第56話 我が輩傲慢になる

 ある日我が輩の元に一報が入る。

 南方大陸より使者が来たという報告が。

 我が輩はこれに興味を持ち謁見することを許した。


「この度は魔王陛下に拝すること誠に有り難き幸せで御座います」

 南方大陸からの使者、ギグロバ教の枢機卿の一人がそう声を上げる。

「ふむ、して何用かな?」

「は、是非我らも貴方様の配下の末席に加えて戴きたくはせ参じました次第で御座います」

「ほう、我が配下になりたいと」

「左様でございます」

「良いであろう。我が配下の末席に加わることを許す」

「は!!有り難き幸せ」

「我が輩の配下に成るための儀式を行う故、配下になりたい者達をこの地へと連れて参れ」

「はい、直ちに戻りそのように伝え直ぐにでも戻ってまいります」


 ククク、人間牧場の人間共の数を減らさずに新しい眷属を手に入れることが出来る。

 なんと上出来よの。


 そして数ヶ月後、ギグロバ教の信者達が南方大陸から馳せ参じた。


「では儀式を始める。

 これを飲むが良い」

 そこには真っ赤な液体の入ったゴブレットが用意されていた。

 血なまぐさい匂いを漂わせるそれを見て固唾をのむギグロバ教の信者達。

 だが、それを眺める視線が周囲から寄せられていた。

 魔王である我が輩やその眷属達の視線である。

 ギグロバ教の信者達は意を決しその液体を飲み干した。

 すると次の瞬間彼等の身体に激痛が走る。

 亜人の肉体から吸血鬼の肉体へと変化する痛みであった。

 内臓は血肉を啜るため器官へと変貌し、腰から翼が生える。

 そんな肉体の変化を伴う激痛が過ぎ去った後に、彼等に訪れたのは幸福感であった。

 これは、亜人としての特徴を有した吸血鬼の誕生である。

「さて、南方大陸にはまだまだ人々がいるのであろう?

 もっと連れて参れ」

「は!全ては魔王様の御心のままに」


 こうして我が輩は新たな眷属を増やすことに成功する。

 それと共に傲慢さも肥大化させながら…

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