流行ってるんじゃないか? 知らんけど
みんな、今日は視聴者参加型のパズルゲームをやるぞ! もし良かったら参加してくれ、パスワードは……
『ハル、このコメント欄は何? みんな『プリンプリン』って……』
は? プリンプリン…… うーん、流行ってるんじゃないか? 知らんけど。
『……MNKのトレンドなんだって、変なの』
たまによく分からないトレンドが入ってくるからな、気にしたら負けだぞ、聖剣。
『そうね…… あっ! 参加者が集まったみたいよ』
早っ! ……みんなありがとな、じゃあ始めますか!
このパズルゲームは色んな形のブロックを上手く組み合わせて列を作り消していく基本一人でやるゲームなのだが、一応対戦出来るモードもあり、とにかく最後までゲームオーバーにならなかった奴が勝ちというルールだ。
消し方によって他のプレイヤーに攻撃したり出来るのだが、細かい説明はしないでおこう。
それじゃあ…… ゲームスタート!
◇
俺はシンシン、ナリ村に来ているのだが、さっきは大変な目にあった。
思い出すとムカつくので気を取り直して、次はそうだなぁ…… おっ、そういえばこの宿屋の食堂が評判良かったよな? じゃ次は、たらふく食べた後に皿にこっそり虫を入れて大騒ぎしてやるイタズラをするか! へへっ、じゃあ早速食堂に行くぞ!
「いらっしゃいませー!」
「いらっしゃいま…… あら?」
げっ! さっきのエロ女…… プリンプリンしやがって…… まあいい、とりあえず料理を注文するぞ。
「あれがチヨコの言ってた変態?」
「そうです、タロウマル様に危害を加えようとしてたので……」
「ぷぷっ! クスクス……」
なんだアイツら! 人の顔を見ながらヒソヒソと、感じ悪い店だ。
「ご注文はお決まりですか?」
……ああ、この『カレェライス』ってやつと、おすすめトッピングの『トゥンカツ』をもらえるか?
「かしこまりましたぁー! メアリ様、カレェにトゥン入りまーす!」
「はぁーい、ちょっとっ、待っててぇっ! 下さぁぁ、あん、い!」
……厨房じゃない所から焦っているような声が聞こえたけど、大丈夫なのかこの店?
「お待たせ、しましたぁ…… 今作りますね」
あれが店主…… 地味だけど可愛らしいじゃないか…… えっ? パイがデッッッ!! まるで顔が三つあるみたいだ…… ケルベロスか? ちょっと服が乱れているのが気になるが。
「…………」
厨房から小さな女の子が俺を見つめているけど、もしかして俺のファンか? へへっ、サインなら後でやるから。
「……あのおじさん怪しいです、ミアはママに代わって監視中です」
そんなにジーッと見られると照れるぜ! ははっ、あんな子供にまで人気があるなんて、俺も売れたな!
料理が出来るまでに確認をして…… へへっ、特注の本物そっくりなGの準備もオッケー、隠してあるカメラの角度もバッチリ、あとは料理が来るのを待つだけだ。
「ミア、ママの邪魔をしたら駄目だよ?」
「パパ、あのおじさん変です! 怪しいです!」
「……特に怪しい事はしてなさそうだけど、勝手に決め付けちゃお客さんに失礼だよ?」
「ミアには分かるんです! この目で見たので間違いないのです!」
「うーん、ミアの目かぁ…… でも、ここじゃあママの邪魔だから、パパと一緒にあっちに行こう?」
「はい、監視続行です!」
はぁー、やれやれ、人気者はツラいなぁ! そろそろ変装して歩かないとマズいかな? はははっ。
「お待たせしましたー! カレェライスにトゥンカツです」
うわっ! めちゃくちゃ美味そうな、食欲をそそる良い匂いだ。
とりあえずこのカレェライスを少し残るように食べて…… う、美味ぁっ! 野菜や肉の旨味が溶け出したドロッとしてピリッと辛いソースと、米の相性が抜群だ。
そしてトゥンカツ、サクサクの衣に、中の肉は柔らかく噛むと口の中にジュワっと肉汁が広がる。
これだけでも絶品なのに、更にカレェのソースを絡めると…… 美味い!! た、食べる手が止まらないぜ!
