第4話 我が輩は大物を狩る
さて、必要な観察は終わった。
我が輩が狙うべきは狩りに出る個体だ。
この五匹の中で唯一個体で行動する為、狙いやすいと判断した為である。
我が輩は待った。その個体が次の狩りに出掛けるのを、洞窟の天井にぶら下がりながら。
そしてその時は来た。
狩りを行うその個体はのそりと身を起こし洞窟の外へと向かったのだ。
我が輩はその後を追いかける。そして襲うタイミングを図った。
襲うタイミングは事前に決めていた。あの個体が狩りを成功させた瞬間だ。
その瞬間に最大出力でしかも最も収束させた超音波を叩き付けるのだ。
もし、これで意識を失わなければ、我が輩はこの個体を狩るのを諦めまたネズミ等を狩る生活に戻るだけである。
そして作戦は成功した。思っていた以上にあっさりと狩りを成功させ緑色の個体は意識を手放しその場に倒れ伏したのだった。
そして我が輩はその醜悪な存在の血を啜った。自らの腹が千切れんばかりに啜り上げた。
だが、あまりに大きさに違いがあった為か、それだけでは死に到らなかった様である。
そこで我が輩は至近距離からの超音波攻撃を試すことにした。
耳元に近づき最大出力最大収束で超音波を放つと、次の瞬間弾けたように頭が動き醜悪な個体は息をしなくなった。
私は思った。この方法であれば、夜寝静まった頃にでも洞窟を塒にしている他の個体も複数同時に相手にしたとしても倒せるのでは無いのかと。
だが、その前にやるべき事があった。そう、あの石を食べることだ。
未だ腹は膨れているのだが、石の場所を探り当てる頃には腹も減るだろうと考え、口と足を動かし皮膚を割き筋肉をかき分け石を探した。
そうしてやっと見つけた石を私は食べた。
甘美。それはなんと甘美な物であろうか。
さらには、命を殺す時に流れ込んできたものと同じ力が身体を巡るのを感じる。
我が輩は理解した。それ故に狩りを行っていた個体が優先的に石を食べていたのかと。
となれば、我が輩は今まで勿体ないことをしていたかも知れない。
昆虫は兎も角として、ネズミからはこの石が有る可能性あったのだから。
どれだけの成長に必要な力を捨ててしまっていたのか…非常に悔やまれるところある。
とは言え、それはもう過ぎてしまったこと。これからは出来得る限り石を取り出し食べることにすれば良いだけのことである。
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