余韻
「ありがとう!!レックス!!」
ミランダはそう言って、俺から魔石を強奪すると、薬の調合に没頭した。
家に帰ってから、帰りが遅かったから母さんには怒られ、フィーネには泣かれた。
俺が助けた村で教わった地元料理をお土産にしたら、美味しそうに食べてた。
地元料理をお土産にするとは、俺はセンスの塊だろう。
母さんも知識は一生物って言ってたしな。
ーーーーーー
それからは、いつも日常が流れ、気がついたら、今年も夏の季節に入ったようだ。
この世界は夏が長く、冬がない。
この地域はそうだ。なので春3月、夏6月、秋3月となる。
そのせいで、緑が我が物顔で広範囲の土地に繁殖している。
「それにしても、王女様を助けちゃうなんてさすが私の弟だね。」
ダリアが長期休暇らしく、貴族学校からこの街に帰ってきた。
「お前の弟じゃない。というか、なんでそれを知ってるんだ?」
その事は、シャーロットは秘密にすると言っていたが。
「精霊を通してみてたの。いや〜かっこよかったな〜。特に、シーフワイバーンからシャーロット様を助けるところ。」
「そういえばそうだったな。覗き野郎が。」
「学校の授業は退屈だからしょうがないでしょ。それより、レックスにあんな能力があったとはね。」
「言うなよ。」
「言わないわよ。それに、あの能力には何か代償があるんでしょ?そうじゃないとおかしいわよ。」
「よく分かったな。ダリアはシャーロットと知り合いなのか?」
「パーティで何度か話した事はあるわ。この前のパーティでレックスの事話したら、凄い楽しそうだったわよ。あれは、惚れられたわね。」
「そうじゃねえよ。シャーロットは俺の事を兄と思いたいんだよ。あいつは自分の理想の兄を俺に重ねてるだけ。」
「兄ね。確かに、レックスみたいなお兄ちゃんは欲しかったかも。良い方のシスコンだし。」
「なんだ、良い方のシスコンって。ダリアは兄弟はいないのか?」
「弟と妹がいるわ。どっちもシャーロット様の同い年の双子。」
「そうか。可愛い盛りだな。」
「出た、シスコン発言。」
「可愛くないのか?」
「可愛いわよ。私は頼られる姉だから。」
「ダリアが?盗賊に捕まるまりそうになってたのに?」
「あれは、昼だからよ。夜なら負けないわ。」
「俺なら夜でも昼でも関係ないな。」
「ふん。」
「それより、学校はどうだ?」
「普通よ。普通に退屈だわ。」
「友達とかは?」
「同じ色付きの貴族の令嬢数人と一緒にいるわね。幼馴染って奴ね。」
「新しい友達作れよ。」
「嫌よ。下心あるやつがほとんど。後は、距離を空けるやつよ。」
「そうか。ダリアは下心とか分かるんだな。」
「当たり前よ。私は色付きの貴族なのよ。色んなやつが私に言い寄ってきたのよ。」
「へー」
「何よ、その反応。私って可愛いから本当に色んな奴が言い寄ってきたのよ。私がパーティーでなんて言われてるか知ってる?」
「オレンジジュース大好き娘。」
「違うわよ!!黒い薔薇よ!」
「目が赤くて、髪が長いからか?」
「それもあるけど、私が黒と赤のドレスしか着ないからよ。」
「そういえばそうだったな。お前が俺に見せたドレス姿って赤と黒だけだったな。好きなのか?」
「そうね。赤と黒は好きよ。私に似合うから。レックスもそう思うでしょ?」
「そうだな。似合う、似合う。」
「心から思って無さそうね。私は本当に可愛いのに。」
「自分で可愛いって言うのか。」
「当たり前よ。自分に自信があるから当たり前よ。」
「それは良い事だ。貴族学校って何を学ぶんだ?」
「領地経営とか、魔力の使い方とか、色々ね。レックスは興味あるの?」
「いや、シャーロットも通うんだと思ってな。」
「シャーロット様も通うとは思うけど、特別待遇だと思うわ。」
「特別待遇?」
「授業が免除されるのよ。私もある程度は免除されてるのよ。偉い貴族は特別待遇なの。」
「じゃあ、ダリアは毎日、暇なのか?」
「そうね。最近対人訓練と、対魔物訓練ばかりしているわ。この前レベル2になったのよ。レックスより強くなったかもね。」
「それはないな。俺はレベル1でレベル3を瞬殺した男だぞ。」
「それは、レックスに特殊な武器があったからでしょ。肉弾戦なら負けないわ。」
「いいぞ。ボコボコにしてやる。勝ったら血を吸わせてやる。」
「こっちは精霊魔法ありでいいわよね?」
「もちろん。いいハンデだ。」
俺はダリアと肉弾戦を行い。
俺が僅差で勝った。さすが、精霊魔法だ。
とんでもない身体強化をしやがる。
「お前とは経験値が違うんだ。」
「息を切らしながら、言っても説得力がないわよ。」
「お前なんか、黒い武器を使ったら簡単にボコれるんだぞ。」
俺は精一杯強がった。
まさか、ダリアがここまで肉弾戦が強いとは。俺が肉弾戦苦手ということもあるが。
この日から、ダリアが長期休暇のうちは毎日肉弾戦することになった。
毎回、俺は僅差で勝った。
そんなある日、ダリアは3人の少女を連れてきた。
悪魔召喚阻止の時、世話になった少女達だ。
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