体調

「素材は用意したんだろうね。」


ババアは母さんに話しかける。


「ゴブリンの魔石3つとフォレストウルフの魔石1つ。」


「フォレストウルフの魔石なんてよく集めたね。一つ最低小金貨7枚はするのにね。」


「この子が狩ってきたのよ。」


「こんな子供がかい?」


「レックス。私の息子よ。」


「この子がね〜」


ババアに頭から爪先まで舐め回すように見られた。


「どうもレックスです。婆さんがフィーネの薬を作れる人?」


さっきは薬屋を眺めるばかり忘れていたが、今回はちゃんと自己紹介することにした。


「そうだよ。私が薬屋さ。あんたの腕も私の薬で治るさね。」


「小金貨3枚でこの子の腕は治る?」


「この子の治癒力次第だね。小金貨3枚じゃそこまで強い薬は買えないからね。」


「僕のことはいいよ。それよりフィーネの薬はどれくらいで出来るの?」


「そうさね。3分もあればできるさね。作り慣れてしね。そうだ、ミランダ!!」


2階から階段を降りてくる音が聞こえて、7歳くらいの栗色の長髪の少女が出てきた。


「何?おばあちゃん。」


「この子の腕を見てやんな。これも勉強だよ。」


「う〜ん。分かった〜。」


「薬ができるまで、あんたはこの子に左腕を見せとくれ。」


「分かりました。」


俺はミランダと言われる少女と一緒に庭に出て、腕を見てもらった。


「うわ〜すごい傷だね。どうしたのこれ?」


「魔石付きの狼に噛まれた。」


「えっ!?よく生きてたね。」


「ギリギリだったよ。それよりこれってどれくらいで治るの?」


「飲む薬にもよるかな。」


「小金貨3枚の薬らしい。」


「それなら、最低でも一月はかかるかな。」


「一月!?そんなにかかるのか?」


「それでも早い方だと思うよ。こんなにグチャグチャなんだから。」


「それはそうだけど。」


「早く治したいなら方法はあるよ。」


「それは?」


「私が作った薬を使うこと。」


「薬作れるの?」


「作れるよ。うちの家系で女は薬を作るスキルを覚えて生まれてくるんだ。だから私も作れるの。」


「いつから薬を作ってるんだ?」


「5歳からだよ。でもお婆ちゃんが厳しいからあんまり作らせてくれないんだ。まずは知識からだって。」


「つまり、悪化するかもしれないってことか?」


「大丈夫だよ。多分。」


(でも、一月は長すぎる。この腕じゃ、ろくに盗みも働けない。)


「分かった。お前の薬を使うよ。いくらだ?」


「タダでいいよ。商品じゃないからね。」


「そうか。ありがとな。俺はレックス。君は?」


「私はミランダよろしくね。なんかレックス君とは長い付き合いになりそうだし。」


「よろしくな。」


この瞬間が長い付き合いになるミランダと出会った瞬間だった。

それから、フィーネの薬と俺の薬。ミランダの薬を受け取って、薬屋を後にした。

1週間後にミランダに途中経過を見せに行く予定だ。


家に帰って、フィーネに緑色の飲み薬を飲ませる。


「どうだフィーネ、何か変わったか?」


「わかんない。ねむくなってきたかも。」


「そんなにすぐ効果は出ないわよ。それより私は買い物に行ってくるから、レックスもちゃんと薬を飲むのよ。」


「分かったよ。」


俺が怪我している間は、少ない貯金を切り崩し、借金の支払いを遅らせながら母さんがご飯を買ってくれることになった。

この腕じゃ盗みができないしな。痛みがひどいから、走ることも辛い。


「婆さんが作ったのがこの緑の薬で、ミランダが作ったのが紫の液体か。どうしよう。飲んで大丈夫なのか?」


とりあえず、婆さんが作った緑の液体を飲んだ。


「まずいけど、飲めるな。少し痛みが引いたかな?」


薬を飲んだだけで、痛みが少し引いた。しかし、まだひどい痛みだ。


「これを飲むしかないのか。」


俺はミランダの作った紫色の液体を飲むことにした。


「臭!?」


蓋を開けた瞬間とんでもない激臭がした。

これは一気飲みするしかないか。

俺はミランダからもらった紫色の液体を一気飲みした。


あまりの不味さに俺は気を失った。




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