落とし穴
あまりのことでうまく反応できずに今、自分が落ちてくると気づくまでラグがあった。とりあえず、地面に捕食君を投げて、落ちた衝撃を吸収させた後、俺の魔力を溜めた攻撃で捕食君を殺した。
「暗いな、どこだここ?」
全体は光苔で覆われているから、基本谷はある程度の明るさがある。
しかし、その光苔がない。と言ううことは
「暗層か。」
谷にはある程度の深さから、光苔がないことから暗層と呼ばれている。
ここら辺の魔物は基本、目が退化している代わりに魔力による感知が発達している。魔力が感知できると言うことは魔力が発達しやすいと言うこと。
そして、魔物は基本強くなればなるほど魔力が強い傾向にある。
つまり、暗層の魔物は強いのだ。しかも、視覚に情報の大部分を占めている人間には戦いにくい環境。
「早く帰らないと。俺が落ちてきた穴はどこだ?」
俺は暗闇になれてきた目を使って、魔力感知を尖らせて俺が落ちてきた穴を探すが、見当たらない。
もしかしたら、穴自体が今の俺から見て高い天井にあるのかもしれない。
「遭難した時は、焦ってはダメだ。焦って!!」
自分を落ち着かせようとした時、周囲全方向から、強い魔力反応を感じる。
俺は全方向に黒いナイフを伸ばして、重く、固くさせ。全方位防御フォームにする。
ガキン!!ガキン!!
硬いものと硬いものがぶつかった鈍い音だ。
俺は周りが暗闇で見えない以上、闇雲に音のなる方へ防御フォームのまま黒いナイフを棘として伸ばして攻撃する。
ガン!!ガン!
全方向から同じ音がした。攻撃の弾かれた音だ。
俺は記憶の奥底から、谷の魔物で硬く、群れで行動する魔物を思い出す。
「アイアンランナーか。」
全身を金属に覆われたでかいダンゴムシみたいな奴らで、集団で行動する。
こいつらに物理攻撃は効きづらいので基本魔法で攻撃する。
「でも、魔法はないし、魔剣もないし。どうするか。」
アンアンランナーはその名の通り、転がって素早く移動、攻撃してくる奴らなのだ。
相手は俺のことを認識しているが、俺はあいつらの場所を認識できていない。
完全に分が悪い。どうするか。
ガキン!ガキ!!ギャン!!
俺はとりあえず、打開策を出すために防御に専念することにした。
一応、天井に黒いナイフを最大まで伸ばしたが、何かに刺さる感覚はなかった。
思ったより、天井が高い。
「どこかに上につながる階段ないし、崖があるはずなんだがその場所もわからんしな。」
(とりあえず、自分の最高打点を試してみることにした。)
防御フォームの解除と同時に足元の黒いナイフの鎧を縦に伸ばす。
この高さならアイアンランナーは届かないだろ。
もう一度全力で、上に棘を全力で伸ばした。
グチャ!!
天井で何かが刺さった音。おそらく何かの生物だ。
膨大な数の魔力反応。
「赤蜘蛛か。」
谷の中で天井に生息でき、集団で群れるのは赤蜘蛛だけだ。
無茶苦茶魔物多いな。
俺は、棘で天井を荒らしまくり、赤蜘蛛達は地面に落としてから、
足元の伸ばした黒いナイフを解除して、地面に戻り、防御フォームを整える。
「とりあえず、アイアンランナーと赤蜘蛛を戦わせるか。」
どちらも大群なので、長い戦いになった。
防御フォームを解除して、なんとなくの魔力反応を頼りに生き残ったアイアンランナーを攻撃して殺した。(と思う。)
「早く帰るか。」
谷から1秒でも早く出ていきたかったので、先ほどと同じように天井に棘を刺して、棘の感覚で俺が落ちてきた穴を探す。
「やっと見つけた。」
俺が落ちてきたと思われる穴をおそらくは2時間かけて、見つけて穴をよじのぼって、谷の浅いところに戻ってから、街に帰った。
「明日から、ちゃんと修行しないと。」
身近に死が潜んでいることを感じた一日だった。
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