第49話 サイリ

→●カグヤ{2,3,5,6}

 〇セーラ{3,5,6,8}

 ●サイリ{2,7}

 〇トコヨ{7,8}


さて。

カグヤの番。

カグヤがここで2を出して、わたしが2をもらうことが出来ればほぼ勝ち。

だけどそれは相手も分かっているだろうから、2は絶対に妨害してくる。

だからカグヤとしては、何を出しても良い。

結果はそんなに変わらない。


「はい。これで」


カグヤは最高の笑顔を見せた。

そして左手でカードを伏せる。


「カグヤ、二学期始まったけど学校はどう?」

「どうってこともないわよ。いつも通り、ちっちゃい差異もないわ」


ちっちゃいってキーワードが出てきた。

ということは5だね。


「わたしの予想は2で」

「わたしは6で」


そうだよね。

セーラさんとしては、わたしに2を取られるわけにはいかない。

2を宣言するしかない。

トコヨさんは逆にカードを取りたくないから、大きい数の6を宣言したのだろう。


「これは、3です」


わたしはわざと違う数を宣言する。

そして伏せられたカードを表にする。

カードは5。

全員外したので、カードはカグヤのもとに戻る。

プレイングはこれで大丈夫。

カグヤは確認するように大きく頷いた。


 ●カグヤ{2,3,5,6}

→〇セーラ{3,5,6,8}

 ●サイリ{2,7}

 〇トコヨ{7,8}


セーラさんとしては、ここで8をトコヨさんに送ったら、勝ちみたいなもの。

カグヤとしてはそれは分かっているから、カグヤは必ず8を宣言する。

わたしとしては、セーラさんの出すカードを外したい。

今、手札を増やすわけにはいかないから3,5,6のどれかを予想して、わざと外すようにする。


「はい、じゃあ、わたしはこれで」


セーラさんはカードを伏せておく。

暗号は何だろうな?

手や顔に特徴的な動きはない。

やっぱり言葉の中に何かあるのかな?


「セーラはこの収録の後、何かあるの?」

「ん~、ん、ん。動画編集とか、メールチェックとかいっぱいあるけど?」

「大変だね」

「トコヨにもやってもらう仕事はいっぱいあるから」

「え!?」


やっぱり相槌の打ち方が気になるな。

さっきまでよりどこか不自然な気がする。

あれが暗号かな?


「私は8で」

「わたしは6で」


わたしたちは予想を宣言した。


「これは8だね。カグヤちゃん正解」


トコヨさんはそう言って、カードを表にした。

表になったのは8。

カグヤはカードを受け取った。


 ●カグヤ{2,3,5,6,8}

 〇セーラ{3,5,6}

→●サイリ{2,7}

 〇トコヨ{7,8}


わたしの番。

考えることはあまりない。

わたしの手札は2枚。

2と7。

ここでトコヨさんに7を渡すわけにはいかない。

よってわたしは2を出すしかない。

わたしはいい感じの笑顔を作る。


「はい」


左手で2のカードを伏せた。

もう、おそらく皆分かっている。

ゴールまでの道は近い。


「ここまでくると暗号も必要ないわね」

「そうね。配信を見ている人々もどうなっているか分かるでしょ?」


言っていて思ったけど、『人々』って単語を自然に会話にいれるのは難しい。


「わたしの予想は2で」

「わたしは7で」


セーラさんは2で、トコヨさんが7。

まぁ、そうだよね。


「はい。これは2なので、セーラさんのものです」


カグヤが伏せられたカードを表にする。

2のカードをセーラさんに渡す。


 ●カグヤ{2,3,5,6,8}

 〇セーラ{2,3,5,6}

 ●サイリ{7}

→〇トコヨ{7,8}


これでわたしは残り1枚。

勝ちは目前だ。

現在トコヨさんの番。

トコヨさんの出すカードは7,8の2種類。

でも7を出してしまうと、わたしが当てて即ゲームセットになる。

それは避けたいから心理的には8を出したいはず。


「じゃあ、こっちで」


トコヨさんはカードを伏せた。


「トコヨって大学の課題はちゃんとやっているの?」

「ん~、ん、ん。分かんない」

「分かんないの?」

「帰ったら確認しておく」


トコヨさんは相変わらずマイペースだった。

でも、やっぱり。

咳払いというか唸り声になにかありそうだ。

すっごく特徴的だもの。


「私は8で」

「わたしは7で」


わたしたちは予想を宣言した。

カードが2種類しかないから、どちらかは当たっている。


「これは8だからカグヤちゃんが当たりね」


セーラさんがカードを表にする。

8のカードをカグヤに渡す。

カグヤは8のカードを2枚合わせて捨てた。


→●カグヤ{2,3,5,6}

 〇セーラ{2,3,5,6}

 ●サイリ{7}

 〇トコヨ{7}


「それじゃあ、最後の暗号ね」


ゲームは大詰め。

わたしとカグヤは暗号を3つ用意した。

1つ目は指。

2つ目は言葉。

そして今から最後の暗号。

カグヤは最高の笑顔でカードを伏せた。

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