こんな決着で良かったの!?
「あぁ、コウタローさん!」
「無事で良かった……」
村長とレーナが抱き合いながらお互いの無事を喜んでいる。
ただ、俺は素直に喜べない……
こんな決着で良かったの!? 爆発オチみたいになってんじゃん! 巷では『最低』って言われてるんだよ!?
『ハル、気を付けなさい…… この二人から魔族の魔力を感じるわ』
ひょっとして爆発オチの犯人からか?
一人は肩にかかるくらいの金髪に小麦色の肌、そしてビキニアーマーを装備している健康的な女性。
そしてもう一人は…… 身長が低い黒髪の…… 子供? 俺より年下に見える男の子だ。
「なぁ、伝説のビキニアーマーってどこにあるんだ?」
いや、知らない…… あっ、レーナが装備していたやつか?
「あれか! あー、もう誰か取られちゃってる、残念」
「仕方ないですよ、それより僕達が依頼を受けたのはホーリー○ット教会の教皇の身柄の拘束なんですから」
「おっとそうだった、じゃあレオ、いつもの道具で頼む」
「分かりました…… えいっ!」
少年が壊れた壁から外で伸びている教皇に向けて球を投げると、教皇の身体が光に包まれ消えてしまった。
「本当に便利だよなぁ、それ」
「この魔物捕獲ボウルですか? 魔族の人達の技術力って凄いですよね」
魔族!? 今、魔族って言ったよな? じゃあコイツら……
「何か勘違いしているかもしれないけど、私達は人間だからな?」
えっ、そうなの?
「はい、僕達は冒険者で、たまたま依頼を受けたのが魔王さんだったんですよ」
ま、魔王!? 魔王って、あの魔王か?
「皆さんが噂をしている魔王さん本人ですよ、パッと見ただけじゃ『魔王』って感じのしない、気さくな人でしたけどね」
『その魔王が何でホーリー○ットの教皇を狙ってたの? まさか更に人類の領土を奪うための人質?』
「わははっ! 違う違う! 教皇とかいう奴、最近魔族の支配下になった国の前の王様と手を組んで、市民から高い税金を取って苦しめていたらしいんだ、あと裏で色々と悪事もしていたのもバレたみたいだから、その取り調べをするんだと」
あれ? そういえばその国の事、前にニュースでやってたよな? 魔族が安い税金で代わりに統治して、逆に住人達が喜んでいたとか……
『……魔王の方が勇者らしい事してるんじゃない、ハルは悔しくないの!?』
いや、悔しいも何も…… 俺が旅立つ理由が更になくなってラッキーとしか思わないな。
『もっとやる気を出しなさいよ! 本来は人間側がやらなきゃいけない事を魔王に助けてもらった形になるのよ? はぁ…… 情けない』
「そうは言っても魔王も色々大変らしいぞ? 魔王の言うことを聞いてくれる奴らばかりならいいけど、魔王の名を使って悪さをしている魔族もいるらしいからな、あまり人間の国に構っている暇もないんじゃないか?」
『ハル、聞いた? こういう時こそ勇者の出番よ!』
急に調子良くなったな聖剣、さっきまであんなに早く帰りたそうにしてたのに。
『だって…… ホーリー○ット教会の連中、変態ばかりなんだもの! 戦闘っていっても変な事ばかりして…… スカっとしたいのよ、私は!!』
単純にストレス解消したいだけかよ……
「魔王の話だと『今は押さえ込めてはいるけど、いつ人類側に迷惑をかけてしまうか心配』とも言ってたなぁ、だから勇者さんも少しは頑張れよ?」
はぁーい、頑張れたら頑張ります。
『頑張る気が更々ないわね、まったくもう!』
とにかく! レーナも助け、ホーリー○ットの問題も解決! めでたしめでたし…… さあ、帰ってゲームしよ。
「あ、あの…… そこの冒険者さん?」
んっ? レーナ、手に持っているのはビキニアーマー? いつの間に着替えたんだ? 格好が最近着ているシンプルなワンピース姿になってる。
「んっ? それ、ビキニアーマー!?」
「あの…… 良かったら差し上げますわ、わたくしは装備しませんから」
「い、いいのか!?」
「はい、戦闘するとしてもわたくしには
必要ありませんので、それに…… コウタローさんの好みではないですし」
