第47話 サイリ

→●カグヤ{2,3,5,10}

 〇セーラ{2,3,4,5}

 ●サイリ{4,6,7,8,10}

 〇トコヨ{6,7,8}


次はカグヤの番。

カグヤはひたすらに数を減らしたいはず。

だったら出すのは10かな?


「じゃあ、これで」


カグヤは右手でカードを伏せる。

最高の笑顔でわたしに合図を送る。

立てた指は人差し指、中指、薬指、小指。

ということは10か。

これはわたしが取っておきたいカード。


「カグヤってお寿司は何が好きだっけ?」

「エビかいくら」


魚を答えないのね。

まぁ、この会話に意味は無いからなんでも良いけれど。


「わたしの予想は3で」

「わたしは5で」


セーラさんとトコヨさんが予想を発表する。


「では10なのでわたしがもらいます」


わたしは伏せていたカードを表にする。

手札の10と合わせて捨てる。


 ●カグヤ{2,3,5}

→〇セーラ{2,3,4,5}

 ●サイリ{4,6,7,8}

 〇トコヨ{6,7,8}


カードは順調に減っていってる。

チーム合計枚数も7対7で互角の勝負。


「では、わたしはこれでいくわ」


セーラさんはカードを伏せておいた。

セーラさんのカードは2,3,4,5のどれか。

4だったらわたしがもらいたい。

2,3,5だったらカグヤがもらいたい。

だったらわたしは4を宣言すれば良いのかな?

ここでカグヤが当ててくれたらかなり有利なんだけど。


「セーラ。明日は晴れるかな?」

「しばらく雨は降りそうにないわよ」

「台風もこない?」

「予報には出ていないわね」


また天気の話だった。

セーラさんはさっき、天気の話をして1のカードを出していた。

ただもう1のカードは無いから、1ではないことは分かっている。

ただそれよりも気になったのは、手の位置だった。

セーラさんは会話をしながら、いろんなところを触っている。

最初、セーラさんは1を出した。

そのときは髪を触っていた。

次のトコヨさんは10だった。

口に手を当てながら喋っていた。

今は鼻を触っている。

気になるな。


「私は3で」

「わたしは4で」


わたしたちは予想を宣言した。


「これは4だから、サイリちゃんのものね」


トコヨさんは伏せられたカードを表にする。

4のカードをわたしに渡してくれる。

わたしは4のカードを揃えて捨てる。


 ●カグヤ{2,3,5}

 〇セーラ{2,3,5}

→●サイリ{6,7,8}

 〇トコヨ{6,7,8}


これで全員3枚。

枚数は互角。

ただ暗号の解読具合は分からない。

わたしは段々と相手の暗号の予測が付いてきたけれど。

相手はわたしたちの暗号をどれだけ解読出来ているか分からない。

戦況がつかみにくいから、暗中模索なゲームだ。


「行きます」


さて、わたしの番。

選択肢は6,7,8の3種類。

どれを出しても同じではある。

トコヨさんには取られたくない。

ただ、自分からできることは特にない。

わたしは6のカードを伏せて出す。

出したのは右手。

その後、わたしは可愛い顔で親指を立てて見せる。

カグヤに送るグッドラック。


「サイリ、昨日の晩御飯は?」

「肉じゃがよ。お姉ちゃんが帰ってこなかったせいで一人で二人前を食べたわ」

「……そんなに食べると太るわよ」

「たまには運動しないとね。カグヤも一緒に走る?」

「嫌よ」


断られた。

暗号のためのフェイクの会話なのに、こんなに中身のある会話をする必要はない。

しかし無駄にたくさん食べて太るのは嫌だな。

何か運動しないと。


「わたしの予想は7で」

「あっ、わたしも7だったんだけど、……こういうときって変更していいの?」


トコヨさんが皆に確認を求める。

トコヨさんとわたしにとっては、今日聞いたばかりばっかりのゲームだから、細かいルールを把握しきれていないことが多い。

カグヤとセーラさんは何度かやりとりして相談していたみたいだから、ルールはしっかり把握しているのだろう。

頼もしい。


「変更ありよ。仲間内だと相談できることにしているわ。その方が暗号バトルらしいもの」

「OK。それじゃあ、わたしは8で」


トコヨさんは8を選んだ。

わたしは胸を撫でおろした。

ここで正解されたら、かなり形勢が悪くなる。


「では、6なので私がもらいます」


そう言って、カグヤは伏せていたカードを表にする。

6のカードはカグヤが手札に加える。


 ●カグヤ{2,3,5,6}

 〇セーラ{2,3,5}

 ●サイリ{7,8}

→〇トコヨ{6,7,8}


こうなるとこちらが有利。

これはチャンスだ。

もしトコヨさんが7,8を出して、それをわたしが当てたとする。

すると手札が1枚になって、次わたしの番が来たらあがり。

ここで当てることは勝ちに直結する。


「じゃあ、行くわね」


トコヨさんがカードを伏せて出す。


「トコヨ、明日の予定は?」

「なんもないわよ?」

「撮影あるわよ!」

「あれ? そうだっけ?」


本気で言っているのか冗談で言っているのか分からない会話だった。

でもわたしが気になっているのは手の動き。

トコヨさんはずっと目を擦りながら喋っていた。

『RSA』の今までの対応をまとめると。

髪→1

鼻→4

口→10

これに今回は目。

顔のパーツと数を対応させているのかも。

同じ数が出ていれば予想は出来たけど、6,7,8はまだ出ていない。

でも目は顔のパーツでも上の方だ。

髪が1で口が10なら、上の方にある目は数が小さいものを対応させるだろう。


「わたしは7で」

「私は6で」


お互いに数を宣言した。

セーラさんは溜息をついた。


「これは厳しいわね。わたしも6よ」


そう言ってセイラさんはカードを表にした。

カードは8だった。


「よし」

「えっ!」


トコヨさんは気合の言葉を入れた。

セーラさんは驚いていた。


「暗号が読まれてそうだったから、偽の暗号をセーラに送っといたわ」

「そういうときは合図しなさいよ!」

「この一回は怪しい動きをしたくなかったのよ」


わたしが暗号を解読しかかっていることを、予感していたの?

それでいて仲間にも伝えずに嘘の暗号を送ったの?

超能力のような感だった。


→●カグヤ{2,3,5,6}

 〇セーラ{2,3,5}

 ●サイリ{7,8}

 〇トコヨ{6,7,8}

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