保護の部屋 中立医師 聖宿具《ルーン》 聖者ルカウス・イシス ニュートラルガーディアン 

 その部屋は質素で、モノが少なく、かつ清潔に保たれていた。普段はOLとして働いているというマリは、明るく、さわやかな人で何でも気兼ねなく質問していいといった。が、その前に、部屋に入る時に、彼女は“種”を吐き出した。

「どういう事だ?自らの意図で吐き出す、かつ、合意もなく操作されるなんて……強力な力の差がある悪魔か、魔物しか……まさか」

 マリは種を手に取り、手慣れたようにプラスチックのケースにしまった。

「そう……そうね、私は"魔物"ということになるかしらね」

 そのとき、皆はその衝撃の事実に、あっけに取られて立ち尽くしてしまった。


「強いチャームね」

 マリは、リコの様子を見るなり、治療をするといってエクソシストが持つような器具を持ち、リコの目を見たり、口の中をみたり、まるで医者の様な事を始めた。やがて、何か“聖宿具ルーン”のようなものをとりだした。ミニチュアの棺桶のような形をしたもので、ところどころ十字架があしらわれている。

「"聖者ルカウス・イシス"よ、このものの魂を清めたまえ」

 ぼーっとしていたリコは、そう言葉を投げかけられた瞬間にぽっと血の気がもどり、徐々に目の色も生気をおびてきた。

「あれ?ここは……」

 ようやく今までのチャームに気づいたらしく、周囲を見渡し当然の疑問を投げかける。

「よかった!!リコ!!」

 セレェナがリコにだきつくと、それを愛らしそうにマリは笑ってみていた。しかし、その時トレトーは、さらに廊下の奥の部屋、突き当りに奇妙な感覚を感じ、マリに尋ねた。

「お前、悪魔をかくまっているのではないか?それに、私が見えているという事は、悪魔とそれなりに”通じ合った”と考えられるが」

「ふっ……そう感じられますか」

 マリは席をたつと、トレトーに手で道をしめしにっこりとわらった。


 廊下をいき、奥の部屋に近づくにつれ、黒くけだるい雰囲気が漂ってくるのが分かった。トレトーは、間違いかとおもったが、しかし、そんなはずはない。悪魔の匂いである。


 トレトーはふと、マリの腰にさげられているアクセサリーにめがいった、十字架の中央に、星型がある。

「まさか……」

 ふと、その視線に気づき、アクセサリーに手を伸ばしたマリは微笑んでいった。

「ええ、ニュートラルガーディアンです、あなた方は”特別”ですよ」


 トレトーは頭に電撃が走ったようだった。ニュートラルガーディアンは、悪魔とエクソシストが手を組んで"紛争"そのものを終わらせるために作られた組織だという。そう聞かされたことがあったが。まさか本当に実在したとは。

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