苦しくないのかな?

「バッドステータスって…… どんな効果が? ま、まさか、戦闘するたびに寿命が縮まるとか……」


「うぅぅっ、こんなバッドステータスじゃ冒険者出来ないよぉ!」


 クレアさんはレオくんに抱き着き泣き出す、しかし身長差があって、レオくんの顔が丁度クレアさんの胸に…… 苦しくないのかな?


「どうしよう、どうしよう…… うわぁぁん!」


 ちょっとクレアさん、レオくんもがいてますよ!? ほら、さっきからタップしてるから! 離してあげて!


「レオぉぉ…… んっ? レオ? レオ! あぁっ、きっと私のバッドステータスのせいだぁぁ!」


 違うよ、バッドじゃなくてバストのせいだよ? あまりきつく抱き締められると苦しいんだから、あれ。


「っ! はぁっ、はぁっ、だ、大丈夫ですから、落ち着いて」


「あぁっ! 良かったぁ、レオぉぉ」


 ……うん、二人は恋人なんだろうな、人目も気にせずにチュッチュと、他所でやれ。


「クレアさん? ちゃんと説明してあげたほうがよろしいのでは?」


「あっ、すまない…… あの、レオ、嫌いにならないでくれよ? あのな、わ、私……」


「もう! さっさと言えばいいじゃないの、バッドステータスは『発情』だったって」


 へっ? 発、情…… ?


「わ、わぁぁ! マリーさん、何で言っちゃうんだよー! 心の準備が!」


「そんなに気にしなくても、別に死にはしないわよ、パートナーがいるんだから」


 発情、ですか…… 


「あのビキニアーマー、レーナの魔力のせいで変な呪いがかかってたの」


「わ、わたくしのせいですか!?」


「そうよ、ホーリー○ット教会と戦った時、教皇がレーナの魔力を更に奪った時があったでしょ? あの時にきっと、レーナの奥底にあった小さなバッドステータスの呪いがビキニアーマーに移っちゃったの、それをクレアさんが何も処理しないまま装備しちゃったからこうなったのよ」


「わたくしの中にそんなバッドステータスが……」


「聖魔力の異常な乱れのせいか、元々発情するような○乱女だったのか…… 後者のような気もするけど」


「淫○女!? そんな事ないですわ…… コウタローさんの前でやめて下さい!」


 いや、最初は色んな男を賢者にして喜んでいたでしょ? 俺も狙われてたのに、もう忘れたのか?


「いやぁぁっ! やめてぇぇっ、あれはわたくしじゃないんですの! きっと違う誰かだったんですのよー!」


「過去の話はどうでもいいけど、とにかくそういう訳だから、バッドステータスは簡単に消す事ができないの」


「じゃあ…… クレアさんはどうなるんですか?」


「そうねぇ…… パートナーがしっかり解除してあげるか、そこらへんの誰かに頼むか、かしら? バッドステータスはスキルのようなものだから、良いスキルに変わってくれるまで待つしかないわね」


「そんなぁ…… レオ以外なんて……」


 ……俺にはよく分からないけど、レーナの時みたく、母の加護でもあればマシになるのかなぁ。


「「……それよ(ですわ)!!」」


 うわっ! 息ピッタリでビックリしたわ! 


「いい考えだわ! さすがハルちゃん、ママ誇らしいわぁ!」


「わたくしみたいに踊り狂う加護はかわいそうなのでやめてあげてほしいですけど、アイディア自体はいいですわ」


「そうねぇ…… 『発情』は解除しないと収まらないけど、気が狂わない程度に抑える加護…… とにかくクレアさんとレオさん、もう一度部屋に行くわよ? レーナも手伝って」


 あ、また部屋に入っちゃった。

 村長、お茶飲む?


