第34話 カグヤ
パスワード17決勝戦。
後半。
暗号作成の時間が終わった。
ここからは解読の時間。
まずはサイリの暗号から解読しよう。
サイリの暗号
『暗号文:のうくてまばくけぬわぬうぐいとぱろ
解読文:そめさほをよげよめぼだきやみさぢが →ふゆのよるほしがまたたくゆめのなか』
うん。
サイリは予定通りちゃんと暗号を作れているみたいだ。
ヴィジュネル暗号を作るときに考えることは大きく分けて二つ。
一つは換字表をどうするか。
もう一つは何文字ずらすか。
まずは換字表について。
サイリと相談して、いろは順で名前の数だけずらすことにした。
いろは順。
いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ
つねならむ うゐのおくやまけふこえて
あさきゆめみしゑひもせす ん
現代では使われていない『ゐ』『ゑ』が含まれるけれど、それは無視して飛ばせばよい。
つまりこうなる。
いろはにほ へとちりぬ
るをわかよ たれそつね
ならむうの おくやまけ
ふこえてあ さきゆめみ
しひもせす ん
これはこれで良い。
ただ旧字体があることよりも致命的な弱点がある。
そう。
濁点と半濁点が弱点だ。
セーラさんが使った暗号はこう。
『暗号文:めおや”そまちぬおきてい”をさゆこよひ → ゆうぐれやとりのさえずるあきふかし
解読文:さゆも”たぬきうぺいをもちしらてよ”く → あきびよりさんぽするひとみなえがお』
いろは順に文字を1文字ずらしている。
この暗号には不自然な部分がある。
『や”』『い”』の部分だ。
本来濁点が付かない文字にも濁点を付けないといけなくなっている。
いろは順に文字をずらすとこういうことが発生してしまう。
これでは文字をずらしていることがすぐにばれてしまう。
その問題を解決するために、私は新たないろは順を作った。
いろは歌に濁音と半濁音を無理矢理つけたものだ。
いろはばぱ にほぼぽへ
べぺとどち ぢりぬるを
わかがよた だれそぞつ
づねならむ うのおくぐ
やまけげふ ぶぷこごえ
てであさざ きぎゆめみ
しじひびぴ もせぜすず
ん
これなら濁音と半濁音を全てカバーできている。
この変則いろは歌を使うことにした。
この時点でかなりオリジナリティが高い。
これを見破られることはまずない。
次にずらす文字数。
前回は私もサイリも円周率だけずらした。
3 1 4 1 5 9 2 6 5 3 5 8 9 7 9 3 2
ただこれだと一人が解読された時に、もう一人もすぐに解読されてしまう。
よって二人は違うずらし方が良いという話になった。
ただ、17桁の数字を覚えるのは大変なので。
覚えやすいように二人の名前の数だけずらすことにした。
さっきの表で(サイリ)は(54,1,17)番目の数。
これを繰り返す。
サイリの暗号は
ふゆのよる ほしがまたたく ゆめのなか
54 1 17 54 1 17 54 1 17 54 1 17 54 1 17 54 1
そめさほを よげよめぼだき やみさぢが
というふうにずらしてある。
よって、暗号文をこの数だけずらして行けばよい。
本当は、この後並べ替えもしようかと思っていた。
ただ練習したところ、この文字をずらしていく作業だけで相当時間がかかる。
17文字をずらす作業で5分。
だからこれで暗号の完成とした。
まぁ、ここまでの完成度でも相手チームに解読できるような暗号でない。
ヴィジュネル暗号は歴史的にも超強力な暗号なのだから。
これをもとにサイリの暗号を解読する。
のうくてま ばくけぬわぬう ぐいとぱろ
54 1 17 54 1 17 54 1 17 54 1 17 54 1 17 54 1
さむかぜや ゆきまいおりる ぎんせかい
ということでサイリの暗号は
『暗号文:のうくてまばくけぬわぬうぐいとぱろ →さむかぜやゆきまいおりるぎんせかい』
今回は冬の俳句。
夏の暑い時期に冬の俳句を見ても、しっくりこない。
それはともかく。
ちなみに私の暗号は(カグヤ)で(22,40,41)だけずらす。
これでできた暗号はこれ。
『暗号文:ぽたびびぱはしだやせじまえはづわじ → ゆきがまうはくぎんせかいそらしずか
解読文:ひいぷでばんへびまぽたさどになげぎ → やねにつむつめたいゆきとひのひかり』
これはサイリもきちんと解読できていることだろう。
ここまでは予定調和。
二人で味方の暗号を完全解答して17+17=34点。
勝負はここからだ。
私がサイリの暗号を解くのに5分。
残り時間で相手チーム『RSA』の暗号の解読だ。
セーラさんの暗号
『暗号文:きりまえちけるしむさぬよのげあびそ
解読文:すますなみのくむろにおらくるしむさ → さむさにもぬくもりのあるくりすます』
これは、どうなんだろう?
セーラさんは前回、シーザー暗号を使っていた。
いろは順に1文字だけずらしていた。
今回にそれも近いものだろうか?
サイリは解読できるかな?
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