第62話 吸血鬼世界の最後
吸血鬼達は我が輩を頂点にしてこの世界を支配していた、人種と魔族を牧場に押し込め、自らの食料として管理していた。
だが、それとは裏腹に魔王たる我が輩の心はどんどんと壊れていっていた。
そして致命的な感情が我が輩を支配する。
それは憤怒。
我が輩の怒りは、この退屈な世界に対するものであった。
我が輩はその退屈な世界を壊すために行動を開始した。
配下である眷属達を殺し始めたのだ。
そして、その眷属達の魔臓を喰らう。
さらに自らの眷属達が作りだした牧場を次々と襲い、牧場にいた人種や魔族を喰い漁った。
そして更なる成長を遂げる我が輩。
魔王の花は種をつけた、と同時にその種は地に落ちた。
魔王である我が輩はそれと同時に命を落とした。
吸血鬼の絶対支配者の死亡。
それは未だに残された眷属達に混乱を齎した。
吸血鬼達が支配していた大陸は混乱の坩堝へと落ちていく。
牧場で飼われていた人種と魔族は脱走し野生化した。
そして、それは吸血鬼達も同様だった。
我が輩という存在が居なくなったことにより、その眷属達の能力は酷く減退したのだ。
こうして、文化・文明・知識・技術、あらゆるものを失った彼等は原始時代のような生活を余儀なくされたのだ。
ただ今までと違うのは、人種と魔族の他に吸血鬼という存在が混じったという事実。
それと、この世界の何処かに存在するだろう我が輩から落ちた魔王の種。
何時か人種、魔族、吸血鬼が文化文明を発展させる頃には、また魔王の種を持つ存在が現れる。
これがこの世界のサイクル。
文明をリセットし、一定以上の文明へと育たないようにするためのシステムだ。
何時かまた新たな魔王が誕生するまでこの世界に平和が訪れた。
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