「あぁ…… キッチンにお菓子があるからそれも持っておいで?」


 うん、長くなりそうだしお茶でも飲んで待ってよう。



 ◇



「さっそく加護を授けるわ、準備はいい?」


「あ、あぁ…… あの、加護って?」


「うーん…… 愛の力?」


「愛……?」


「マリーさん、それじゃあ分かりづらいですわ、勇者の力…… いえ、聖母の力って事にしておきましょう」


「聖母って、あの、今グッズが爆売れしている?」


「うふふっ、恥ずかしいわぁ、あのグッズのおかげでのんびりハルちゃんを甘やかしながら生活できているんだけどね?」


「一応、マリーさんが聖母である事は他言無用でお願いしますわ、勇者を狙う人達もいますから」


「わ、分かった…… まさかこんな若い女性が聖母とは思わなかった」


「うふふっ、それじゃあ加護を授けるわ…… 『発情』した時、モミモミすると一時的に落ち着く加護よ」


「モミモミって、何だ!?」


「お好きなように、モミモミしたり、させたり…… うふふっ、えいっ!」


「っ!! あ、身体がぽかぽかする……」


「ふぅ、これでいいわ、あとは…… 二人が恋人ならの話だけど、もしも恋人以外の人と間違いが起こりそうになったら防ぐ加護もあるけど、必要?」


「いる!!」


「うふふっ、じゃあ彼氏くんにも加護が必要なんだけど大丈夫かな?」


「えっ…… 僕も?」


「大丈夫だ! 早く加護を授けてくれ!」


「……クレアさん?」


「……何だレオ、文句あるのか? まさか浮気するつもりじゃないだろうな?」


「ぜひお願いします!!」


「うふふっ、じゃあクレアさんには『Vガード』彼氏くんには『Tキー』っていう私オリジナルの加護を授けるわ」


「何だ、それ?」


「うふふっ、簡単に説明すると、クレアさんのVをOするためには彼氏くんのTじゃないとダメって事よ」


「えっ? V? O? T?」


「なるほど! 分かった! 早くしようレオ!」


「あれで分かったんですか!? うーん、よく分からないけど、クレアさんがいいなら……」


「……ちょっとマリーさん、その加護、本当に大丈夫なんですの?」


「大丈夫よ、すでに試してるから、私とハルちゃんで」


「えぇっ!?  ハルさんは知ってますの!?」


「うふふっ、教える必要がないから言ってないわ」


「……マリーさん、恐ろしいですわ」



 ◇



 うぅっ! 何だか寒気がしたな、お茶飲も…… ふぅ、まだ終わんないのかなぁ?


「はぁ…… ハルよ、お前には今の儂はどう見える?」


 どうって…… ムキムキマッチョのイケメン?


「そういう事ではなくて…… 若返って若い女と同棲し始めた死に損ない、とは思わないか?」


 うーん…… 思わないね、むしろおばあちゃん、サリアさんは喜んでいると思うよ? ずっとじいちゃんの事を心配してたから。


「サリアが?」


 うん、母と寝ているとたまに夢に出てくるからね『コウちゃんが心配』って。

 あっ! この間は『おじいちゃんの幸せを応援してあげてね』って言われたな、夢だけど、夢じゃないかもよ?


「サリア、すまん…… いつも心配させてばかりだったな」


 泣いたら今度はレーナが心配するから。


「ははっ…… そうだな」


「コウタローさん!? どうしたんですの?」


 ほら、すぐに気付かれた。


「いや、大丈夫だ、ハルが嬉しい事を言ってくれて、ちょっとな」


「もう、心配しましたわ…… ふふっ」


 うんうん、きっとおばあちゃんも喜んでるよ…… あっ、おい! いくら幸せだからって、孫の前でイチャイチャするな! 


「ふぅ、とりあえず解決したからハルちゃん、帰りましょう? ママ、力を使い過ぎて疲れちゃったわぁ…… お姫さま抱っこで連れて帰って?」


 お姫さま抱っこ指定ですか、おんぶとかじゃなくて?


「ハルちゃん」


 はい、分かりました!


「きゃっ! うふふっ、ハルちゃん素敵ぃ……」


 あっちでイチャイチャ、こっちでもイチャイチャ…… うん、平和だな。


 あれ? 今日はずいぶん静かだなぁと思ったら、そういえば聖剣がいない…… ま、いっか!



 ◇



「いぇーい! 私の勝ちー!」


「お姉様、もう一勝負でございます! 今度は格闘ゲームをやりましょう」


「いいわよ! ふふっ、ハルがレベルアップしたおかげで、こうして人間の姿になれる時間が伸びたから良かったわ!」


「そうでございますねお姉様、ずっとゲームをやりたそうにしていましたし」


「見ているのも面白いけど、やっぱりやる方が面白いもの、マリーに私達の分のゲームを買ってもらって良かったわ」


「はい、それでは勝負でございます!」


「かかってきなさい、アナ!」

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