第19話 我が輩服を着る

 二人目の眷属も無事に生み出すことに成功した我が輩は今後のことを相談することにした。

 すると魔法使いの眷属が私に意見を具申してきた。

 曰く、「その美しい玉体を鑑賞できることは喜びではありますが、やはり服は着た方がよろしいかと思います」と。

 なる程、確か人間共は服という者を着る種族であったな。

 我が輩も元とは言え人間だった眷属を抱えることになった以上、多少はその辺りのことにも配慮せねばならないかも知れぬ。

 であるならば、服を手に入れるために良い場所は無いかと魔法使いの眷属に問うてみた。

「でしたら良き服飾店を存じております」

「うむ。だが、人間は金でそういった物を買うのであろう?

 我が輩はその金を持っておらん」

 今まで行商人等を襲っていたので、手に入れようとすれば手に入れることが出来たのかもしれんが、嵩張る故に有用性を見いだせなかったのだ。

「それでしたら盗むというのは如何でしょう?

 主様の隠密性ならば何も問題なく手に入れることが出来るでしょう」

 とは、女戦士の言。

 それもそうか、何も人間共の感覚に合わせる必要も無しか。

 よし、では早速手に入れに行こうか。

「うむ、では早速見繕うとしようではないか」

 女魔法使いが良い場所を知っていると言うことで夜が明ける前にさっさと服を手に入れるとする。

「お主は引き続き狩りに勤しむ様に」

 と、女戦士への指示も忘れずにしておく。

「畏まりました」

「では、行ってくる」


 今我が輩は闇魔法と音魔法を使い、我が輩自身と女魔法使いの隠蔽率を上げつつタックス王国の都市へと再度訪れていた。

「ここか?」

「左様でございます」


 そこはタックス王国の都市の主…詰り王族御用達の服飾店であった。


「ここであれば、主様に相応しいドレスを見つけることが出来るでしょう」

「ドレスとな?」

「はい、主様の美しい玉体を彩るために相応しい物を見繕わせて戴きたいと思っております」

「ふむ、女よ。我が輩は戦闘も熟す身、ドレス等という動き難い格好は好かん。

 冒険者か簡素な服で良いのだ。

 そのような服がある場所へと案内せよ」

 等と一悶着はあった物の服自体は手に入れることが出来た。

 都市で暮らす男共が着る様なズボンルックである。

 腰にある翼に関しては力業で穴を開けたので問題なく動かせる。

 実際、二人の眷属も吸血鬼化に伴う変化の際に腰部から翼が生えたのだが、その時服が破れていたしな。

 それを真似てみたのだ。

「さて、用も済んだことだし一旦戻るとしよう」

 そこはかとなく残念だという雰囲気を漂わせながらも、我が輩の意向に沿った女魔法使いは我が輩の言葉に従い、都市を離れて元居た野盗の塒へと戻っていく。

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