盗賊を

「なあ、妖精を使って、中を見てきてくれ。」


約束の場所は洞穴だった。盗賊の定番だな。


「無理よ。精霊は気まぐれだもの。盗賊如きじゃ動いてくれないわ。」


「じゃあ、なんで俺には付いてくるんだ。」


「あなたが精霊に好かれてるからよ。特別な魔法とか、スキルとは持ってるんじゃないの?」


「さあな?」


「あなたの人を串刺す能力が怪しいわ。」


「そんなことより、どうするんだ?俺が前衛でダリアが後衛でいいのか?」


「私が前衛よ。私達の一族は、身体能力の精霊魔法が使えるしね。」


「じゃあ、俺は援護するよ。このまま突っ込めばいいのか?」


「それでいいわ。ちゃんと援護してよね。」


「任せろ。」


(早く終わらせて、寝たい。)


ダリアは身体強化の精霊魔法を使って、盗賊相手に無双を繰り返す。

すごい、強化率だ。レベル1のダリアとレベル2の俺の身体能力が同じになるくらいの強化率だ。


「ダリア、気をつけろよ。ここから先は雑魚じゃないぞ。」


「大丈夫よ。」


ダリアは俺の忠告を無視して、扉を蹴破り、奥の部屋に侵入する。

瞬間、ダリアの四方八方からナイフが飛んでくる。

俺は、それを黒いナイフでダリアを囲み援護する。


「だから、言っただろう。気をつけろって。」


「私は吸血鬼の血を引いてるからあの程度は大丈夫なの!!」


「ナイフに毒が塗ってあったらどうするんた?」


「それは、、、そうだけど。」


「話してるところに失礼するが、お前らは誰だ?」


こいつが盗賊のボスかな。筋肉すごいし。


「あんたがボスか?」


「いや、用心棒だ。」


「盗賊のボスは?」


「ここにはいねえよ。というかこの辺りにはいない。」


「もう逃げたのか。」


「そうだな。ずる賢いやつだったしな。それで、戦うのか?」


「出来れば、戦いたくない。あんたも乗り気じゃないんだろ。」


(下っ端の盗賊をボコっている時に出てこなかったしな。)


「まあな。お嬢ちゃんだけならともかく、お前の能力が分からねえ。」


「そうか。じゃあ俺達は帰る。」


「えっ!?」


ダリアが俺の提案に驚く。


「十分暴れられただろう。ここにはお宝もないみたいだし、帰るぞ。」


「なんで?レックスと私が戦ったら勝てるでしょ?」


「俺は生きて帰れるが、お前が危うい。お前の戦い方は格下へ強いが、格上には弱いからな。」


「よく分かってるじゃねえか。そこの黒いの言う通りだ。引いた方がいいぜお嬢ちゃん。」


「う〜〜〜!!」


「拗ねるな。ほら行くぞ。」


俺はダリアの手を引っ張り、強引に洞穴から脱出した。


「それじゃあな。」


街にたどり着き、ダリアと別れる。


「明日も遊ぼう!!」


「嫌だ。お前は狙われてるんだから大人しくしてろ。」


「じゃあね!!」


ダリアはまた、蝙蝠に囲まれて消えていった。

どういう能力なんだそれ。


「明日も、俺の睡眠時間が奪われるのか。」


この日から、毎晩ダリアが俺の家に無断侵入してきては、遊ぼうとねだってきた。

事あるごとに血を吸おうとしてくるし。

俺は、睡眠時間を補うために昼寝を3時間もする羽目になった。


「他に友達はいないのか?」


「いるけど、みんな遠くにいるし。夜は寝てるし。」


「俺だって夜は寝る。」


「レックスは昼寝してるからいいでしょ。」


「お前はいつねてるんだ?」


「普通に朝から寝てるよ。」


「完全に昼夜逆転してるのか。」


「そうだね。吸血鬼の体質かな。」


「ダリアって貴族なんだろ。しかも12歳許嫁とかいるだろ。」


「いるけど、色付きの貴族は基本立場が上だから、特にしがらみとかはないよ。」


「それでも、夜中に男に会いにくるのは良くないだろ。」


「レックスは子供だから大丈夫。」


「子供の睡眠時間を奪うな。」


「それより、レックスの友達のミランダちゃんに会いたいな。」


「あいつは人見知りだからな。長年引きこもってる弊害だ。」


「私より一歳年下なのに、おっぱい大きいよね。」


「母親からの遺伝だよ。」


「レックスは大きい方と小さい方どっちが好き?」


「特にこだわりはない。そんな歳でもないしな。」


「そうだった。レックスはまだ、子供だった。」


「そうだな。だから、眠くなってきた。寝ていいか?」


「添い寝していいならいいよ。」


「血を吸うなよ。後、朝になるまでには帰っとけよ。母さんに見つかったら俺が怒られそうだし。」



「うん、分かった。おやすみ。」


「ああ。おやすみ。」


右にはフィーネ、左にはダリアにくっつかれて、暑苦しい事この上ない。

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