第46話 カグヤ
作戦タイムが終了した。
実戦が始まる。
「よし、それじゃあ始めるね」
セーラさんがゲームスタートの合図をする。
私達4人は円になって着席した。
私の向かいにはサイリ。
右手側にセーラさん。
左手側にトウコさん。
カードが配られる。
チーム『賢者の贈り物』は黒。
チーム『RSA』は赤。
それぞれ手札を確認する。
→●カグヤ{1,2,3,4,5}
〇セーラ{1,2,3,4,5}
●サイリ{6,7,8,9,10}
〇トコヨ{6,7,8,9,10}
話し合いで一番手は私になった。
瞬きをしながらカードを確認する。
「じゃあ、これで」
私は左手で4のカードを場に伏せて出す。
そしてサイリに合図を出した。
とびっきりの笑顔で3本の指を出す。
人差し指、中指、薬指。
サイリには伝わっているはず。
薬指が上がっているから4が答え。
「じゃあ、わたしたちから予想を発表するわね。わたしの予想は3で」
「わたしは2で」
セーラさんの予想は3。
トコヨさんの予想は2。
「サイリは?」
わたしが訊く。
「4で」
ちゃんと伝わっていた。
「はい」
私は伏せていたカードを表にする。
黒の4。
正解したサイリが自分の手札に加える。
「よし!」
サイリは正解して安心したようだった。
●カグヤ{1,2,3,5}
→〇セーラ{1,2,3,4,5}
●サイリ{4,6,7,8,9,10}
〇トコヨ{6,7,8,9,10}
次はセーラさんの番。
「行くわね」
セーラさんがカードを伏せて置く。
私はセーラさんの挙動に注目した。
声か手か顔か。
どこかにサインがあるはず。
事前の打ち合わせで、相手チームに分からないような伝え方は禁止ということにしている。
あくまで暗号を解読するバトルなので、見えないところであれこれするのはなしにしようということになった。
例えばスマホでこっそり連絡をするのは禁止。
相手に傍受されているけれど、中身は解読されにくいようなゲームになっている。
「ん~」
トコヨさんはセーラさんの顔をじっと見ている。
「今日ね、良い天気だったじゃない? もう9月なのにまだまだ暑さが引かないよね」
「今日は最高気温が35度だったからましなほうかな」
セーラさんは唐突に喋り出した。
トコヨさんと普通の会話をしている。
暗号だろうか。
今の台詞のどこかにカードの数が隠されているかもしれない。
「さぁさぁ。お二人の予想は?」
セーラさんは私とサイリに催促する。
この時点で予想するのは難しい。
セーラさんはいっぱいしゃべったし、どこがキーワードになっているかは分からない。
天気の話がキーワードか、9月がキーワードか。
あと気になったことといえば、右手で髪を触ったことくらいか。
「私は1で」
「わたしは2で」
私とサイリでばらけた。
私もサイリも何の手掛かりもないから適当だ。
当たっていればラッキーな話。
「ふむ。わたしは1だったんだけど」
トコヨさんはそう言って、伏せられたカードをオープンした。
赤の1。
トコヨさんは、わたしにカードをくれた。
「付いてましたね」
適当に言っても確率5分の1で当たる。
お互い解読できなくても、ゲームが進むことはある。
そういう運要素も少しある。
しかし、終盤は相手の暗号をきっちり解読していきたい。
●カグヤ{2,3,5}
〇セーラ{2,3,4,5}
→●サイリ{4,6,7,8,9,10}
〇トコヨ{6,7,8,9,10}
枚数で言えば私がリード。
でもまだまだ序盤。
有利かどうかは判断付かない。
「行きます」
サイリが宣言した。
右手でカードを場に伏せる。
そしてそのあと、私に指を見せる。
立っているのは人差し指と薬指。
4 or 9の合図。
伏せたのが右手だったから9の方。
「良い感じね」
「そうね。昨日はさくらんぼのジュースを飲んできたし」
サイリはとびっきりの笑顔を向けた。
私とサイリは適当な会話をする。
本命の暗号は指だけど、ダミーとして会話を混ぜておく。
「わたしの予想は2で」
「わたしは9で」
セーラさんとトコヨさんが予想を発表する。
「私は9なので、これはトコヨさんのものです」
私は伏せられたカードを表にした。
9のカード。
トコヨさんは自分の9のカードを手札から捨てた。
「わーい、当たった」
トコヨさんは棒読みで喜んだ。
実際トコヨさんは不利な状況だから、そんなに楽観していられるわけではない。
●カグヤ{2,3,5}
〇セーラ{2,3,4,5}
●サイリ{4,6,7,8,10}
→〇トコヨ{6,7,8,10}
「ほら、トコヨの番よ」
セーラさんが催促する。
「はい。これでいくわ。そろそろ眠くなってきたし」
「まだお昼の2時なんだけど」
「昼寝するにはちょうど良いじゃない」
トコヨさんは口に手を当てながら喋っていた。
少々長めの会話が続く。
これだとどこに重要な要素があるか絞り込めない。
そしてここからは私のプレイングも難しい。
私は残り枚数が3枚。
サイリは残り5枚。
私の方が少ないから、私はあがりを目指したい。
だから私はこのカードの数を当てたくない。
しかしトコヨさんの手札は{6,7,8,10}の4種類。
ルール上、この4種類のどれかを宣言しないといけない。
そうなると適当でも4分の1で当たってしまう。
「私は10で」
「わたしは7で」
私達は予想を宣言した。
セーラさんは微笑んでいた。
「じゃあ、これは10だからカグヤちゃんのところだね」
伏せられたカードは10。
私は当ててしまった。
サイリが当てるのが一番美味しかったのだけれど。
そう簡単にはいかないみたいだ。
→●カグヤ{2,3,5,10}
〇セーラ{2,3,4,5}
●サイリ{4,6,7,8,10}
〇トコヨ{6,7,8}
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