道すがら

「えっ!お兄ちゃん遠くにいっちゃうの!!」


「1週間ぐらいおつかいに行くだけだ。お土産も買ってくるから、大人しくしとくんだぞ。」


「え〜〜!!」


俺は、少し遠い街に薬屋のおつかいを受けたと嘘をついて、オークの群れを見に行くことにした。

母さんも社会勉強ということで許してくれた。


「気をつけて行くのよ。」


「分かってるよ。いってきます!!」


「いってらっしゃい。」


俺は、生まれ育った街を離れて、オークの群れが発生したという森に向かって、

走り鳥に乗った。

走り鳥とは、FFのチョコボだな。

移動手段の一つで主に速く現地に着きたい時に利用する。前世の速馬みたいなもんだ。


「キュピ!!」


「1週間。よろしくな。」


「ピ!!」


子供でも乗れるように、気性の大人しい走り鳥を選んだ。

どうやら正解のようだ。


俺は走り鳥に乗って、道に沿って走り続けていた時、一人の倒れ込んでいる長い金髪の少女を見つけた。


「どうしたんだ、こんなところで?」


俺は走り鳥から降りて、倒れ込んでいる長い金髪の少女に近づく。

しかし、倒れたまま返事がない。


「ドレス姿に、ヒール。持ち物はなく、フィーネと同じくらいの年齢の少女。

面倒事に違いない。」


かといって、この少女を放置すると死んでしまうので、


「おい、起きろ。」


俺が少女を揺らすと、少女が目をゆっくり開けた。


「お腹、、、。」


「お腹?」


「お腹、減った、、、。」


少女はこれだけ言い切るとまた寝入ってしまった。


「しょうがない。ちょうどいいし飯の用意でもするか。」


俺は、近場で一角ウサギを2匹と茶鳥を一匹狩ってきて、一角ウサギ、一匹は走り鳥に上げた。持ってきた大容量の水筒から水も上げないとな。


それから、森から取ってきた野菜を煮込み、そこに香辛料と肉をぶち込む。

あとは、硬いパンをバッグから取り出して昼ごはんにする。



「いい匂いだ。俺は野営飯の才能があるな。」


「いい匂いっ!!」


少女が飛び起きてきて、俺が作った料理を凝視する。


「食うか?」


「食べる!!」


少女は、ガツガツと俺が作った料理を食べて、食べきった。

俺が食べる分は無くなってしまった。

しょうがないので、俺は干し肉と森で取ってきた果物、硬いパンを食うことにした。


「美味しかったのじゃ!!」


「のじゃ?ところで、なんで、あんなところで倒れてたんだ?」


「話せば長くなるのじゃが、一言で言うなら人助けじゃな。」


「人助け?」


「そう、この道の先にある村をオークの群れから守るのじゃ!!」


少女は勢いよく立ち上がり、拳を天高く突き上げる。

小さい女の子なので、威厳は全くない。


「そうか、ところでお前は何歳なんだ?」


「今年で7歳じゃな。」


(じゃあ、なんでのじゃロリなんだ?)


「それで、ドレス姿はなんでなんだ?」


「それは、私が逃げ出してきたからなのじゃ。」


「捕まってたのか?」


「騎士たちに守られていての。しかし、オークの群れが村の住民を襲うと聞いて、いてもたってもいられず、私の魔法で逃げ出してきたってことなのじゃ。」


「魔法?」


「王族にのみ許された転移の魔法なのじゃ!!」


「王族なのか?」


「いかにも!!第一王女のシャーロットなのじゃ!!」


(面倒くさくなってきた。こいつを騎士達の元へ戻しても、一緒にオークの群れに連れていっても面倒くさい結果になりそうだ。)


「転移の魔法は自分以外も転移できるのか?」


「一日一回だけならできるのじゃ。」


(こいつの能力は使える。特に今回は。)


「転移の魔法は一日何回使える?」


「3回。調子がいい時なら4回なのじゃ。」


(回数も申し分ない。よし、連れてくか。同じめんどくさいなら、都合のいい方を取らないとな。)


「そうか。俺もオークの群れを倒しに行くんだが、着いてくるか?」


「もちろんなのじゃ!!」


「よろしくな、シャーロット。俺はレックスだ。」


「よろしくな、レックス!!」






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