トレトーの困惑。 ミソシギ市

「それじゃあ、ハッピーエンド?」

「この話は、そもそもいずれかの組織による創作という話もある、エクソシスト、セント・デビル、悪魔組織、けれど誰が喜ぶ結末でもなかったはずよ」

「じゃあー」

「ええ、そうね、セント・デビルが母の様子をみまもったけれど、大戦がおわるころに、母親は息を引き取った、そしてマリはエクソシストになったという話よ」

「ええ?でもそうは見えなかったけ……」

 その時、廊下の奥から悲鳴が響いた。それは、あまりにも克明だったので、リコにも聞こえたほどだった。

「ぎゃああああああああ!」


 勢いよくドタドタとかけこんでセレェナが入口のヘリに手をかけてトレトーを心配する。それは“姉御セレェナ”の怒号だった。

「どうしたアアァアアアッ」

 その勢いにむしろひっくり返ったのはマリのほうだった。しかし、ちょっとすると我に返ってたちあがり、服のほこりをはらうとふふ、と笑っていった。セレェナは、質素な洋風の部屋で奥のベッドに腰かけている老婆をみると左肩から悪魔の羽が片方から生えているのを確認し、首をかしげた。

「驚かしてしまってすみません」

 トレトーがあわてていった。

「突然“魔弾”を撃ってくるなんて、我にも先にはなしておいてくれれば」

「すまんのう……“敵”かと思ったのだ」

「もう、お母さん、いつもいっているでしょ、ここは安全な魔法陣の中よ、それに何かあれば、近場の教区のエクソシストがすぐに駆け付けるのよ」

「じゃあ、この悪魔は……」

「わからないけれど、敵意はないわ」

「そう……」

 突然、老婆はトレトーに手を伸ばした。

「ごめんなさいねえ、私もずいぶんうたぐり深くなったわあ……私が”悪魔と人間、お互いの平和”を主張したというのに」

老婆はトレトーを大事そうに膝の上にのせ、かかえると頭をなでたり頬をなでたりした。

「わわ!!こいつ!!なんだいきなり!リコと同じ匂いがするぞお!!」

 トレトーの言葉を、リコに説明すると、リコはわらった。

「なんだ、なかよくなったのね、私の弟ちゃんなんです!」


 その場が落ち着いたので、マリはセレェナとリコに向けて説明する。

「この人が私の母なんです!!」


「え?」

「どういうことー?」

 セレエナとリコは顔を見合わせて、驚いていた。



 一方その頃、図書館広場にて“ニリィ”を囲むように、3人のエクソシストのガスマスクをした白い制服をきた集団が通信をしていた。中央の一人がしゃべる

「こちら、ミソシギ市第12教区コードネーム“アビー”、“標的悪魔”の姿を目視」

「こちら教会西支部、了解、そのまま監視を続けろ」

 右がしゃべる

「えっ?どういう事!!すぐ対処するべきでしょ?悪魔は殲滅しないと!!」

 左がしゃべる

「“ベリー”だめだ、教会の支持に従え、“まずは穏便に”」

「チッ、いい子ちゃんぶりやがって、“生真面目リリー”」


 無線を終えたあと、ベリーという少女がガスマスクを外して叫んだ。

「どういう事なのよ!!」

 黒髪にピンクのツートーンカラーの下唇にピアスをした、ピンクのツインテール、マスクをしたふくよかな胸をした女子だ。左手に“血液”とかかれたパック飲料をもっている。

「はあ……」

 ため息をついて顔をだしたのっは“リリー”とおそらくコードネームで呼ばれた少女、左目の下にバーコードがついている。眼鏡をかけ、虚ろな瞳、ロングヘア―で、さわやかな青色の髪色をしている。しかしどこかぬけている感じがするのは、ネクタイがずれていたり、ヘアバンドがずれているからだろうか。

 髪をかきあげ、最後に顔をみせたのは、“アビー”という少女。

「……きっと“イレギュラー”の観察のためだろう、それが優先されたというだけだ、私たちに監視の命がついた、最悪共倒れになれば、それこそお前の望通りだろう」

 冷静を装ってはいるが、右端にサメの歯のようなタトゥーがある、そして喋るときは口元を抑える、その口元を抑える右手には、美しい女性のわらったときに見せる歯のようなタトゥーがこさえられている。瞳は優しげだが、体のあちこちに機械じみた鎧をまとっている。黒い瞳をしていた。ウェーブかかった、緑色の髪だ。

「リーダーの“情熱”はいつになったら目覚めるんだか」

 ベリーがつぶやくと、

「軽口を叩くな、追跡するぞ」

 とアビー、

「了解」

 と二人が答えると、瞬間的に散り散りになり、“悪魔ニリィ”を追跡した。



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