第三章 吸血鬼達と死霊行

第32話 我が輩と戦場視察

 我が輩は今、戦場を望む高空に居る。

 今回のタックス王国の行く末を確かめる為と、今後の戦略や戦術をアップデートする為の視察だ。

 五つの国から同時多発的に攻め込まれるタックス王国。

 これに対抗する為、タックス王国は国内の戦力を各戦線に分散配置させられることを強いられた。

 この時点で詰みの状態と言えるのだが、この状態を維持する存在が居た。

 そう、我が輩が嘗て森で遭遇し逃げ出した五人組のハンターのパーティー。

 確か名前は暁の戦士だったか。

 その暁の戦士が各戦線を次々と転戦し現状維持を行ったのだ。

 森での邂逅で圧倒的な強さを持っていることは知っていたが、まさかこれ程までデタラメな力を持っているとは…

 タックス王国が小国ながらも周辺諸国に今まで飲み込まれなかった理由が垣間見られるというものだ。

 だが、それも何時までも続くものでは無かった。

 疲弊という敵の前では暁の戦士も勝てず、パーティーが瓦解することになった。

 そこからは実に脆かった。

 あっという間に各戦線は崩壊し、始まったのは略奪であった。

 前線で戦っていた兵士による略奪は、まるで蝗の群れの如く勢いで通り道の村々から物資や人を攫っていく。

 そして、最終局面。

 タックス王国首都での戦いは籠城戦となった。

 だが、孤立無援の状態での籠城など長く続く訳もなく。

 タックス王国側でクーデターが発生。

 王族は殺されることになり、門戸が開かれることになったのだ。

 これにて今回の戦争は終結し、戦後処理へと移ることになる。

 各国は自身の領有する地域に近い土地を、次々と自身の領土へと組み込んでいく。

 タックス王国という存在が地図上から消え失せるまでにはそう時間は掛らなかった。

 ただ、領土割譲で多少各国が揉めたことがあったくらいの問題は起こってはいた。

 我が輩は情報収集を終え、眷属達へと血を分け与え情報を共有。

 もし、今後戦争に巻き込まれた時に備えるのであった。

 さて、今後はどう動いたものか。

 元タックス王国は好き勝手な領土割譲により国境線が大変な事になっている。

 今後は今まで協力関係だった各国の動向を見守る必要があるだろう。

 だが、それと同時に目の上のたん瘤だった暁の戦士がいなくなった今、森に籠もり力を付けるというのが一番無難だろう。

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