第24話 カグヤ
「チーム『賢者の贈り物』102点! チーム『ステガノ』84点! よってチーム『賢者の贈り物』の勝利です!」
動画内で私達の勝利が宣言される。
抱き合っている私達の姿が映る。
「ここカットして欲しかったわ」
恥ずかしい。
「いいじゃない。楽しそうで」
サイリは気にしていないようだ。
少しは気にしてほしい。
そして勝者インタビューが流れる。
「…………次があるかどうかは分からないけれど、次やるとしたらもっと良い暗号が作れると思います」
私のコメントが字幕付きで映る。
今は本当に次がやりたい気持ちでいっぱいだ。
「それでは、また~」
画面外の視聴者に向けてセーラさんが手を振る。
そんな感じで動画が終わった。
「あんまり悪目立ちしていなくて良かった」
私は胸を撫でおろしていた。
動画内で私の暗号もセーラさんが客観的に解説してくれていた。
これなら私が一人で落ち込んでいた様子も、視聴者には伝わっていない。
自然に自然にパスワード17に参加しただけだ。
「カグヤはしっかり可愛く映っていたじゃない」
「まぁ、サイリよりはカメラ映えしたかもね」
「やっぱりカグヤは澄ました顔でじっと考えごとをしている表情が良いわよね」
それは初めて聞いた評価だ。
今度から意識してしまうじゃないか。
サイリの前でうかつに考えごとが出来なくなってしまう。
自分の表情が気になって仕方がない。
「それは置いといて、動画としても普通に面白かったわ」
あんまりこういう番組は見ない。
というか私はテレビや動画自体あまり見ない。
けどこういうバラエティも面白いと感じた。
セーラさんの動画や他の動画も見てみようかな。
「始まる前まで見たくないって言っていたのに元気になったわね」
「ええ。これなら良かったわ。早く次がやりたいわ」
「次があると良いわね」
そんな話をしながら、私はPCを操作する。
セーラさんの他の企画を探してみる。
『激ムズ! しりとり謎解き!!』
『史上最難関の謎解きに挑戦!?』
『これが日本最高峰の謎解きバトル!?』
『嘘を嘘と見抜ける人になろう!』
『超難関お手製リアル脱出ゲーム!!』
『知っていそうでしらないことクイズ!』
なかなか興味を惹かれるタイトルとサムネイルである。
「一緒に見る?」
「そうね。あれ? でもサイリはもう見たんじゃない?」
セーラさんと会ったときに動画は全部見たと言っていた。
イズミさんとヒヨリさんも動画でよく見たから、実際に会う前から顔を知っていた。
それだけしっかり見たらしい。
「もう一回見ても楽しいわよ。カグヤと一緒だしね」
というわけで、サイリと一緒にセーラさんの動画を見ることにした。
肩を並べてPCの動画を見る。
隣のサイリと一緒に謎解きやクイズをする。
問題が表示されて、私が一瞬で解くとサイリが「すごいね」って言ってくれる。
そういえば以前、サイリと同居したいみたいな話をしたな。
一緒に住んだら毎日こんな感じで生活するのか。
それはとっても良いな。
なんてこともちらっと考えつつ。
「あっ、これ良さそう」
私は良い感じの動画タイトルを見つける。
『最難関に挑め! ロジカルクイズ!』
私は早速動画を開く。
セーラさんがいろいろな問題に挑む形式だった。
「確かにカグヤが好きそうね」
動画に問題が表示される。
そこで私は動画を一時停止する。
動画に答えが表示される前に自力で解きたい。
『問題:3人の村人がいます。1人は天使、1人は悪魔、1人は人間です。
天使は真実を言い、悪魔は嘘しか言わず、人間はどちらを言うか分かりません。
3人の村人は言いました。
A「私な天使ではない」
B「私は悪魔ではない」
C「私は人間ではない」
この中で、人間は誰でしょう? 』
答えが表示される前に自力で解きたい、と思った。
ただ見た瞬間に答えは分かってしまった。
分かったというか知っているというか。
「定番問題だったわ」
有名かつシンプルな問題。
ロジカルクイズの基礎中の基礎。
「知っているんだ?」
「ええ。答えはAが人間ね」
「早い!」
この問題はまず悪魔が誰かから考える。
悪魔がA→真実を言っているから×
悪魔がC→真実を言っているから×
よって悪魔はB確定。
次に天使を考える。
天使がA→嘘を言っているから×
よって天使はC確定。
これにより人間はAになる。
「まぁ、よく見る問題ね」
「カグヤはよく勉強しているね」
「こういうのが好きだからね」
一時停止していた動画を再生する。
想定通りの解説が流れる。
「あっ、これは難しそうじゃない?」
サイリが動画を一時停止する。
『問題:Aさんは箱の中に宝石を入れ、遠く離れたBさんに郵送で宝石を渡したい。
しかしこの国は治安が悪く、南京錠をかけた箱でないと途中で中身が盗まれてしまう。
南京錠をかければ箱ごと盗まれることはなく安全に郵送することができる。
しかし南京錠をかけたままだと鍵のないBさんは開けられない。
だが、南京錠・鍵・宝石はそのまま郵送しようとするとそれごと盗まれる。
どうすれば安全に宝石を郵送できるだろうか? 』
暗号通信にも通じるところがある問題だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます