母、良い感じだぞ
今日は新しい村の宣伝動画の撮影。
機材の用意もバッチリ、そして主演の母の衣装とメイクもバッチリだ。
「うふふっ、皆さーん、こんにちわ! 私は『聖母マリー』でーす! 今日は新しく出来た観光地、ナリ村を紹介したいと思いまーす」
……うん、母、良い感じだぞ。
「サイハテ村とノト村に隣接しているナリ村は、日頃頑張っている人達のために、のんびりとした休日を過ごしてもらうための施設が用意してあります」
おもいっきりカンペを見て読んでいるけど、母が魅力的だから大丈夫!
「そしてこちらが新たに出来た温泉付きの宿になりまーす!」
そしてカメラを母から宿屋に向けて…… はい! ここで照明のスイッチオン!
「非日常を感じられるような、素敵な外観ですね! うふふっ、それでは中を見てみましょうね」
外壁のあちこちに付いている派手な照明がキラキラと輝いて、きっと視聴者もビックリするだろう。
そしてまた母にカメラを向け、宿屋に入っていく母のあとを付いて行く。
「まず、一階には宿泊客ではなくても利用出来る食堂があり、一流の料理人の美味しい料理を格安で食べる事が出来ますよ」
食堂には前もって作ってもらっていた様々な料理が、大きなテーブルを埋め尽くすくらい並べられている。
これを作ったのはユアさんが連れてきた新たな移住者夫婦の奥さん、メアリさんだ。
「み、皆さんに、よ、よ、喜んで頂ける、料理を、こ、心を込めて、提供したい、あぅっ! 舌噛んじゃいましたぁ…… うぅっ、マッシュさぁん……」
「ははっ、落ち着いてメアリさん、私達夫婦が食堂の営業をしていますので、ぜひ皆さんナリ村へお越しの際はご利用下さい」
そしてそんなメアリさんを支える優しそうな旦那さんのマッシュさんと二人でこれから食堂の経営をしてくれるみたいだ。
「うぅっ、恥ずかしいです……」
それにしてもメアリさん…… おっとりとして可愛らしい人だけど、顔と同じくらいの大きさのぺぇが特徴的で、気を抜くとそっちに目がいっちゃうから大変…… 痛っ!
「ハルちゃん? どこを見ているのかしら?」
母? ……あ、あははっ、今日は特別だからと言って、サリアさんから譲り受けたという改造セクシー修道服を着て撮影に挑んでいるから、こっちも目のやり場に困る。
でも母が一番綺麗だ、母、最高。
「っ!? えっ、そんなぁ、あ、ありがとハルちゃん…… うふふっ」
ぺぇはぺぇでも見慣れたぺぇが一番ぺぇぺぇするからな、母のぺぇは。
「もう! ハルちゃんったら、お上手なんだから!」
『今のどこにお上手要素があったのよ……』
おい聖剣! 撮影の邪魔するなよ! いいところなんだから!
『ここは思いきりカットでしょ』
……うん、まぁどう考えても今の会話は使えないよな、さぁ、気を取り直して撮影の続きだ!
「えー、一階の渡り廊下を奥へ進むと、大浴場と露天風呂があり、こちらも誰でも利用出来るようになってまーす」
宿屋に繋がってはいるが独立しているし、別の入り口もあるから宿泊しなくても温泉だけ入りに来る事も出来るんだよな、これには村のみんなも喜んでいたな。
混浴もあるらしいし。
「それでは、メインである宿屋の客室をお見せしたいと思いまーす、まずは二階からでーす」
エレベーターで二階に上がり、二階にある内の一つの部屋に入る。
「こちらは手頃なお値段で宿泊できるスタンダードタイプの部屋になってます」
ここはシンプルな部屋で、ベッドが二つ並んで、あとはくつろげるスペースがある。
もちろん客室でも温泉に入れるようになっているが、浴槽は至ってシンプルな物。
ただ、宿泊するだけなら十分な部屋で、これくらいの値段だったら気軽に立ち寄れるって値段設定にしているらしいので、二階はこのような部屋が多く作られている。
「そして三階に上がりますと、こちらはお値段は高めですが、非日常的で素敵な思い出が作れる、そのような部屋を用意してあります」
三階の部屋はちょっと特殊で、母と見た『プリンセスになれちゃう』部屋や、『ワシツ』とかいう魔族の国で高級な宿泊施設で使われているような部屋を真似て作った部屋、あと『ユウエンチ』なる、機械仕掛けで動くベッドやイスが設置している部屋なんかもある。
そういえば謎に馬のような乗り物も置いてあるんだけど、一体何をするんだろう?