「あら、ミア? こんな所で何をしているんですか? マッシュさんまで……」
「ママ! ミアはあの怪しいおじさんをパパと監視中です、しーっ、です!」
「うふふっ、二人で探偵さんごっこですか? 楽しそうですね」
や、やってしまった…… 美味すぎて全部食べてしまったじゃないか! クソっ! 仕方ない、ここでのイタズラは諦めるか。
「ありがとうございましたー」
「怪しいおじさんは怪しいままでした……」
んっ? そんなに見つめてきて、お嬢ちゃん、このシンシンのサインが欲しいのか? 仕方な……
「いらないです!!」
えっ!? あ、あぁ…… 走って店の奥に行っちゃったよ…… さては、照れて恥ずかしくなったんだな? へへへっ。
普通に美味かったから代金はキチンと払ってきたが…… イタズラ配信としてはつまらなくなってしまったな。
次はどうするか…… 村人にドッキリ? いや、それだとインパクトがないし、せっかくこの村に来て、温泉宿を予約した意味がなくなる…… んっ? 温泉宿…… 温泉…… あぁっ!! へへへっ。
◇
ふぃー、お疲れみんな! いやぁ、視聴者の中にプロが混ざってて白熱した戦いになったな! 配信的には盛り上がって良かったけど、少しは手加減してくれよなぁ。
おっ、時間も丁度良いし、今日はここまで! じゃ、またな!
ふぅっ、楽しかった、またやろう。
次までにプロと良い勝負が出来るよう練習しておかないと…… んっ? 扉をノックする音が聞こえたな、はーい、入ってもいいよー。
「ハルちゃん、配信終わったの?」
ああ、今終わったよ、どうしたの。
「それじゃあ…… また温泉行きましょ? うふふっ」
温泉か、そうだなぁ、ゲームで疲れたし行こうか。
「やったぁ! うふふっ、また一緒に入りましょうね?」
ああ、じゃあ水着の用意しないとな。
『また二人で温泉? 仲良しよねぇ…… じゃあ私はアナと出掛けてこようかしら?』
アナ? そういえば最近現れないなぁ。
『ハルがモンスター狩りをサボってるからでしょ? ……まあ、毎日一緒にご飯を食べてるのに気付かないハルもハルなんだけどね』
そんな事言ったってしょうがないじゃないか、裏山が無くなって、それから忙しかったんだし。
『変な声で言うのやめなさいよ…… さっさと温泉行って来なさい』
はーい、母、行くよー。
「あぁん! ハルちゃん待って! ……ハルちゃんはどっちの水着が良い?」
母が両手に持っている水着…… 左手に持っているのは白のビキニ、普通そうに見えるが水に浸かると透けるやつ。
右手に持っているやつは黒のビキニで元々透けているやつ…… どっちも透けてるじゃん!! 駄目! 普通のビキニにしなさい! この間着てたやつ!
「えぇー、せっかく買ったのにぃ…… じゃあ別の機会で、ね?」
……ああ、別の機会で。
「それじゃあ普通のを用意して…… 行きましょうハルちゃん、うふふっ」
温泉が出来て、俺達はすっかりハマってしまい、暇があれば二人で行っている。
男風呂や女風呂もちゃんとあるんだけど、俺達が行く時はいつも混浴に入る。
一応ルールとして混浴に入る時は水着を着用となっているが、たまに夜遅くに行くと…… うん、まあ、開放的になりたい人達がちらほら、しかもほぼカップルという…… なんだかなぁー。
俺達はただ普通に温泉でのんびりするのが好きだからあまり関係ないけど、出くわしたら気まずいから逃げるようにしている。
「ねぇ、温泉入るようになってから肌がスベスベになったと思わない? うふふっ」
母は元々スベスベだったけど、更にスベスベになったよ。
「うふふっ、ハルちゃんもね? やっぱりスベスベはいいわよねぇ」
だからといって腕に顔をスベスベしなくてもいいよ?
「ハルちゃんだって私の谷間でいつもしてるのにぃ」
……はい、すいません、好きなだけして下さい。
そして俺達はゆっくりと歩きながら、温泉へと向かった。
ちなみに食堂でのシンシンの様子も生配信されており、今の急上昇ワードは
〖トゥンカツカレェライス〗〖店主はケルベロス〗
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