電車
その最中、騒動を時折傍目にみていたクラントは、その二人と三人の後輩の奥に、奇妙な子供が座っているのを見た。縞模様の帽子と、ぼろぼろのジーンズとシャツ、オモチャのような目玉のついた、悪魔の羽の生えた帽子をつけた少年だ。
(悪魔だなんて縁起が悪い、親はどこだ、注意しないのか?)
そんな事を考えていた。
すると、前の二人、リコとセレェナが何か口喧嘩のようなものをし始めた。
「感謝シテルって、リコ……」
「なんか片言じゃない?気持ちがこもってないなあ」
「今日の帰り、何かうまいもの驕るからさあ、スイーツでもなんでも」
「でも、セレェナちゃんそういって毎回、家に招いて叔母様の和菓子を盗んできて渡してるだけじゃない、まあ、古風で別に好きだけれどねえ、スィーツって洋風の……」
ふと、先ほどまでセレェナの読んでいた本の表紙がずるりと抜け落ちた、"夢の錬成"のカバー、観察力の鋭いクラントは、そこに別のタイトルが刻まれているのをみた。
《若き男女の営み》
「!?」
ふと、思わずクラントは目をそらした。タイトルからして明らかに官能小説よりの、というかそのものである。
その後も二人は何事かを話していたが、クラントは見てはいけないものを見た気がしてその後もドキドキして、そちらを見ることができなかった。
「文句いってごめん!私の清廉潔白な学園ライフが送れるのは、本性をしってかばってくれるあなただけ、立派なエクソシストになったら、必ず穴埋めをするから」
そう、リコはセレェナの二面性を知る唯一の親友なのだった。
そうこうしているうちに二人は高校についた。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
また数人の生徒の人だかりが、セレェナをみて挨拶をしてくる。そして彼女へ羨望のまなざしを向ける。
「素晴らしいわ、やはりオーラが違うわね、素晴らしい霊力をもっているというし、あの気迫には気おされてしまうわ」
「まさに清廉潔白、穢れなど何一つしらない気品あふれる立ち振る舞いだわ」
リコはセレェナの正体をしっているので隣で頬を膨らませて笑う。
「ぷぷぷ」
セレェナは、リコが笑ったその後に、小さな男児の声で
「ぷぷぷ」
リコをまねるようにどこかから、奇妙な声が聞こえたきがした。振り向いたがそこには何もおらず。
(気のせいかな)
「どうしたの?」
という数歩先をいっていたリコの問いかけで、また校舎への歩みを進め直すのだった。
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