別のやつ


俺とシャーロットは強い衝撃に、横に飛ばされる。

木々をクッションにしたが、それでも強く地面に叩きつけられた。

状況は分からないが、やる事は一つだ。


「シャーロット、大丈夫か!?」


「私は大丈夫なのじゃ。でも、レックスが、、、。」


俺の左腕と左腕は現れた時の衝撃で、グシャグシャになっていた。


「気にするな。それより俺ごと村に、転移できるか?」


「それが、この場所がどこか分からないから、転移できないのじゃ。」


瞬間、上空から強い殺気。

残った右足に全力を込め回転する事でなんとかその攻撃をかわす。

何かしらの針を飛ばした攻撃だった。

俺はシャーロットを抱えて、上空からの死角の木が生い茂っている場所に移動する。


「シャーロット一人なら出来るか?」


「私、一人なら問題ないのじゃ。もう一度、上空に転移してから、村に転移すればいいのじゃから。」


シャーロットは自分以外を一日に一度しか転移できない。

この事実が、重くのしかかる。


「分かった。そうしてくれ、魔力は足りるか?」


俺は、シャーロットに魔力回復薬を飲ませようとして、右手でポーチを探るが、魔力回復薬は存在しない。

あるのは、ガラスの破片と湿り気だけだ。

さっきの衝撃でポーションと魔力回復薬全部割れちまった。


「魔力は、足りるのじゃ。でも、レックスは、レックスはどうするのじゃ、、、。」


「俺なら大丈夫だ。後で必ず、合流する。実のところシャーロットを守りながらでは戦えないからな。」


「分かった、分かったのじゃ。絶対!絶対じゃぞ!!」


「ああ、約束だ。」


シャーロットに魔石を渡した後、

俺は、右手でシャーロットの頭を撫でて、彼女は涙を両手で拭き何かを覚悟した顔をした瞬間、消えた。

転移したのだろう。

彼女の温もりが消えると同時に、体が急激に重くなる。強化薬の効果が切れたのだろう。


「さて、どうするか。」


体はボロボロで魔力が回復できず、傷も治らない。しかも、体が尋常じゃなく重い。

どう考えても、これから死ぬ。


「それにしても、シャーロットは聡い子だ。あんな子がフィーネと同い年とは。」


そんなことをぼんやり考えていた。脳があまりの痛みに麻痺しているのだろう。実際、痛みはないしな。

すると、空から何かが降りて来た。

おそらくは、俺達を攻撃してきた魔物だろう。

弱った獲物を食べに来たのだろう。


そして、その姿を視認した。


「シーフワイバーンか。」


シーフワイバーンとは中堅冒険者殺しの魔物だ。

ドラゴンのくせに攻撃力は低く、速くもない。

その代わり、隠密力に優れている。

さっきの針攻撃は何か毒攻撃のようなものだろう。

オークとの戦闘に必死で完全に油断していた。

こんな、森の浅いところにこんな奴が出るなんて。

オークの群れのせいで、生態系が狂ったのだろう。


「ちゃんと働いてくれよ蘇生魔法。」


俺は、最後の頼みの綱である蘇生魔法に賭けた。


シーフワイバーンは、俺の頭を噛みちぎる。


グチャリ


何かが潰れる嫌な音が聞こえた。

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