてはやされたのに、いまじゃこんな身分……気に入らねえ!!」
体を起こす。そこには、オールバックで白い髪、左目の上に根本が青い輪をもつ白い角が生え、半目に下がり目で眉毛が端でとがりったハンサムな青年の悪魔の顔があった。ふと立ち上がり、周囲に目をやる、肌で感じた。間違いない。
【見知った悪魔の匂いがするなあ!!!】
セレェナのキレイな赤い髪が、ゆらゆらと朝焼けを反射する。回想が終わり数分後、彼女は優雅に小説を読んでいる、それを隣の車両からみている人がいた。
ZZXことクラントである。クラントは、彼女を見ながら、自分には一生関わることがないのだろうな、とおもいながら、朝焼けから目をそらし、後ろの窓から流れていく寂しく味のない景色を眺めた。
A「生徒会長!!」
B「ごきげんよう、おはようございます!生徒会長!!」
C「今日もきれいですね」
セレェナ「ご、ごきげんよう!」
セレェナは、みると三人の生徒に囲まれているようだった、突然話しかけられてびっくりして本をしまったのをみると、もしかしたら妙な本でもみていて隠したのかとクラントは思った。それに、驚いて後ろに転びそうになったのをみて、もしかしたら自分と似通ったどんくささもあるのかも、彼女も所詮人間だし、とも考えた。
セレェナはそつなく彼女らと些細な会話を話す、生徒会に憧れがあるという少女Aと、BとCは、おしゃれの秘訣などを聞き出したりしている。メイクが薄いと話すと、三人は一様に驚いていた。
ふと、Aがセレェナのスクールバックにしまわれた片腕と小説をみて無邪気に尋ねた。
「何をよまれていたのです?!」
「ベストセラーのファンタジー、夢の錬成よ」
そういい、彼女はそっとその表紙をみせた。ひたいから汗がこぼれる。と同時にアイコンタクトで“彼女”に合図をおくった。それは助けてほしいの合図で、目を二度左右に動かすと“彼女”が現れる。
「おほん!!」
後ろを振り向くと、そこにはセレェナと仲のよい大親友のリコ・フォールドが腰に手をあててたっていた。ウェーブがかったショートボブでふっくらとした頬、まんまるの青い瞳、黒髪にピンクの髪の裏がツートーンカラーになっている。天然でおっとりとした性格で知られる。
A「リ、リコ先輩!」
B,C「ごきげんよう、おはようございます!」
リコは生徒会の書記で、普段はおっとりしているが頭もよく、成績3位の保持者である。
「ねえねえ!皆さーん、ごめんだけどちょっとセレェナに大事な用事があるから、少し彼女をかりてもよいかしら」
そういってリコは、彼女を後輩たちから引きはがし、車両の端につれていってこそこそと何かを話始めたのだった。
「ちょっと、もう少しうまくできないの!」
とセレェナ
「んもー、せっかく助けてあげたのにぃ」
とリコ。
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