ラストダンス
『蘇生魔法を行使します。(1→0)』
頭の中で、妙な文字が出てきたと思った瞬間。
俺の意識が覚醒する。
体も、魔力も完全に回復して、体が重くない。
完全にベストコンディションだ。
(賭けに勝ったか。)
シーフワイバーンは、あまりの事に硬直する。
当然だ、死んだ獲物が急に蘇ったのだから。
「よくもやってくれたな!!」
俺はシーフワイバーンを串刺しにする。
こいつは隠れる事に特化していて、防御力も回復力もドラゴンの一種でありながら低いのだ。
俺は、シーフワイバーンをボコボコにしてから、黒いナイフを如意棒のように使って、現在地を確認する。
「オークが、村に入ってやがる。」
何体かのオークが村に侵入していたので、俺は村に全速力でオークどもを蹴散らしながら、走った。
「シャーロットが無事ならいいが。」
魔力温存のために、なるべく魔力は使わずにオーク達を蹴散らしていく。
日頃の筋トレが役に立つ。やっぱり、筋肉は裏切らない。
それからは、無我夢中でオークを殺していった。
群れのボスを失ったオークは統率力がなく、容易に蹴散らせた。
ーーー夜ーーー
気付いたら、夜になっていた。
もう、立っているオークはいない。
とりあえず、洞穴に行こう。あそこなら、一日は安全だろう。
俺はおぼつかない足で洞穴に向かい、入り口に入ってすぐ、気を失った。
ーーー朝ーーー
目覚めたら、シャーロットが俺の上に乗っかっていた。
「今は朝か?どれくらい、俺は寝ていた?」
ここが洞穴なので、現在の時間が分からない。蝋燭の火を頼りに近くにいた、男に話しかける。
「目が覚めたのですか!!」
「それより、俺が寝てから何時間経った?」
「おそらく、半日ほど寝ていたかと思います!!」
「そうか。外の状況は分かるか?」
「村には魔物が徘徊していると。」
「オークか?」
「いえ、違う魔物だと聞いています。おそらくはオークの血にやってきたのかと。」
「そうなのか、、、。ん?」
「どうかされました?」
「いや、そういえば鎧を着けていないと思ってな。」
村人の前では大人の鎧をつけて、大人のふりをしていたと思うんだが。
「ああ。こちらのお嬢様からお話を伺いました。なんでも小人族の中でも背の低い方だから、威厳を出すために普段は大人の鎧を着ていると。」
「そうか、この子はそんなことを言っていたか。」
(やっぱり、シャーロットは賢い子だ。)
「あの、あの朝食はどうされます?」
「なんでもいい、すぐに用意してくれ。村から魔物を追い出さないといけないしな。」
「はっはい!!」
男はすぐに朝食を持ってきた。
豆のスープと干し肉、それに柔らかいパンだった。かなり奮発してくれたのだろう。
俺も働かないとな。
寝ているシャーロットを置いて、俺は洞穴の外に出る。
村に入った魔物を追い出して、村の外周に柵を作らないとな。
それから4時間かけて、村の中にいた魔物を倒し、壊れた柵の穴は大雑把に丸太で塞いだ。
「しかし、見事に魔物の死体だらけだな。」
俺は、洞穴に戻り、村長に村の中の魔物を全て倒した事を報告する。
すると、村長はすぐさま村のみんなに指示を出し、村のみんなを動かした。
この人は、意外に有能だな。
流石に、家政婦という名目で、愛人を囲っている事はある。
「レックス!!」
シャーロットが泣きながら抱きついてきたので、それを受け止める。
「シャーロット、やっと起きたか。」
「レックス!!レックス!!レックス!!」
「分かったから、鼻水を服につけるな。」
「私は、お前が死んだと思ったのじゃ!!」
「そうだな。偉かったぞシャーロット。あの時、よく行動できたな。」
「レックスの邪魔にはなりたくなかったのじゃ!!」
「そうだな、偉い、偉い。」
シャーロットの頭を撫でる。
それから、シャーロットは30分ぐらい泣き続けてから、泣き疲れたのか寝てしまった。
こういうところは6歳児だな。
俺は、村人達の村の復興を手伝い、今夜はオーク肉を食べた。村人達は滅多にオークの肉を食えないので、それは美味しさそうに食べていた。
「明日からは、オークの死体処理と他の魔物の死体処理。それと、村に魔物が来ないように村の警護をしないと。」
「レックスはこの村を助けたのだから、仕事などしなくて良いのじゃ。」
今はシャーロットと一緒にお風呂に入っている。
「そうはいかない。助けた以上は、責任をとるさ。」
「レックスはかっこいいのじゃ。やっぱり、レックスが私の兄だったら良かったのに。」
「シャーロット、これからはあまり、やんちゃするなよ。するならもう少し、強くなってからか、転移の力を使いこなせるようになってからにするんだ。」
「分かったのじゃ。今回の事で私は多くのことを学んだのじゃ。」
「そうか、偉いなシャーロットは。」
シャーロットの頭を撫でると嬉しそうに目を細める。
シャーロットにかなり懐かれてしまったようだ。
それにしても、今回は無茶しすぎたな。
母さんには内緒にしとこ。
それから、6日後に騎士達がやってきた。
俺がオークに攻撃を仕掛ける前に、この村の数人の男達が走り鳥3匹に乗って、街にオークのが襲って来る村にシャーロットがいることを知らせに行ってくれたのだ。
流石の騎士達も王家の紋章の入った短剣とダリアの家の紋章が入ったハンカチを見て血相を変えてこちらに向かってきたのだろう。
村の魔物対処は騎士達に任せよう。
まだ、この辺りは魔物の血の匂いが強い。
それに、
騎士達の倒したオークをハイエナしようとしている冒険者達に俺が倒したオークを取られるのは癪だしな。
村は魔物の素材で溢れている。
今回の事で、破壊された農地や建物を直したとしても余裕でお釣りが来るぐらいに。
「本当に、兄上はその魔石だけで良いのか?」
シャーロットはいつしか、俺のことを兄上と呼ぶようになった。
俺が王族に殺されそうだから、やめろと言っても聞かない。
「これが、目的だったからな。それより、村の復興を任せて悪いな。」
村の復興は王族が面倒を見てくれるらしい。
「私は父上に社会勉強の一環として村の復興をさせてくれた頼むだけじゃ。」
「それは、凄いことだそ。さすが、シャーロットだな。」
シャーロットが頭を差し出して来る。頭を撫でて欲しいのだろう。
頭を撫でてやると嬉しそうに抱きついてきた。
「やっぱり、私の従者にならないか?そしたら、ずっと一緒にいれるのじゃ。」
「悪いな。俺には家族が待ってるからな。また、どこかで会えるだろ。」
「そうか、、、。それじゃあお別れじゃの。」
「ああ。お別れだな。元気でな。」
「兄上も、お元気で。」
俺は騎士達に捕まる前にサッサッとトンズラした。
俺は、行きに乗った走り鳥に跨った。
行きに乗っていた走り鳥には街と村を2回往復させると無茶をさせてしまった。
ちなみに、この走り鳥は、シャーロットが街で買い取るそうだが。
「早く帰らないと、フィーネが心配してる。母さんもしてるだろうな。ミランダはしてなさそうだが。」
「ピー!!!」
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