第45話 我が輩強欲になる

 足りない。

 元タックス王国に進出していた軍を悉く手に入れたがまだ足りない。

 我が眷属になるべき者達はこの世の中にまだまだ存在している。

 もっと、もっと手に入れなければならない。

 さらに力を、さらに力を…


 魔王の種。

 それは発芽することで、保持者に力を与える存在。

 だがそれだけではない。

 魔王に相応しい存在たらんとするべく感情を操作する物でもあった。

 そして、我が輩は眷属を兵士を増やすことに固執することで強欲の感情に傾倒するようになって行く。


「次の攻略目標はプレサ王国だ」

 絶対的な支配者からの命令が今下された。

 タックス王国の土地の一部を手に入れた国がまた一つ消えようとしている。


 それは正しく蹂躙であった。

 捉えられ眷属にされる者。

 殺され兵士にされる者。

 そこに人間としての尊厳など無く、ただ身勝手な欲に翻弄されて次々と支配下に置かれていった。

 プレサ王国の軍人、民間人問わずに平らげられていく。

 我が輩の強欲の赴くままに、我が輩に支配された眷属達の暴力のままに。

 そして、眷属と兵士が充足すると、次に始まるのは狩りだ。

 我が輩へと献上される魔臓を集める為に狩りが始まる。

 哄笑が鳴り響く。

 自らの軍勢の威容に酔いしれ、献上される更なる成長に必要な臓物に酔いしれる狂気の笑い声が、誰に聞かそうとするでもなく唯々響く。


 我が輩の魔王の種は芽吹き、我が輩は魔王たらんと活動を本格的に始めるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る