「その他、新たな施設も建設予定なので、皆さんぜひ来て下さいねー!」
あとはユアさんがアイデアを考えて、どんどん観光地らしくしていくと張り切っていたので任せる事にした。
よし、これでオッケー! お疲れ様、母。
「うふふっ、上手く出来たかなぁ?」
ああ、最高だったよ! 特にスカートのスリットから見える素敵なおみ足がなんともセクシーで……
「いやん! ハルちゃんのエッチ!」
『バカ言ってないでさっさと帰って編集作業するわよ、もうすぐ日が沈んじゃうわ』
編集作業するのは俺で、お前はただ見てるだけだろ? まったく…… んっ? な、何だこのデカい音は!?
「ハルちゃん、空を見て! わぁ…… 綺麗な花火ね……」
花火!? ……もしかして、動画撮影のために誰か準備していたのかな? せっかくだし一応撮っておくか。
◇
「ぐへへっ、ここか、魔族と人間が共存するというふざけた村は」
「ああ、間違いないですぜ!」
「こんなふざけた村を存在させておく訳にはいかない! 滅ぼしてしまえ! 魔王様の名の元に!」
「へへっ、親分、あの『聖母』とかいう女は……」
「ああ、生かして捕らえて…… ぐへへっ!」
「行くぞ! お前ら!」
「あー! また変な人達がいますー!」
「何だ、このガキ」
「怪しいですねー、村長さんに報告した方がいいですかねー」
「ふん! 面倒だ、始末しろ!」
「へい! ……へっ!?」
「いきなり襲いかかろうとするなんて、危ないおじさん達です…… 怖いですー! えーい!」
「ぎゃあぁっ! ……ゲココーー!!」
「なっ!? シ、ショボが、カエルになったぞ!?」
「わー、可愛くないカエルさんになっちゃいましたねー、ポーイ! えい! やぁっ!」
「ゲ、ゲコォーーー!!」
「ショボォォォォー!!」
「ふう、可愛くないカエルさんだから花火にしても汚いですー、じゃあ次はー」
「ひっ!? ひぃぃぃっ! か、身体が宙に……」
「ヘッボ!? や、止めろ! ガキィィィィ!!」
「親分ーーー!!」
「あっ、あっ…… ヘッボが…… 空中で爆発した…… くっ! き、貴様っ……!! 許さん! 許さんぞーー!! ぐぁっ!! ……へっ? ガ、ガキがいきなり巨人になった? えっ? えっ?」
「どうせならみんなで花火になれば綺麗に見えそうですー」
「や、止めろーー、止めてくれぇぇーーー!! あぁぁぁぁぁーーー!!」
◇
「ハルちゃん、素敵ね……」
日が沈みかけた空に連続で上がる様々な色の花火を、母と寄り添いながら見上げていた。
特に最後の連続で打ち上がる花火は圧巻で、思わず拍手してしまった。
「こんな素敵な花火をハルちゃんと見れて嬉しいわ…… んっ…… ちゅっ…… ハルちゃん……」
『……綺麗な花火かしら? でも二人が盛り上がってるみたいだから口を出さない方がいいわね…… まったく、仲良しなんだから』
《……仲良しでございますね》
『あら アナが何もないのに出てくるなんて珍しいわね』
《いえ、この花火を見て戦闘かと思いまして》
『……別にほっといていいんじゃない? こっちは平和だし』
《そうでございますね…… あっ》
「ハルちゃん…… 早く帰りましょ? 私、もう……」
《……やはり戦闘でございました》
『……?』
《いえ、何でもございません…… はぁ、聖剣も持ち主に似てくるものなんでございましょうか……》
『よく分からないけど、バカにされているような気がするわ』
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