第36話 カグヤ
事前の作戦会議で、私が暗号解読する順番はサイリ→トコヨさん→セーラさんと決めていた。
サイリの暗号はささっと解読できたのでトコヨさんの暗号にとりかかる。
トコヨさんの暗号
『暗号文:えひなうふなのききぺちへじぷてねそ
解読文:ねなすでほわめそぞのちへろててまべ → おせちをねかぞくでかこむとしのせに 』
ぱっと見で何か気付くことがあるわけではない。
でも解読前も解読後も17文字。
これならシーザーかビジュネルか。
前回、セーラさんがいろは順に1文字ずらすシーザー暗号を使っていたから、それだと思って考えてみるか。
いろは順で何文字ずれているか。
いろはにほ へとちりぬ
るをわかよ たれそつね
ならむうの おくやまけ
ふこえてあ さきゆめみ
しひもせす ん
これでを見ながら。
ねなすでほ わめそぞのちへ ろててまべ
6 23 9 …
おせちをね かぞくでかこむ としのせに
「違うな」
濁音の処理ができなくなってしまった。
これではないな。
じゃあわたしたちと同じ濁音を処理したいろは順だったら?
「まさかね?」
同じ換字表にたどり着くとは思えないけれど、一応やってみる。
いろはばぱ にほぼぽへ
べぺとどち ぢりぬるを
わかがよた だれそぞつ
づねならむ うのおくぐ
やまけげふ ぶぷこごえ
てであさざ きぎゆめみ
しじひびぴ もせぜすず
ん
私達が使った換字表をもとにずれている文字数を数える。
ねなすでほ わめそぞのちへ ろててまべ
6 34 17 39 25 1 41 11 23 25 33 25 11 10 57 25 62
おせちをね かぞくでかこむ としのせに
この数で暗号文をずらしてみる。
えひなうふ なのききぺちへ じぷてねそ
6 34 17 39 25 1 41 11 23 25 33 25 11 10 57 25 62
きだえばず らほせぼのこけ ろぎのぎる
うん。
これも違う。
流石に違うよね。
同じだったらびっくりだ。
私達と同じ換字表のはずがない。
同じだったら、カンニングを疑う。
「さて」
ありえそうな平仮名の並びを考えていこう。
じゃあ、まずは普通の五十音順でやってみるか。
私達が一回戦目で使った五十音表。
あいうえお かきくけこ
がぎぐげご さしすせそ
ざじずぜぞ たちつてと
だぢづでど なにぬねの
はひふへほ ばびぶべぼ
ぱぴぽぺぽ まみむめも
やゆよらり るれろわを
ん
これでやってみる。
ねなすでほ わめそぞのちへ ろててまべ
37 44 9 36 65 8 37 59 9 37 54 14 33 59 11 35 57
おせちをね かぞくでかこむ としのせに
これも規則はないか。
だめっぽいけど、一応この数で暗号文をずらしてみる。
えひなうふ なのききぺちへ じぷてねそ
37 44 9 36 65 8 37 59 9 37 54 14 33 59 11 35 57
はごほてに へかるさそきむ ぽはのうか
うん。
だめだね。
「困ったな」
これがありえそうではあったけれど。
流石に違ったか。
セーラさんもトコヨさんも前回の動画は確認したはず。
そこで私達が使った換字表を使うとは思えない。
あとは、何ができる?
どんな換字表がある?
これとか?
あいうえお かがきぎく
ぐけげこご さざしじす
ずせぜそぞ ただちぢつ
づてでとど なにぬねの
はばぱひび ぴふぶぷへ
べぺほぼぽ まみむめも
やゆよらり るれろわを
ん
濁音を清音のすぐ後に付けたパターン。
これで解読してみるか。
ねなすでほ わめそぞのちへ ろててまべ
37 57 8 37 57 8 37 57 8 37 57 8 37 57 8 37 57
おせちをね かぞくでかこむ としのせに
「おっ?」
きれいに3連続の数が並ぶ。
これはもしや。
当たりっぽい。
早速、暗号文を解読する。
えひなうふ なのききぺちへ じぷてねそ
37 57 8 37 57 8 37 57 8 37 57 8 37 57 8 37 57
はつひので ひかりさしこむ まどのおく
初日の出 光差し込む 窓の奥
「やった!」
正解だ。
なんとか解読できた。
残り時間はあと5分。
間に合った。
これを完全解答できたのは大きい。
トコヨさんの暗号
『暗号文:えひなうふなのききぺちへじぷてねそ →はつひのでひかりさしこむまどのおく』
「よく解読できたわね」
自分で自分を褒めてあげる。
この五十音表は、パスワード17の考察段階で作成していたものだ。
サイリにシーザー暗号を説明するときに使ったもの。
私が考えたものではあるけれど、トコヨさんも同じ発想だったんだ。
「ああ、疲れた……」
正直、解読できたのは運による所が大きい。
私の発想ではこれ以上、平仮名の並べ方のパターンはない。
これ以外のパターンで換字表を作っていたら負けていた。
私とトコヨさんと思考が似ていたのだろう。
解読できて良かった。
「もう、時間がないか」
時計を確認する。
予定ではセーラさんの暗号を解読することになっている。
しかし、そんな時間はない。
セーラさんの暗号はサイリが解読してくれていることを祈ろう。
「う~ん、頑張った!」
私は椅子に体重を預けて大きく伸びをした。
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