第2話 我が輩は小さな蝙蝠である
スモール・バット
吸血
超音波
飛行
我が輩は蝙蝠である。それも成長した蝙蝠である。
成長若しくは進化と言えるものかも知れないが、どちらにせよ我が輩は痛みと共に成長した。
身体能力がどの程度向上したのかはこれから要検証なのだが、能力に関しては特に変更点は無い様である。
やはりレッサーが取れた程度では、まだまだ矮小な蝙蝠だと言うことなのであろう。
これからも引き続き成長する為に命を戴かなければならないだろう。
と言う訳で、成長したとしてもやることは変わらずネズミを吸血して殺すことである。
さて、ここらで我が輩の日常をもう少し語ろうかと思う。
我が輩が成長する為には他者の命を奪うことが必要である事は知るところであろう。
その中でも現在最も効率が良いのはネズミである。
私のこの小さな体躯で対処可能な生物がネズミが精々で在るからであるからだ。
だが、それだけを殺している訳ではない。
ネズミ以外にも小さな昆虫なども私の捕食対象である。
ネズミに比べれば微々たるものだが、我が輩の中に流れ込んでくる力は存在するのだから、目にしたのならば逃すこと無く(腹が膨れてなければ)お命を頂戴することにしている。
さて、そんな有意義な成長ライフを過ごしている我が輩であるが目下の処困った事態に陥っている。とは言え、そこまでの難題では無いのだが。
私が普段根城にしぶら下がり身体を休めている洞窟に、最近大型(我が輩の身体に比べて)の生物が住み着く様になったのだ。
その生物の数は五匹。
肌の色はくすんだ緑色、黄色い濁った乱杭歯を晒した、蝙蝠である我が輩の美的センスから見ても醜悪な生物であった。
大きさの比率は我が輩を一とした場合一三か一四程の差があるだろうか、兎に角その大きさの差だけ見ても脅威度というものが分るという物であろう。
ただ、安心材料としてはあれら醜悪な五匹の生き物は私がぶら下がっている天井にまでは手が届かない程度の大きさしか無いのだけは幸いであろう。
だからといって完全に安全という訳でも無いとは思われるので、今後は更なる警戒を持って行動しなければならないだろう。
洞窟を出てネズミ等を探す時はなるべく、洞窟の上の方を飛ぶなどの警戒は最低限必要であろう。
そんな余計に神経を使わなければ行けない日々を送る中、私の中に貯まった力があふれそうになっている時にネズミを吸血で殺すと、前回と同様に身体全体を軋ませる痛みが我が輩を襲った。
前回よりも幾分か強いその痛みは、その痛みに比例してかその長さも同様に伸びていた。
我が輩は早くこの痛みが終われと思いながら蹲り痛みをやり過ごしているとやがて痛みは引き成長の終わりを実感したのだった。
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