一気に力が抜けたように感じる
「お姉ちゃん、このお兄さんどうしたの?」
「怪しかったから捕まえたのよ」
「へぇー」
「うふっ、そんな事より向こうで皆と遊びましょう?」
「はーい」
くっ…… 身体がダルい…… 一気に力か抜けたように感じる。
『ハル? ハル?』
うっ、聖剣か…… ここは一体……
『きっと魔族界で話していたサキュバスが隠れ住んでいる場所よ、さっきハルに魔法を掛けた女の子達、皆サキュバスだったわ』
サキュバス? そういえば宙に浮かぶセクシーな女の子達が俺にいきなり…… あ、あれ? 手足に枷が付けられていて、ベッドに繋がっているから動けない!
『どうしよう…… ハルの魔力が吸い取られて私も何もできない、せめてアナに連絡できれば良かったんだけど、特殊な結界が張られてて連絡も無理ね』
マジか…… エミリアちゃんやりやがったな、ドジっ子め!
『否定できないわね…… くしゃみで魔力を乱すなんて』
でも村は近いし、魔力が回復すれば……
「えぇー!? この男の人、魔力が豊富なのー?」
「そうみたい! ちょっとつまみ食いしてもいいかな?」
「いいねー! 私も食べよ」
お、おい! お前ら、何をするつもりだ!
「わっ! 目覚めたの? ふーん」
「じゃあまた眠ってねー?」
へっ? あっ…… また、ぽわわぁって……
『えへっ、お兄さん』
うわっ! ちょっとなんて格好をしてるんだ!? ぺぇが! ぺぇが溢れそうになってるぞ!
『夢の中だから大丈夫! じゃあ…… いただきまーす』
ちょ、やめ…… いやぁん、そこはぁ…… あひっ! くぅぅぅーん……
『えへ、ごちそうさまー』
『ちょっと薄いね? お姉ちゃん達、どれだけ食べたんだろう? まあおやつには丁度良かったよー、じゃあおやすみー』
ああ、また…… 力が抜けて……
◇
「はわわっ! どうしようナっくん、また力加減間違えちゃった!」
「エミリア、お前なぁ…… ったく」
「うぅっ、ごめんなさぁい」
「いつもは上手くいくんだから次は上手くやれるよ、また頑張ろうな」
「ナっくん…… 優しい、しゅきぃ」
「ちょっ、抱き着くな! ほら、ミコとマキが見てるから!」
◇
「ハルちゃん! ……気のせい? 今、近くにハルちゃんがいたような」
《何も感じませんでしたよ?》
「そう…… あぁん、ハルちゃん、早く会いたい」
《マリー様、その気持ちは分かりますが、だからといってハル様の服を身に付けなくてもよろしいんではないのでございませんか?》
「イヤ! ……すんすん、ハルちゃんの香りに包まれてないと寂しいんだもん!」
《そうでございますか…… ハル様、早く帰って来て下さい、アナは頭がおかしくなってしまいそうでございます》
◇
あぁ…… 夢の中でまさかあんな事をされるなんて……
『大丈夫?』
いや、大丈夫ではない、魔力を吸い取られて更にダルくなった。
まさか、ジュースを飲むようにストローで魔力を吸われるとは…… 夢だからか、身体にストローを刺されても痛くもかゆくもなかったが、良い気分ではないよなぁ。
「あははっ! 待てー!」
「こっちだよー! 捕まえれるかなー?」
さっきから気になっていたが、外から楽しそうな笑い声が聞こえるんだよな。
『女の人の声に…… 子供?』
そういえば目が覚めた時にも子供の声が聞こえたような気がするな。
『気になるけど、お互い動けないし困ったわね』
聖剣もか? 最近はちょくちょく居なくなったりしてたから、勝手に動けるようになったのかと思ってた。
『ハルがレベルアップしてくれたから多少は自分の力で移動は出来るようにはなったけど、あくまでもハルの力を借りて動いてるからね、ハルの魔力が無いなら私も動けないわ』
ふーん…… 不便だな。
『聖剣を何だと思ってるのよ、一応勇者の武器として存在してるのよ? 勇者が居ないと意味ないじゃない』
そんなもんか…… はぁ、ダルっ…… 手足の枷が取れないと何もしようがないな、寝るか。
『のんきね…… でも、本当にどうしよう』
とりあえず力を吸い取られる前に話が出来ればいいんだけど。
「お兄ちゃん、誰?」
誰か部屋に入ってきた…… 子供? お前こそ誰だよ。
「僕はオンワ村のショータ! ……もうオンワ村は無くなっちゃったけど」
……オンワ村!? って事はお前が行方不明だった子供か?
「僕を知ってるの?」
ああ、両親が心配していたぞ?
