いじめられっ子。

「あなた、大丈夫かしら?」

 真剣な顔になり、かつ先ほどとうってかわっておしとやかな雰囲気でスカートをはらって、彼―クラント―に話しかけた。

「へっ……大丈夫……です」

「よかった、もうすぐ先生がくるわ、今度カツアゲやいじめがあったら私たちを頼ってね……」

「ハ……ハイ、でも、いいづらくて、だって俺、友人をかばってから標的になったから、もし俺がかばうのをやめたら……」

「そこは私たちを信じて」

「信じるって、何の根拠があって……」

「信じなきゃ、何も始まらないじゃない……」

「俺には……現実の事なんて、何も信じられない……」

 ふと、セレェナは目をそらしてため息をついた。ナヨナヨした奴は好きじゃないし、ふと、ついある言葉がくちをついてでてしまった。

「そんな風に考えてるからつっかかられる、あなたにも責任があるんじゃ」

 その言葉に、顔を赤らめたクラントは、大声でどなった。

「あんたに何がわかる!!のうのうとカーストの頂点で楽しくやってるやつがよ!!」

「……っ」

 ふと被害者を責めた自分を悔いていると、彼は立ち上がってそそくさと出てしまった。その影をみながら、また目をそらした。クラントは一回下のトイレに入ると、個室のドアを閉めてパンを食べ始める、泣きながら笑う彼のスマホには、先ほどの一部始終がうつっていた。

「これで終わりだぜ、会長」


 屋上の騒動は、これで収まった。先生がきて事情を確認すると職員で話し合うといった。ふと撤収していく彼らをみながら、セレェナは屋上に残り、一人振り返った。


「よっ!!」

 ペントハウスの上からのぞいたのだろう、さかさまの子供と奇妙な黄色い帽子が四つの目でこちらをのぞいていた。

「わっ!!」

 思わずこえをたてて尻もちをつく。


「!!?セレェナ?」

 と、階下からリコが心配そうにみて、教師もまた彼女をみた。

「なんでもない、転んだだけです、ホラ、彼らが屋上をめちゃくちゃにしたから、ちょっと片付けてからいきます」

「ほどほどに、一人で無茶しちゃだめよー」 

 と教師がいうとまた一向は階段を降りていくのだった。

(ホッ)

 として、姿勢をただしその子供をみおろした。

「またあんたなの、何なのよ……“自称悪魔・トレトー”」

「ふっふっふ、“約束”を果たしてもらいにきたぞ……“聖少女セレェナ”」



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