薬屋

目が覚めると、見知った天井があった。


「ここは、ミランダの部屋か?」


「そうだよ。びっくりしたよ。朝、店の前にレックスが倒れているんだから。」


「お前の薬の副作用だ。」


「あの薬を使うほどだったんだから、よっぽどだったんだね。」


「まあな。人間離れした奴だった。時間稼ぎしかできなかったしな。」


「ふ〜ん。それより薬の感想を聞かせてよ。」


体が動かせないので、ミランダの質問に答えるしかできなかった。

母さんが薬屋に出勤してきたので、ことの顛末を話して怒られた。

俺は最後まで無理しなかったのに。状況的にしょうがなくだったのに。


母さんに怒られた後、フィーネがやってきてフィーネが泣きながら俺に抱きついてきた。

起きた時、隣に俺がいなくて怖くなったらしい。

フィーネの鼻水と涙で服がぐちゃぐちゃになった。そういえば、返り血がなくなっているな。洗ってくれたのか。


レベル 2


力    :0

身の守り :0

素早さ  :0

器用さ  :0

魔法力  :0


魔法   :蘇生魔法 試練を乗り越えた回数だけ蘇る(1)

      無詠唱

      蘇生魔法の代償として、これ以外の魔法とスキルを覚えない。



「なんだこれ。」


蘇生魔法という強力な魔法を手に入れた代わりに他の魔法とスキルを俺は覚えられなくなったらしい。どっちが良いのかわからん。

全身布で覆ったあいつの神業的な回避能力はスキルか魔法のおかげだろう。

そう考えたら、蘇生魔法ってハズレなのかもしれない。

まあ、これからの使い方次第かな。


昼にはもう動けるようになった。

レベルが上がったから回復力も上がったかもしれないな。

俺は、奪った戦利品を売って、半分の金貨5枚をミランダにあげた。

今回は世話になったしな。

残りの金で、ケーキを買って、フィーネに食べさせた。

最近は、食べ物は盗まずに買うようにしている。盗みは貧乏人のやることだしな。


レベル2の強さを確かめたくて、森に向かった。


「どれを相手にするかな。金になるやつがいいな。」


俺はオークソルジャーを相手にすることにした。

オークソルジャーはオークの進化系みたいな魔物で、肉と睾丸が金になる。


「とりあえず、初日だし森の浅めの場所で探すか。」


俺は1,2時間森の浅い場所でオークソルジャーを探していると、一匹のオークソルジャーが走っているのを見つける。


「こいつでいいか。」


俺はオークソルジャーの首を普通のナイフに魔力を通して掻っ切る。

オークソルジャーはのたうち回りながら死んでいった。


「血抜きするか。」


俺はオークを黒い魔剣を伸ばして血抜きしているところに剣を腰にかけた優男が話しかけてきた。


「君がそのオークソルジャーを倒したの?」


「あんたは?」


「俺は冒険者パーティー勇気の風のリーダーのキリト。それで、君が倒したの?」


「そうだが。それが。」


「オークソルジャーに矢が刺さっていなかった?」


「刺さっていたな。それが?」


「うちのパーティーの射手がつけた傷でね。そのオークソルジャーは俺たちが追いかけてたんだ。」


後ろには、大柄の男。神官っぽい女。射手っぽいエルフの女。全員若そうだ。


「そうか。じゃあ、オークソルジャーの体はやるよ。」


「本当に!?話が早くて助かるよ。」


俺は、オークソルジャーの睾丸を瓶に入れている時に後ろの女のエルフに怒鳴られた。


「何やってるのよ!!それは置いてくんでしょ!」


「え?なんでだ?」


「体は私たちに譲るんでしょ!」


「ああ、睾丸以外の体はな。」


「それだと銀貨3枚にしかならないじゃない!!」


オークソルジャーのお肉は銀貨3枚。

睾丸は一つ銀貨5枚なので二つで小金貨1枚になるのだ。


「譲ってやるだけでも感謝しろ。本来ならとどめをさした俺にこの獲物の所有権があるんだぞ。」


「せめて、一つは譲ってくれないかな。」


今度は、優男が話しかけてきた。なんだ子供だからって舐めてるのか。


「4人もいて、まともに仕留めきれずに逃げられてるお前らが悪い。譲ってもらえるだけ感謝しろ。」


「子供のくせに!!」


エルフの女が俺に向かって怒鳴る。


「子供よりお前らが無能だったってだけだろ。お前らでも実力差ぐらいわかるだろ。」


冒険者とは相手との実力差がわからないとすぐに死ぬ。こいつらみたいに初心者に毛が生えた程度の冒険者でもある程度は分かるだろ。


「ごめんね。痛い目を見たくなかったらその瓶を置いて行ってくれないかな。」


優男が俺に諭すように話しかける。どうやら実力差はわからなかったようだ。



「俺に追いつけたらな。」


いちいち相手するのもめんどくさいので、俺は走ってその場から離れた。冒険者のいるこの世界ではよくあることだ。薬屋で睾丸を換金して、夜ご飯を買って家に帰った。

今日は、フィーネの好きなシチューだ。

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