コツコツと

「おなかへった!!」


「ごめんな。ちょっと盗みに手間取っちゃって。」


「ほんとに?」


「本当だ。」


「わたしをわすれてたんじゃなくて?」


「違うよ。本当に手間取ったんだ。」


「さびしかった。おなかへった。」


「そうだな。今すぐ昼ごはん作るからな。」


「いちごのケーキがたべたい。」


「明日、母さんに頼んどくよ。」


俺は超特急で昼ごはんを作ってから、フィーネに食べさせる。

フィーネは美味しそうにご飯を食べる。

ご飯を食べて、すぐゴブリンの魔石を取りに行こうと思ったが、フィーネに呼び止められて、フィーネが寝るまでこの世界の絵本を読んであげた。


「やっぱり可愛い寝顔だな。」


俺はフィーネの寝顔を見守ってから、家を出て行き、森に向かう。

一つでも多く魔石を取りたいから。

それから、夜ご飯まで森で魔石ゴブリンを探しまくったが、一匹も見つからなかった。

夜ご飯を作るため、ご飯を盗みながら家に帰った。

母さんがご飯を作るのを手伝ってくれて、今日の成果を母さんに話した。


「すごいじゃない。さすが私の息子ね。」


「でも一個しか取れなかったよ。」


「いいのよ。ゆっくりで。」


「それで、これっていくらで売れるの?」


俺はおっさん3人組から奪った装備を母さんに見せた。


「う〜ん。全部で銀貨3枚ぐらいかな。」


3人のおっさんの命が4千円なんだが。


「結構安いね。」


「しょうがないわよ。全部、状態が悪すぎるもの。」


「そうなんだ。じゃあ、これから森に行ってくるよ。」


「ダメよ。夜の森は昼の森と比べてかなり危ないもの。森だけじゃなく街もね。」


「でも、フィーネの病気がもっと悪くなるかもしれない。」


「今、レックスが怪我しちゃったらそれこそ、確実にフィーネが死んじゃうわ。」


「それは、そうだけど。」


「明日、私は仕事休みだから。朝早くから森に行ってくればいいわ。」


母さんに服を脱がされて、怪我してないか全身を見られて、少しかすり傷のある所に、塗り薬を塗ってくれた。

明日のために早く寝よ。

フィーネと俺、母さん3人で仲良く寝た。


翌日、朝早く起きると、いい匂いがした。


「おはようレックス。」


「おはよう母さん。それ何作ってるの?」


「レックスのお昼ご飯よ。ゴブリンの森と街まで少し遠いでしょ。」


「本当に?ありがとう。」


「いいのよこれくらい。これくらいしか出来ないしね。」


それから、母さんが作ったパンに野菜とお肉を詰めた昼ごはんを預かって、

朝ご飯を軽く済ませて、俺は出発した。


「気をつけてね。」


「うん。行ってきます。」


「行ってらっしゃい。」


母さんに見送られて、今日は一日中ゴブリンの森で魔石を探すことにした。



レベル 1


力    :122

身の守り :107

素早さ  :201

器用さ  :155

魔法力  :311


一日で俺のステータスが途轍もなく、上がった。試練を越えたのだろう。

魔法力が上がったのはありがたい。黒いナイフをもっと上手く使える。


「昨日より少し奥に行ってみるか。」


母さんに俺のステータスを伝えたところ、もう少し森の奥に行っていいと許可をもらったので、俺の活動範囲が広がった。


「ここら辺からか。」


森の少し奥からは、ゴブリンの他に狼の魔物が出てくる。ホブゴブリンと言って、ゴブリンが大人になったやつが出てくるが、ホブゴブリンと出会ったら逃げろと母さんが言ってたし。逃げることにしている。


「気を引き締めないとな。」


森を1時間歩き続けて、狼を見つけた。5匹の群れだ。

どれくらいの強さか確かめるために殺すか。


俺は普通のナイフを投げた。

魔法力が上がったおかげか、普通のナイフにも魔力を通しやすくなった。


「ギャン!!」


狙い通り首に刺さって、一匹の狼を簡単に殺せた。

他の4匹は俺に気づいて襲い掛かってきた。


「黒いナイフは使わずに殺すか。」


いつどこで誰が見てるか分からないから、普通のナイフで殺すことにした。

狼の動きは早いが攻撃が直線的なので、そこまで恐怖は感じない。

カウンターで難なく4匹倒した。


「こんなもんか。一応毛皮剥ぐか。」


狼の毛皮1匹銀貨1枚なので一応剥いどいた。

思ったより毛皮が重かったので、一度、狼の毛皮を家に置きに行った。

それから日が暮れるまで、とにかく魔石つきの魔物を探し回って、魔石付きゴブリン2匹を倒して、帰ろうとした時、ひと回り大きい狼を見つけた。


「魔石付きの狼か。」


ひと回り大きい狼の周りには15匹の狼がいる。

こいつとその周りの狼を倒せば、おそらくフィーネにもっと良い薬が買える。魔石付きの狼の毛皮は小金貨1枚はあるからな。


「時間がないな。」


もうすぐに日が暮れそうだ。さっさと決着をつけるか。

俺は、いつも通りナイフに魔力を注ぎ込んで狼に向かって思いっきり投げた。


「マジか。」


魔石付きの狼は完全に死角からの攻撃を避けた。ナイフはかなりの速度だったはずだが。


「クゥ〜〜ン!!」


遠吠えだ。魔石付き狼の遠吠えだ。

次の瞬間、15匹の狼と魔石付き狼が襲い掛かってきた。


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