「えっ…… パパとママは村に悪い奴が襲ってきて死んじゃったんだよ? 村の皆も……」
生きてるぞ? 魔族の人達に助けてもらって、今は魔族の国で匿ってもらってるんだ、もうそろそろこっちに帰ってくるはずだ。
「う、嘘だ! だってお姉ちゃん達が『パパとママはもういないから、私達と暮らそう』って…… 僕が悪い奴に誘拐されて、お姉ちゃん達が助けてくれた時に言ってたもん!」
いや本当だって、他にも子供を探していた親もいたし、その内サイハテ村の隣に帰って来るから、その時に自分の目で確かめてみろよ。
「他の人…… もしかして、ショーゴくんとショーンくんのパパとママもかな?」
いや、それは分からないが…… 君ら名前似すぎじゃない?
『ツッコむ所、そこ?』
気になるじゃん…… まあ、とにかくショーなんちゃらくん達と皆で確かめてみるといいぞ? あと、あのお姉ちゃん達は危険だから気を付けろよ? 俺みたいになるぞ。
「お、お姉ちゃん達はみんな優しいよ! 特にシオリお姉ちゃんは僕に優しくしてくれるんだ!」
そ、そんな怒んなくても…… へぇー、例えばどんな風に優しいんだ?
「えっと…… 寝る時は寂しくないようにいつも添い寝してくれて、甘やかしてくれて、ご飯も食べさせてくれて、甘やかしてくれて、あとは……」
『どっかで聞いたような話ね』
ふん、その程度か、まだまだだな。
『何を偉そうに…… 張り合ってるんじゃないわよ』
「そ、それに! 気持ち良い事してくれるもん!!」
なん…… だと……
あー、いけませんよお姉さん、ギルティ。
「耳かきとかマッサージとか、上手なんだよ!」
『ハル、何を想像してたの?』
いや…… ねぇ、みんな? あんなセクシーな格好をしたサキュバスだよ? 何を想像って…… ナニだよね?
『誰に話しかけてるのよ、まったく!』
「そんな優しいお姉ちゃん達が嘘をつかないよ! お兄ちゃんのバーカ!」
そっかぁ……
『子供にバカって言われて凹んでるの?』
べ、別に凹んでなんかないんだからね!! 寝る!!
『完全にふて寝じゃない……』
もう知らない! ここで一生サキュバスのお姉さん達とあんな事やこんな事してればいいんだ! ふん!
……それはそれで良いのか? いや知らん! 寝る!
◇
「ショータ、どこ行ってたんだよ」
「ショーゴくん…… あのお兄ちゃんの所」
「どうしたんだ? 何かあったか?」
「あのお兄ちゃんが…… みんなのパパとママが生きてるって……」
「えっ!? ヨゾラお姉ちゃん達はパパとママは死んだって言ってたじゃないか!」
「魔族の人達に助けられて、近いうちにこっちに戻ってくるんだって、本当かは分からないけど」
「…………」
「サイハテ村の隣に帰って来るみたいだから、本当かどうか確かめたい」
「ショーンとタロウマルにも話しておこう、でもお姉ちゃん達には内緒だぞ?」
「うん……」
◇
「はぁ…… お腹空いた」
「ヨゾラ、さっき捕まえたアイツの魔力を食べたばかりでしょ?」
「シオリだって一緒に食べたから分かるでしょ? もっと濃い味のが食べたいのよ」
「あら? あなた達も食べたの? 少し不思議な味だったわよね」
「あたしはショーゴの味の方が好き」
「チヨコ、タマキ…… あなた達は濃いのを食べたからいいじゃない」
「あーあ、早く夜にならないかなぁ、ショータくんのが欲しいわ」
「夜だけ、しかも夢の中だけじゃ満たされないわよ、ショーンだって貯まってるんだから」
「子供のうちにあまり抜き過ぎるのは成長に良くないの、分かってるでしょ?」
「そう、私達は余った魔力を食べさせてもらうだけ、危険な目に合わせたらいけない」
「もう! 分かってるわよ…… はぁ、ショータ達、早く大人になればなぁ」
「でもそうなったら今の可愛さは無くなっちゃう」
「それもそれで困ったものよねぇ」
◇
『ハル……』
うぅん…… あと五分……
『早く起きて!』
うるさいなぁ、今何時だと思って…… あれ? 何時なんだ?
んー! よく寝た…… はっ! 手足の枷が取れてる!?
『ハルの魔力が貯まってきたから私が動いて外しておいたわ、さあ、早くここから脱出しましょう? 子供達はハル一人じゃ危険だから、村に帰って救援を頼んだ方がいいわ』
いつの間に…… 分かった、行こう。
どれだけ寝ていたのか、すっかり夜になってしまったな。
『囚われてるのに熟睡出来るハルって、案外大物なのかもしれないわね』
えへへ、それほどでも……
『別に褒めてないわよ』
うん、知ってる。
『はぁ……』
よし、馬鹿やってないで脱出だ!
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