策略

「いい考えがあるの……」

 マリがそう言いだした時、皆は耳を傾けた。


“スゥン”

 空き地に魔法陣が現れ、3人のボロ衣をきた人間が現れた。フードをかぶり、仲睦まじそうに会話をしている。

「あなたが来てくれてよかったわあ」

 と老婆らしき声色の女

「お母さんはあなたの事が大好きになったのよ」

 と母親らしき女

「ここへきて、悪魔と人間に怯えて暮らすことがなくなった“家族”になれてよかった」


 そこをちょうど通りかかり、その様子をみていたニリィは、呆然と立ち尽くした。

「どういうことなの?……何をしているの?トレトー」

 左手をあげて、リングをみる。

「あなたが“結婚ごっこ”をするって、私があなたを思う限り、“いい子”でいるかぎり、ずっと一緒にいてくれるっていったのに、このリングは……あなたにしか反応しない、あなたがくれたもの……“運命の相手”を識別するための」

 みると、リングの宝石部分はポーッと赤くひかりはじめていた。


 悪魔の耳は近場で感じるエクソシストのマナと、そして彼女らの中の一人が舌打ちをしているのを感じた。

「チッ」



 しばらくつけていると、自分が足を早めると早くなり、遅くなると遅くなる、その親子ずれが、奇妙におもえてきた。記憶の奥底に封じられた、怒りのようなものがわきあがってきて、けれどその幻影に、自分が求めているものの答えがあるような気がした。


「ちょっと!!どういうつもりなの!!トレトー!!」

「……」

 突然立ち止まり、何かの紙をとりだしたニリィ。

「これ……“告発状”よ、悪魔議会への告発、エクソシスト用のもあるわ、あなたが言う事をきかないと、何をするかわかっているの!?」

 家族連れは、相変わらず無視してんどんどんと進む。

「私たち、家族でしょ!!私の本当の家族は、ろくでもない人間ばかりだった、私たち、“ごっこ”でも家族だったでしょ!!」

 家族ずれは、なおも楽しく会話をしている。ニリィは、三人ともから悪魔の気配がする事を感じ取っていた。

「どうしてなの!!わたしは、一緒にいたかっただけ!!いやな人間から解き放たれ、過去を忘れ、新しい家族が欲しかっただけ、それなのに、あなたは私をすてて突然いなくなって、やっと嫌な事を忘れて“本当の家族”を知れるとおもったのに、こんな、こんな幻影ってないよ」


 またもやどこかで、舌打ちが響いた

「チッ」

 

 ふと、老婆の姿をした女が子供の姿をみる、トレトーの異変に気付いて声をかけようとする。トレトーは、後悔した表情で、歯を食いしばっていた。

「ト、トレトー……ッ」

 そういった瞬間、トレトーは振り返り、ニリィをむきなおった。

「ニリィ!!すまなかった!!話あおう!!」


 その頃、近場のビルでベリーが舌打ちをしていた。舌打ちをしていたのはベリーだ。

「チッ……」

 ベリーが巨大な背負っているカバンからライフルを持ち出した。彼女だけがもっているカバンで、それは彼女の特注品のようだ。魔法陣やエンブレムがかかれているが、射出するものは“マナ”で練られた弾丸であるため、人間に命中しても殺傷力はおろか、霊力のない人間は痛みすら感じず異常も生じない。

 ベリーの異変にリーダーである“アビー”がそれに気づいた。口を押えるまでもなく叫んだ。

「やめろ!!ベリー!!」

「胸糞ワリィものみせんなよ」

 死んだような目をして、しかしその目は怒りと復讐心に燃え、一点をみつめていた。少女の悪魔、ニリィだった。

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