「本当にいいのか? やったぁ! ありがとう聖女さん!」
「ふふっ、わたくしはもう聖女ではありませんよ? ただの…… コウタローさんのパートナーのレーナですわ」
「ヒャッホー! 早速装備しちゃお!」
「待って下さい! 装備をするにはまず教皇が付与していたデバフ魔法を解除しなくては……」
「えっ? 装備しちゃった……」
「な、何やってますのーー!?」
レーナの手から受け取ったビキニアーマーを説明を聞く前に装備しちゃったよ、この人……
「大丈夫ですの!? わたくしの場合、身体が麻痺して動かなくなりましたわよ?」
「んー? 何ともないぞ、わははっ!」
「おかしいですわね、確かにデバフの魔法は発動してますのに…… 一応解除の魔法をかけておきますわ、もし何か変だと思ったらわたくしに言って下さい」
「ああ! それじゃあレオ、依頼達成の報告に行くか!」
「そうですね、それでは皆さんお騒がせしてすいませんでした…… クレアさん、行きますよ!」
レオとかいう少年がバッグから何か丸い玉を取り出し前方に投げると、玉が割れて中から翼の生えたような不思議な物が現れた。
そして二人はその不思議な物に跨がると、そのまま空へと飛び立っていった。
……すげぇ、何あれ!? 俺も乗りたい!
『フライングバナナボート…… ずいぶんと古い道具を持っているのね』
バナナ!? 何それ、美味しそう!
『四百年前、魔族が奇襲攻撃に使っていた兵器よ、今二人が乗っていった物に武器は付いてなかったから、きっとレプリカね、魔物捕獲ボウルといい…… あれが魔族の魔力を感じた原因だわ』
へぇー、魔族って色々便利な物を使ってるんだなぁ…… フライングバナナボートか、どっかで売ってないかな?
『あれがあればハルも外に出てくれそう…… そして乗っている間に私の力をこっそりちょちょいとフライングバナナボートに流せば…… ふふふっ』
聞こえてるからな? 乗るとしてもお前は置いていく。
『ふっふーん、無駄よ! なんたって私達はリンクしているんだから、すぐにハルの側に行けるわ!』
そうだった! じゃあ諦めて大人しく家でゲームして配信してよう。
『……はぁ、どんだけ旅立ちたくないのよ』
「皆さん、ありがとうございました」
「本当にありがとう、おかげでレーナを無事救出する事ができた」
いやいや、お礼なんていいんだよ
「うふふっ、一応家族だから…… ねっ?」
「マリーさん、勇者様……」
「でも『お母さん』とは呼ばないわよ?」
「わ、わたくしはそんなつもりはありませんわ!」
「うふふっ」
おばあちゃんとも呼ばないから安心しろ。
「もう! 勇者様もヒドいですわ!」
はははっ
「それじゃあ帰るか…… 儂達の家に、レーナ」
「はい、コウタローさん…… ふふっ」
よし! 帰るぞー! 今度こそ、めでたしめでたし、だな!
「ひぃぃ! 勇者さーん! 大変ですー!」
ルナ、そんなに慌ててどうした?
「魔法の練習をしていたら……」
お前、ずいぶん大人しいと思ったら、何やってたんだよ!
……んっ、何か聞こえるぞ?
……ゲ?
……ゲ ……ゲ?
「カエルさんが合体して大きくなっちゃいましたー!!」
……ゲコゲコー!!
ぎゃあぁぁぁっ! 気持ち悪いーー!!
緑のデカいカエルがこっちにジャンプしながら向かって来るー!!
ひぃぃぃぃー! ……んっ、また目隠しですか? 母。
「ソフィア、ついでだからあれを退治してスッキリしちゃえば?」
『……仕方ないわね』
「あれで我慢しとくわ!!」
んー? 聖剣の声がクリアに聞こえるような…… いやん! 母、耳に息を吹きかけないでぇ!
「すぅぅ…… ふーっ…… どりゃぁっ!!」
メメ…… じゃなくて、破裂したような凄い音がしたよ!? えっ? えっ? はぅっ! 耳舐め、らめぇ!!
『ふぅ…… 思いっきりパンチしたらスッキリしたわ!』
は、母ぁ…… いやぁん、しゅごいぃ……
『さっ、帰りましょう』
は、はひぃ…… かえりましゅ……
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